テレビ朝日のドキュメンタリー番組『テレメンタリー2020』(毎週日曜4:30~)では、豪雨災害で犠牲者ゼロという奇跡を検証する『犠牲者0の町 ―決壊 大郷の奇跡―』(東日本放送制作)を、19日に放送する。

  • 住民の証言から再現した避難行動CG=東日本放送提供

昨年10月、各地に甚大な被害をもたらした東日本台風は、宮城県でも河川の氾濫や土砂災害で19人が死亡、2人が行方不明となった。その一方で、105世帯311人が暮らす大郷町中粕川地区では、側を流れる吉田川の堤防が100メートルにわたり決壊し、地区のすべての住宅が被害を受けたにもかかわらず、死傷者は1人も出なかった。

犠牲者ゼロの町の住民は、あの日、どう行動したのか。東日本放送では、東北大学と共同で50人以上の住民に聞き取り調査を実施。その証言を基に、当時の避難行動を映像化する。

その結果、「避難指示」が発表された決壊前日の夜に、住民の8割以上が避難所や親戚宅などに避難していたことが判明。この地区は水害の多発地域で、早期避難した70代の男性は、父親や近所の年配者から地区で起きた過去の水害の話をこれまで幾度となく聞かされ、水に対する意識と覚悟が培われてきたという。

また当初、避難せずに夜まで自宅に残っていた女性は、地区の全戸を巡回していた消防団に避難を促され、切迫した状況を感じ取り、避難を決心したと話す。命を守った背景には、過去の災害の伝承と地区ぐるみの防災態勢があった。

一方で、新たな課題も浮き彫りに。避難の呼び掛けに応じず自宅に残った住民や決壊の直前に避難所から自宅に戻ってしまった住民が、救助される事態が発生したのだ。「今回は大丈夫」との思い込みや少しの油断が命を危険にさらした。

避難行動の専門家は、犠牲者ゼロの要因について、「奇跡」と「必然」の2つの側面があったと説明する。

近年、激甚化する豪雨災害。未来の命を守るために、大郷町の避難行動を検証し、次の災害に生かそうという今回の番組。ナレーションは、俳優の本郷奏多が担当する。

  • 東日本放送と東北大学共同の住民アンケート調査=同