米労働省が2020年7月2日に発表した6月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数480.0万人増、(2)失業率11.1%、(3)平均時給29.75ドル(前月比-1.2%、前年比+5.3%)という内容であった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で4月には歴史的な落ち込みとなったが、5月に続き6月も急激かつ大幅に持ち直した。
(1)6月の米非農業部門雇用者数は前月比480.0万人増となり、2カ月連続で過去最高の伸びを記録。3月と4月に合計約2,200万人の雇用が失われたが、5月と6月に合わせて約750万人が復帰した(4月2078.7万人減、5月269.9万人増にそれぞれ修正)。新型コロナによる外出制限の解除に伴い、外食関連や小売業、娯楽・ホスピタリティなど、広範囲に再雇用の動きが広がった。
(2)6月の米失業率は11.1%となり、前月から2.2ポイント低下。市場予想(12.5%)以上に改善した。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率も前月の60.8%から61.5%に持ち直した。フルタイムの就職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)は、前月の21.2%から18.0%へ低下した。
(3)6月の米平均時給は29.13ドルとなり、前月から0.50ドル低下。伸び率は前月比-1.2%、前年比+5.0%となり、いずれも予想(-0.8%、+5.3%)を下回った。外食関連など比較的低賃金とされる業種で職場復帰が進んだことで平均時給が押し下げられた。
米6月雇用統計は、非農業部門雇用者数が予想を上回る伸びとなり、失業率も予想以上に低下する好結果であった。前述の通り、コロナ・ショックで失われた雇用の3割を僅か2カ月で取り戻すという力強い回復力を示した。
ただ、米国株は小幅上昇、米ドルは小幅高、米国債利回りは小幅低下と市場の反応は限定的であった。トランプ米大統領は「米雇用統計の内容は経済復調の証し」「来月はさらに改善する見込み」とのコメントを発表したが、市場はそうは見ていないようだ。
雇用統計の家計調査において、本来は失業者に分類されるべき回答者が、誤って就業者に分類されたとの観測がくすぶり続けた他、新型コロナウイルスの感染が6月後半以降に再拡大したことで、来月は改善ペースが鈍るとの見方が広がったためだ。米6月雇用統計は、米国の景気回復期待を著しく強めるには至らなかったが、コロナ第2波への懸念を高めることもなかった。