新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、急速に広まりつつあるリモートワーク。新たなコミュニケーション方法の導入や、評価制度・福利厚生の見直しなど、企業にはさまざまな変化が求められている。
そんな中、GPTWジャパンが「若手従業員の働きがい」に焦点を当てたオンラインセミナーを開催。「働きがいのある会社」若手ランキングの発表とともに、ランキング上位企業であるサイボウズの青野慶久氏を招き、その取り組みについて紹介した。
テレワーク下で"連帯感"をどう醸成するか
「働きがいのある会社」若手ランキングは、新型コロナの影響で若手の働き方に関する価値観が急速に変化していることなどを受けて、GPTWジャパンが初めて調査・発表したもの。
大規模部門では「セールスフォース・ドットコム」(1位)、「ディスコ」(2位)、「アメリカン・エキスプレス」(3位)、中規模部門では「コンカー」(1位)、「freee」(2位)、「サイボウズ」(3位)、小規模部門では「ENERGIZE」(1位)、「現場サポート」(2位)、「フラッグシップオーケストラ」(3位)がそれぞれランクインした。
調査の結果、ランキングの上位企業では「入社した人を歓迎する雰囲気」「温かい雰囲気の会社」の項目でスコアが高かったといい、GPTWジャパンの荒川 陽子代表は「職場の"連帯感"がキーワード」と語った。
GPTWジャパンがテレワーク経験者に向けて行った調査によると、テレワークの推進によって「連帯感・コミュニケーション」が減り、「生産性」が低下する結果も出ているとのこと。しかし一方で、「モチベーション・やりがい」が上がっている群の「生産性」や、「連帯感・一体感」は向上していることが分かったという。
これを受けて荒川氏は「モチベーション・やりがい」を担保することがこれからの働き方において重要とし、そのためには、企業の「カルチャーを色濃くする」「頻度高くコミュニケーションをとる」「ビジョンや価値観をはっきりさせる」ことが大切だと語った。
中でもテレワーク下では、課題になりがちな「ビジョンの共有・浸透」に力を入れ、連帯感を醸成していくことが必要だそうだ。
「こまめな声がけや会議での顔見せ、頻度の高い1on1に終始するのではなく、会社のビジョンを共有・浸透させることで、帰属意識を高めることが大事だと考えます」(GPTWジャパンの荒川 陽子代表)。
テレワークできる会社へ一気にシフトするのは難しい
具体的に若手にとって働きがいのある会社は、どのような取り組みを行っているのか。同セミナーでは中規模部門で3位にランクインしたサイボウズの青野慶久氏を招いた対談も行われた。
まずテレワークについて、サイボウズでは10年ほど前から導入されているが、新型コロナを受けて、青野氏もこれまでの取り組みを反省する点があったという。
「私は古い人間で、これまでは毎日出社をし、会議をするときは会議室に人を集め、在宅勤務の人はリモートでつなぐ、という方法を取っていました。もちろん、会議室の中の人は会議の雰囲気も分かるし、ちょっとした話し声も聞こえるのでそれでよかったのですが、在宅勤務の人はリモートでつないでいるので参加しづらかったそうです。コロナ後は全員が在宅勤務、リモート会議になったことで、参加者みんな顔も見えるし声も聞きやすくなって、働きやすくなったという意見をもらって……働きにくい原因を作っていたのは自分だったんだと気づきました」。
同社でもテレワークが定着するまで、導入から3~5年はかかったとのこと。テレワークができる会社に一気にシフトするのは難しく、少しずつできることをやりながら、風土の変革を図っていくのが大事だという。
これからの働き方改革は「職種も仲間も自分で選べる」
その上で、これからの"ニューノーマル"な時代には、どのような働き方改革が必要なのだろうか。青野氏は、働きやすさを左右する「働く場所・時間」を自分で決められることに加えて、「働く職種・仲間」を自分で選べることが、メンバーのやりがいを高めると考えているそうだ。
「キャリアパスを自分で選択できるようになれば、おのずとやりがいが増えていく。一人一人がキャリアを考えないといけなくなるので、自発性・自立心が芽生える」と青野氏。
「誰もやりたくない職種が出てきてしまうのでは?」との問いには「誰もやりたくない仕事があるんだったら、何か考えた方がいいと思う。予算が異常に少ないとか、やっても評価されないとか、非効率な仕事をさせられるとか、何か原因があるはずで、それを改善してもやる人がいないんだったら、外部のパートナーに協力してもらえばいいと思うんですよね」と語った。
一つひとつの声に向き合い、出来ることからコツコツと
サイボウズでは、"チームワークあふれる社会を創る"という企業理念に沿っていれば、役職関係なく、誰でも新企画を提案できる「ファイヤースターター」という制度があり、メンバーから多く賛同が集まった企画は、実際に実現させることができるという。
テレワーク制度も、社員の声を拾い上げた結果、導入につながったとのこと。
働き方改革やテレワークの導入について青野氏は「出来ることを一つひとつやっていったら、意外と出来ることは増えていく、一個一個に向き合ってほしいなと思います」と語っており、現場が意見を出しやすい環境を作り、一つひとつ応えていくという地道な作業が、これからの組織作りにおいてキモになるのかもしれない。