Facebook Japanは6月24日、日本における事業戦略説明会をオンラインで開催。FacebookやInstagramなど同社が展開するサービスにおける、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた取り組みや今後の方向性を、同社代表取締役の味澤将宏氏が紹介した。
Facebookは社名のFacebookのほかにも、InstagramやWhatsApp、Oculusといった世界的なコミュニケーションサービスやテクノロジー企業を傘下に持つ。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大により、世界各国で外出自粛が叫ばれるなか、SNSやメッセージアプリの重要性が高まりつつある。FacebookではCOVID-19の流行が進んだ2月以降、自社内での対策としてリモートワークに移行するとともに、FacebookやInstagramやOculus VRで「新しい生活様式」に向けたサービスを立て続けにリリースしている。
Facebookが注力する「つながり」「正確性」「中小事業支援」
コロナ禍(編注:COVID-19の流行による社会的影響のこと。読み方はコロナか)において、Facebook Japanは、以下の3分野に注力したという。
- 人とのつながりを保つための取り組み
- 正確な情報提供と、誤情報や有害コンテンツを制限するための取り組み
- 特に中小ビジネスを対象とした、経済的再建を支援する取り組み
最初の「人とのつながりを保つための取り組み」は、SNSの得意とするところだ。外出自粛中、人と会えない環境が続く中でオンライン会議や、いわゆる「オンライン飲み会」の需要が高まったのは記憶に新しいところだろう。
Facebook Messengerではこれにあわせて、最大50人でビデオ通話ができる「Messenger ルーム」を5月15日に提供開始した。
さらに、Facebookのグループ機能では「子育てグループ」という機能を6月17日に追加。子育てにまつわる情報や悩みを共有したい親向けのFacebookグループで、匿名での投稿やメンタリング(悩み相談)などが行えるのが特徴だ。
2つめの「情報の信頼性」についての対応は、COVID-19対応で適切な情報を提供する点に主眼がある。Facebook内に情報ページ「新型コロナウイルス感染症情報センター」を設置し、政府や保険機関などの信頼性の高い情報を集約。さらに、医療用マスクなどの広告出稿を禁止するなどの対策も行っている。プラットフォーム上でのデマ対策については、厳しく対応していく方針をとっているという。
3つめは、COVID-19の収束後までを視野に入れた、Facebookの拡大のための戦略と言えるだろう。中小企業に対して、SNSの活用を促し、経済を活性化させる狙いだ。コロナ禍がきっかけで、この中小企業支援の取り組みに大きな変化があった。
コロナ禍でのインスタ活用、テイクアウトで完売続出
COVID-19の影響で、飲食店では「デリバリー」や「テイクアウト」を活用する動きが広がった。Instagramではこの動きに対応し、「料理を注文」する機能をアプリに組み込んでいる。
「料理を注文」機能は、飲食店のInstagramアカウントに「料理を注文」ボタンを設置し、ユーザーがボタンを押すとInstagramが提携するデリバリーサービスにつながるというシンプルな仕組みだ。国内では4月27日からUber Eatsや出前館などと提携してサービスを提供開始した。
また、5月にはInstagramに「ギフトカード」機能を導入した。ユーザーはお気に入りの飲食店などに行けなくても、お店がInstagramのビジネスアカウントをもっていればそこからギフトカードを購入し、コロナ禍でも経営を支援できるという仕組みだ。
「料理を注文」機能と同様に、プロフィール画面のボタンやスタンプから、パートナー企業(外部サービス)のサイトに移ってギフトカードを購入するという流れで、店にはすぐに収益が渡るという。ユーザーはコロナ禍が落ち着いたら、購入したギフトカードを店舗で利用できる。
6月24日には「料理を注文」と「ギフトカード」に対応するデリバリーサービスをさらに追加し、合計19社が利用できるようになった。
Instagramはもともと、レストランをアピールする手段として支持されている。「料理を注文」や「ギフトカード」といった機能で、レストランへ直接購買する導線を加えたことになる。
「料理を注文」にデリバリーサービスとして4月から参加しているTableCheckの谷口優社長は、「ユーザー投稿型のグルメサイトとは異なり、店舗が主体的にアピールすることで、新たなユーザーを獲得する手段にもなっている」と話す。
TableCheckの事例では「料理を注文」を導入した店舗の事例が2件紹介された。東京のベトナム料理店「An Di」では、Instagram経由の注文が約半数にのぼり、コロナ禍でも連日完売になったという。このレストランでは、電話やダイレクトメッセージでの注文対応が減ったことで、業務の効率化にもつなげている。しかもInstagram経由での注文者は8割が新規顧客だったという。SNSをマーケティングに活用する好例と言えるだろう。
また、京都の中華料理店「京、静華」では、調理の様子をInstagramの「ストーリー」に動画で投稿して“シズル感”をアピールすることで、販売促進につなげた。店舗がダイレクトに商品をアピールできるというSNSの特性を存分に生かしている。