外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2020年6月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。
【ドル/円 6月の推移】
6月のドル/円相場は106.074~109.848円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.1%の小幅高(ドル高・円安)となった。全米で経済活動が再開され景気回復期待が強まる中、ドル買い・円売りが先行。5日の米5月雇用統計が予想外の好結果になったことを受けて109.848円前後まで上昇した。
しかし、110.00円の上値の重さが意識されると反落。9-10日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で2022年までのゼロ金利を維持する見通しが示されたことなどが重しとなった。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が米経済の先行きに慎重な見方を示したところに、米南部を中心に新型コロナウイルスの感染が再拡大したため、株価が不安定化すると11日には106円台へ押し戻された。
その後、一時持ち直したものの、ソフトバンクグループの保有米株売却に伴う円転観測から23日には106.074円前後まで下値を拡大。ただ、月末にかけては、四半期末に向けたポジション調整と見られる動きで107円台後半へと緩やかに値を戻した。
【ドル/円 7月の見通し】
ドル/円相場は、2月以降5カ月連続で終値が107円台となった。3月には101円台の安値や111円台の高値を付けて乱高下する場面もあったが、最終的には107円台に収束。1月も108円台でクローズしており、終値ベースで見ると2020年のドル/円相場は安定推移が続いている(ブルームバーグ・データより)。
(1)米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げにより日米金利差がほぼ消滅したこと、(2)ドルと円が同じ「安全資産」に位置付けられ、他通貨に対して同方向に動く傾向が強まったこと、(3)日本の対米貿易黒字は5月に95.8億円まで減少しており、輸出入に絡むフローが均衡していること、(4)明確なデータはまだないが、コロナ禍で日本企業の対外直接投資が減少していると推測されること、などがドル/円の安定推移に繋がっているのだろう。
こうした流れは当面続くと見られ、7月のドル/円相場も107円台を軸に推移する公算が大きい。新型コロナウイルスの第2波への懸念や、世界経済の回復期待の強弱によって上下することはあっても、反対売買を伴う「投機」中心の値動きであれば、ドル/円相場の方向感を決定付けることはなさそうだ。108円台以上では上値が重い一方、106円台以下では下値が堅い安定的な推移が続くと見る。