AIで信用力を数値化して、個人向け融資を行うサービスが広がり始めています。カードローンやクレジットカードのキャッシングなどに比べ貸付利率が低めで、スマホだけで手続きが完結することから今後、日本でも広まっていく可能性が高い金融サービスです。そもそも日本はキャッシュレス化が遅れているため、この分野のサービスも始まったばかり。まずは、その仕組みと展開されているサービスを紹介していきます。
「信用スコア」とは? どうやって算出される?
キャッシュレスやシェアリングエコノミーを推進する新しいビジネス領域として、世界が注目している「Credit Tech」。データとテクノロジーを活用することで新しい信用を生み出して可視化し、これまでにない取引やサービスの成立を可能にしようとするものです。
たとえば、日本のクレジットカードの入会審査などで使われる「信用情報」は勤務先や年齢、勤続年数、年収、借り入れやローン、住宅状況など申込書に記載された内容に加え、信用情報機関への照会結果などを加味して判断されます。そのため、若年層には厳しめの審査が行われる傾向がありました。これに対して、信用スコアはこれまで同様の信用情報に加え、提携企業のサービス利用状況、ネット通販の利用履歴、Webサイトの閲覧履歴などから、AIが独自のアルゴリズムを用いてスコアリングし、個人の信用力を数値化。つまりAIが「この人はどれくらい信用できるか」を採点するのです。
「信用スコア」先進国のアメリカ&中国では、どのように使われている?
日本では、まだまだこれからの「信用スコア」ですが、海外では融資だけでなく生活のさまざまなシーンでの優遇措置に活用されています。というのは、これまでのような過去の実績に基づいた信用情報を使った与信では、クレジットカードを持つことができない人が世界には30億人いるといわれます。将来性や人格も含めて審査しAIで信用スコア化すれば、客観的で公正な判断をもとに融資の可否や上限額を決められると考えられるからです。
クレジット社会のアメリカで、圧倒的なシェアを占めているのがFICOスコアという算出方法。特徴はクレジットカードの支払い履歴、借入限度額の何割を利用しているか、新規借入額といったクレジットに関する情報を数値化したもので、住所や年齢、性別、収入、勤務先といった個人情報は計算の対象から外されています。FICOスコアはクレジットカードや住宅ローンの審査だけでなく、電気・ガスの契約時や住宅の入居審査にも活用され、スコアが低いと契約を断られるほか、デポジット(保証金)を求められることがあります。
これに対し個人の細かい情報を積み重ねてAIが分析し、信用スコアを算出するのが中国の芝麻(ジーマ)信用。巨大プラットフォーマー、アリババのモバイル決済サービス(アリペイ)の中に組み込まれた機能です。年齢、学歴、職業はもちろん、過去の支払い状況や資産、クレジットの利用履歴、人脈、消費行動、金融商品の利用状況など、幅広い情報をもとにスコアリングが行われます。信用スコアが高いとホテルやレンタカーなどでデポジットが不要になるほか、一定の国のビザが取得しやすくなるといった優遇を受けられるため、スコアを上げるための詐欺も発生しているのだとか。
日本の「信用スコア」融資はカードローンとどう違う?
日本ではまだまだ発展途上ですが、現時点で「信用スコア」を活用して融資を行っている主なサービスをまとめたものが下図です。いずれも信用スコアを算出するための情報を持っている、携帯電話関連の会社が参画しているところが目を引くポイント。一般的なカードローンと比べて貸出金利の基本設定が低めで、信用スコアによってはこれまでよりもかなり有利な金利で借り入れができます。また、融資が実行されるまでの審査スピードも早いようです。
ただ信用スコアでの融資は手軽に手続きをできるだけに、本当に必要な借入れなのかを冷静に考える必要があります。カードローンなどに比べると金利は低いかもしれませんが、預金金利と比べたらケタ外れに高いのが現実。スマホで簡単な手続きをするだけでも「借金」であることに変わりはありません。