新型コロナウイルスの感染拡大により、社会の仕組みが突然激変した。いままでの常識がひっくり返り、あたふたしている社会人。そんな世の中へこれから出ていこうとしている学生たちは、いまの状況や変化をどう受け止めているのか。
マイナビニュース編集部では、就職活動まっただ中の学生に、希望業種を変更したか、働くことへのイメージが変わったかなどを取材。都内の大学に通う男子学生2名、女子学生3名が本音で語ってくれた。※各人の名前は、仮名です。
不幸を嘆く気持ちを切り替える
まず、自分の就活時期にウイルスが流行したというタイミングについて率直な感想を聞いたところ、最初は「ついていない」「なぜ、いま!?」という思いがどうしてもわき上がったようだ。
だが徐々に「web説明会だと自宅で効率よく情報収集できる」「面接会場へ行くお金を軽減できて助かっている」「授業が無いので就活に集中できる」などメリットにも気付き、すべてが悪いことばかりではないと気持ちを切り替えている様子。
また、コロナ禍を受けて希望業種の変更を検討しているかという質問に対しては、ほとんどの学生がいまのところ変更していないと回答。
もともと観光業界を目指していた日本女子大学に通う相原さんだけは、大きな影響が出ている業界だけに食品業界も視野に入れながら活動し始めたと話す。
他の4名も、志望する業界は変えないもののコロナの影響で大きなダメージを受けた企業、柔軟な対応ができていない企業は避けたいという気持ちは共通している。
withコロナの働き方イメージは?
さて、世界中に広がった未曾有の事態によって「働くこと」そのものに対する学生たちの意識は、どれくらい変わったのだろうか。
「リモートワークが増え、成果主義に変わるという報道に触れた。個々のスキルが必要になってくると感じている」(立教大学/木下くん)
「朝早く満員電車に乗って会社に向かうという働き方以外の選択肢が増えた気がしている」(東洋大学/小林くん)
「出社しないと仕事はできないと思っていたが、リモートワークでも対応可能な仕事があると分かった」(日本女子大学/相原さん)
「通勤が当たり前という固定概念が崩れた。コロナ禍でも収益が見込める企業を選ぼうという意識に変わり、特に大きな影響を受けた航空業界、観光業界などに対して不安を感じる」(慶應義塾大学/佐藤さん)
「状況に応じて大きく舵を切る行動力・決断力、1つの分野が痛手を負っても他でカバーする総合力の大切さを特に学んだので、自分も多くの経験を通してジェネラリストになれるような働き方をしたいと強く思うようになった」(上智大学/土屋さん)
withコロナ・アフターコロナの働き方がどう変わっていくのか、世の中全体を見渡しても正確に想定できている人はいないだろう。むしろ何十年間にわたり、従来通りの働き方に身を挺してきた社会人ほど、この変化に戸惑っているのが現状だ。
過去の延長線上にしか未来を描けない大人たちよりも、これから社会へ出ていこうとしている若い人たちの方が、まっさらな状況から新しい時代を創っていけるのかもしれない。
社会変化を前向きにとらえる
今回、話を聞いた学生たちも漠然とした不安は拭えないものの、
「お金や地位などにこだわり過ぎずに、より自分に合った企業で働きたい」(土屋さん) 「ワークライフバランスも考え、自分の人生にしっかり向き合いたい」(佐藤さん)
「企業側にとっても初めての経験なので『例年通り』は通用しなくなるだろう」(木下くん)
など、変化を前向きに、冷静に受け止め、自分自身の幸せな生き方を見つめていこうという姿勢がうかがえる。
さらに、小林くんは「今回のコロナ就活は10年後、うまい酒のつまみになるのかな」と、できるだけ気楽に構えて目の前の就職活動に淡々と取り組むと自分に言い聞かせるように語ってくれた。確かに、ピンチをチャンスへと転嫁できた経験ほど自分を成長させ、後に忘れがたい思い出になるものだ。
一方で、先行きが不透明なので、現時点で内定を獲得していない人や来年以降就活に臨む後輩たちはさらに不安だろうと、後に続く人たちへの思いやりも感じられた。
いずれにしても、アフターコロナ時代を主体的に創っていくのは社会通念という手垢がついていない若い人たちだろう。そんな気概を持って就活に臨み、ぜひ希望を叶えてほしい。
「上司と飲むのが楽しみ」(小林くん)、「財布とケータイだけを持っておしゃれにランチに行くザ・OL生活を満喫したい」(土屋さん)と、就職後の憧れを教えてくれた学生たち。 そんな"当たり前"だった日常を、彼らが少しでも早く体験できるよう祈るばかりだ。
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