券売機から銀行の預金を引き出す「キャッシュアウト」を実現した東急が、7月15日から新たな日本初のサービスを開始する。東急線各駅(一部を除く)の券売機にて、「LINE Pay」への現金によるチャージサービスを行う。
メッセージアプリの「LINE」には、「LINE Pay」というスマートフォンでの決済サービスが搭載されている。従来は銀行口座やセブン銀行のATM、ファミリーマートの「Famiポート」などでチャージが可能。これらに加え、新たに東急線各駅の券売機を活用し、「LINE Pay」へチャージすることが可能になった。サービス開始に先立ち、渋谷駅で行われた取材会にて、このサービスを実際に試すことができた。
■画面のQRコードをスマホで読み込む
今回導入されるサービスは、東急とGMOペイメントゲートウェイ(GMO-PG)が共同開発した「駅券売機スマートフォン決済チャージシステム」を利用する。では、どのように使うのか。
まずはLINEアプリを開き、「ウォレットタブ」から「東急線券売機」を選択。券売機を操作し、QRコードを表示させるようにする。そこでスマホにQRコードを読み取らせ、スマホのLINEアプリに券売機を認識させる。その後、券売機に紙幣を投入し、チャージを行う。その際、利用明細も出すことができる。数秒後、「LINE Pay」に金額がチャージされる。
チャージ金額は1,000円から4万9,000円まで。紙幣のみでおつりは出ない。5時30分から23時(世田谷線上町駅は6時30分から22時)まで利用でき、手数料は必要とのこと。
ところで、なぜこのようなサービスが生まれたのだろうか。
■高まるスマホ決済への現金チャージのニーズ
進むキャッシュレス社会。スマホ決済が広がり、銀行口座やクレジットカードを持たない若い層など、スマホ決済サービスへの現金によるチャージのニーズが高まっている。そんな中、東急は気軽にスマホ決済サービスへのチャージができるようにした。
このサービスを考えた東急のフューチャー・デザイン・ラボ事業創造担当、券売機活用新決済事業プロジェクトリーダーの八巻善行氏は、「沿線のキャッシュレス化を推進したいという考えがある中で、現金からのチャージのニーズというものを考えました。一方で、現金がある限り券売機をなくすわけにはいかず、その有効活用も必要になります。そういった理由で、現金ユーザー向けの整備を行うことにしました」と語る。
現在、交通系ICカードの利用が進んだことで、各駅の券売機はピーク時の半分しかないという。「そんな中で駅の付加価値を上げる新たなサービスとして、このサービスを作りました」と八巻氏。「LINE以外の事業者とも連携したい」と話していた。
キャッシュアウトでは一万円札のみが券売機から出てくるのに対し、このサービスでは千円札での入金が多いと考えている。「千円札はおつりとして必要なことが多く、補充が必要。現金運用のコストを下げることもサービス導入の理由にあります」と八巻氏は言う。なお、このサービス導入によるハードの改修はないとのことだ。
東急は「社内起業家育成制度」を設けており、新規事業を促進しようとしている。そこから生まれた今回のサービスは、券売機の新しい使い方を示すものとなるだろう。