今年5月に通年ラインアップとしてライムが追加された「キリン 本搾りチューハイ」。業界初の無添加缶酎ハイとして知られ、根強いファンがいるブランドだ。本搾りが熱く支持されるのはなぜなのか? 7月6日に行われたオンラインラウンドテーブルで、その理由が考察された。

  • 5月にリニューアルした「キリン 本搾りチューハイ」

本搾りの本物志向が離れられないファンを作った

キリンビールの「キリン 本搾りチューハイ」は「居酒屋の生搾りチューハイそのままの味をお家で」を目指し、2003年にメルシャンから生まれた。メルシャンの「まず初めにブドウありき」というフィロソフィを受け継いで果実が持つ個性を大切にした製品であり、業界初の香料・酸味料・糖類無添加缶酎ハイだ。こういった特徴は、発売から18年たった今でも変わらない。

キリンビール マーケティング部 RTDカテゴリー戦略担当の小野寺氏は、まず現在のRTD(栓を開けてすぐ飲める缶酎ハイやハイボールなどの低アルコール飲料:Ready to Drink)市場について説明する。

  • 本搾りのブランドパーパスを挙げるキリンビールの小野寺氏

RTD市場は12年続けて拡大している。これはすべてのお酒のカテゴリーからRTDへの流入があり、特にビールの代替として1~2杯目で飲用するニーズが拡大しているためだ。また直近では、新型コロナウイルス流行や昨年の消費税増の影響もあり、自宅で飲むという需要も増えている。そんなRTDに期待されているのは「食事に合う」ことだという。

一方、日常生活がますます多忙になっていく中で、消費者の価値観は本物志向にシフトしつつあり、シンプルで質の高い原点回帰型製品のニーズが増している。そのような中、本搾りブランドは8年連続2桁増の出荷実績を達成しており、2020年4~5月にはリニューアルによって2カ月連続過去最高売上を達成している。また、同社の氷結ブランドと比較して一回当たりの購入本数も多いそうだ。

  • 右肩上がりの出荷実績を誇る本絞りブランド

「いま本搾り缶チューハイが支持されている理由は、果汁とお酒だけのシンプルな原材料を使っていること、甘くない果汁感で食事の味を邪魔しないこと、生搾り酎ハイのような本格感を味わえること、これらを兼ねそろえているため」と小野寺氏は分析する。

そして本搾りの3つのこだわりとして「果実本来の味わいを表現するための『製法のこだわり』」「味の主役である果汁のための『素材のこだわり』」「香料・酸味料・糖類無添加という『本物へのこだわり』」を挙げる。

トークセッションで明かされるライムの裏話

続いて、RTDカテゴリー戦略担当の鈴木千尋氏、商品開発研究所 中味開発グループの松田莉央子氏が本搾りのこだわりの製法についてのトークセッションを行った。話題の中心となったのは、5月19日に通年販売商品として復活し、大きな反響を呼んだ新フレーバー「ライム」だ。

ライムは、食事と一緒に楽しみたいRTDのフレーバーとして第3位に上がっており、本搾りユーザーにも人気が高い。だが過去の販売では季節限定商品として展開されており、熱烈なユーザーからは発売の喜びと終売の悲しみが都度寄せられていたという。

  • 長年の人気に支えられ、ついに通年販売商品になったライム

松田氏は「期間限定商品の場合はある一定の時期に楽しんでいただくことを心がけますが、通年販売商品はデイリーにおいしく飲める味、飽きずにまた欲しくなる味を目指しました」と語り、これまで発売されたライムとは味わいを変えていることを説明。

新しいライムフレーバーの味わいを「ライムの持つ苦みやえぐみが強くなるとデイリーに飲むには適さないので、ライムらしいさわやかな香りやすがすがしさを残しつつ、クセやクドさをなるべく抑えるように調整しました」と表現した。

ライムとレモンにマッチにするおつまみを厳選!

最後に行われたのが、本搾りとおつまみの食べ合わせ紹介。小野寺氏、鈴木氏、松田氏の3名はこの企画のために30種類以上のおつまみを試し、本搾りのライムとレモンにマッチする商品を探し出したという。

栄えあるおすすめ商品は、明治屋の「国産真鰯と野菜のトマト煮」。ライムは香り立ちがさわやかだが酸味はマイルドなので、トマトやイワシのうまみを増し、ライムの果汁感をやさしくしてくるそうだ。レモンはその酸味がトマトとイワシのうま味やコクを受け止め、苦みが味に深みを出してくれるほか、オイリーさを洗い流して後味をすっきりさせてくれるという。

  • ライムとレモンにマッチする「国産真鰯と野菜のトマト煮」

また、「開ける前に一度さかさまにすることで、下に沈んだ果汁が混ざる」という本搾りをおいしく飲むコツや、グラスによる味わいの変化についても解説。広口のグラスを使うと「息が薄く広く入ってくるため、炭酸が酸味や苦みを強く感じさせ、スッキリさわやかになる」、フルートグラスのような口の狭いグラスを使うと「炭酸を感じる前に果汁感と甘みを感じられるので、果汁感をより楽しめる」と話した。

  • 広口グラスはスッキリさわやかに、フルートグラスは果汁感をより感じられる

  • グラスによっても味わいは大きく変化すると話す2名

他の缶酎ハイの味に慣れていると、ストイックな味に感じがちな「キリン 本搾りチューハイ」。しかし香料・酸味料・糖類無添加でも楽しめることを目指したその味わいの深さは、まさに本物志向を追求したからこそのものといえる。本搾りを飲み続けるほどに本搾りから離れられなくなる、というのも納得なオンラインラウンドテーブルだった。