ロジクールは、iPadに対応するBluetoothワイヤレスキーボードを数多く展開するメーカーです。6月25日に、2020年3月に登場した最新iPad Proで使えるキーボード「SLIM FOLIO PRO」が発売されたので、早速、アップル純正キーボードと比較した使い勝手をレポートしてみましょう。

  • 6月25日に発売したロジクールの新「SLIM FOLIO PRO」。今回試した12.9インチモデルのほか、11インチモデルも発売されます

    6月25日に発売したロジクールの新「SLIM FOLIO PRO」。今回試した12.9インチモデルのほかに、iPad Proのサイズに合う11インチ向けのモデルも発売されます

2020年のiPad Proに最適化したアップデート版

ロジクールは、2018年にアップルが発売したフルスクリーンデザインのiPad Proに対応するSLIM FOLIO PROもいち早く発売しています。新製品はこのアップデートモデルで、新しいiPad Proが搭載する、四角いマルチレンズカメラユニットの形に合わせて切り欠きを設けています。

12.9インチ・11インチのiPad Proにサイズを合わせた2モデルがあり、それぞれ2018年モデルのiPad Proと互換性を確保しています。

さて、2020年モデルのiPad Proに合わせ、アップルは新しい純正キーボード「Magic Keyboard」を発売しています。こちらはタイピング感の劇的な向上と、iPad Proが浮いているように見えるフローティングカンチレバーのギミックが特長の製品です。

2018年モデルのiPad Proと同時に誕生した「Slim Keyboard Folio」も並べて比較した時に、ロジクールのSLIM FOLIO PROを選ぶメリットはどこにあるのでしょうか。

  • アップル純正のiPad Pro対応最新キーボード、Magic Keyboardとの違いも確認してみましょう

キーボードはフルサイズ、タイピング感は?

ロジクールのSLIM FOLIO PROはMagic Keyboardと同じシザー構造のフルサイズのキーボードを搭載しています。キーボードのピッチは11インチのモデルが17mm、12.9インチのモデルが19mm。キーストロークはどちらも約1.6mm。LEDバックライトは2段階の明るさとオフが選択できます。

キーキャップはMagic Keyboardよりも横幅が数ミリ狭く、少し高さがあります。アップルのMagic Keyboardのタイピング感よりも、指先への跳ね返りはふわっとしており、タイピング音は静かに抑えられていました。

  • シザー構造のキーボードを採用。キーキャップはやや高さがあります

  • LEDバックライトは2段階の明るさとオフ(消灯)が選べます

タイピング感は悪くありません。ただ、SLIM FOLIO PROにはUSキー配列のモデルしかなく、Macユーザーに馴染み深い独立した「英数」「かな」キーもありません。初めてロジクールのiPad用キーボードを使う方は慣れるまでに少し時間が必要かもしれません。筆者はリターンキーがやや小ぶりなことに最初は少し戸惑いました。

iOSショートカットが便利。パームレストは対策したい

ただ、慣れてくると本機独自のiOSショートカット(もちろんiPadOSにも対応)がとても便利であることが実感されてきます。Macのファンクションキーの感覚にとてもよく似ていますが、iPadらしく「ホーム」画面に戻るキーや、バックライトキーの輝度調整、音量のアップダウンをショートカットキーから操作できると、便利な場面が数多くありました。

iPad Pro用のMagic Keyboardに慣れてくると、ほかのキーボードを使ったときにうっかりトラックパッドを探して指が宙をさまようこともありました。トラックパッドは仕方ないとしても、SLIM FOLIO PROとアップルのSlim Keyboard Folioにはキーボードのパームレストがないことが、MacBookやiPad ProのMagic Keyboardのユーザーには気になるポイントになるかもしれません。長時間に渡ってタイピングをし続けると、たまる疲れに差が出てくるからです。別途好みに合うパームレストを買い足してもよいでしょう。

  • アップルのSlim Keyboard Folioと同じくパームレストがないキーボードなので、長時間タイピング作業を行う場合は別途パームレストを用意してもいいかもしれません

  • 左端のホームボタンなど、iPadOSのコントロールに最適化したショートカットキーが配置されています

Apple Pencilによる作業もしやすい

Magic Keyboardにはない、ロジクールのSLIM FOLIO PROのアドバンテージもあります。本機は、アップルのSlim Keyboard Folioと同様に、Apple Pencilで腰を落ち着けてイラストや製図の描画に打ち込む用途に向いているキーボードだと思います。

iPadのスクリーンを装着する側のパネルを折りたたんで、キーボード側のパネルに乗せた状態は「スケッチモード」と名付けられています(キーボードが使える通常の状態から、画面を手前に滑らせた状態)。キーボードに負担をかけることなく、Apple Pencilを心置きなくiPadの画面に走らせることができます。

  • 本体を畳んで「スケッチモード」にするとApple Pencilによる描画もスムーズにできます

スケッチモードに形状を変えても、画面がガタつくことなくApple Pencilでしっかりとした線が書けます。スケッチモードの時にはiPad Proの画面がやや傾くため、横向きの時はその傾斜で描きやすいですが、画面をタテに使ってメモを取る時には少し気になりました。SLIM FOLIO PROのパネルを背中合わせにした状態で描くこともできますが、その際には誤って何かを下敷きにして、キーボードの面を傷つけないように注意しましょう。

  • 「スケッチモード」にすると本体がやや斜めに傾きます。画面を横向きにして描画する場合は快適ですが、iPad Proの画面をタテに使いたい場合は工夫が必要

  • キーボード側を下に向けてたたむと全体がフラットになります。キーボードに筆圧の負荷がかからないように注意しましょう

「膝うちタイピング」も試してみました。SLIM FOLIO PROは筐体が強固でどっしりとしており、膝の上に乗せると安定します。キーボード側のパネルを斜めに立てた「タイピングモード」は、傾きのポジションが1つにしか固定できないので、人によってはややiPadのディスプレイが見づらく感じるかもしれません。

  • iPad Proを立てた状態の角度調整ができないため、ひざ打ちタイピングの際にはやや斜め上から画面をのぞき込むような姿勢になる場合があります