ソフトバンクは24日、第34回定時株主総会を開催しました。新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大防止の観点から、株主を招集せず、議事進行および株主からの動議・質問は、すべてライブ配信を通じて行われました。

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    ソフトバンクは24日、第34回定時株主総会を開催。株主総会の模様は、ホームページおよび公式SNSアカウント(Twitter、Facebook、YouTube)でライブ中継されました

「2019年度 事業報告」「今後の事業戦略」および「決議事項の採決」に35分かけて、残りの25分を株主からの質疑応答の時間に充てた今回の株主総会。寄せられた質問のうち、株主の関心が高そうなものについて、ソフトバンク 代表取締役の宮内謙氏が回答していきました。

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    株主からの質問に答えたソフトバンク 代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮内謙氏

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    すべての出席役員は、ウェブ会議システムを通して遠隔で出席

最初の質問は、役員報酬の金額の根拠について。宮内社長は「役員報酬の水準については国内の時価総額、営業利益、外部調査などを参考にして設定しています。業績に連動する割合が大きく、業績が悪ければ大きく減少する仕組みで、業績連動部分は、現金賞与が50%、株式報酬が50%。社外取締役を中心に構成されている報酬委員会で確認するプロセスを経ています」と回答しました。

他社を凌駕できるほど成長できるのか、コロナの影響は、といった質問には「ソフトバンクでは、Beyond Carrier戦略の推進で成長していきます。弊社ならではの強みのひとつが、国内No.1のインターネットサービスであるヤフーを持っていること。今後はLINEとの経営統合を通じて、アジアから世界をリードするAIテックカンパニーを目指します」と答えます。

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    ソフトバンクでは、Beyond Carrier戦略を掲げています

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    ヤフー、LINEと連携して、アジアから世界をリードするAIテックカンパニーへ

また、投資ファンド『ソフトバンク・ビジョン・ファンド』とのシナジーも強みになると宮内社長。「例えば、PayPayは日本国内で3,000万人のユーザーを有する日本最大の決済プラットフォームになりました。今後は決済手数料、広告、スマホを利用した金融事業に進出していくことで、大きな収益が見込めます。ソフトバンクでは、今後とも新しい価値の創出、収益の拡大に引き続き取り組んでいきます」と、インドの決済サービス事業者Paytm(ソフトバンク・ビジョン・ファンドのポートフォリオカンパニー)と連携して2018年秋よりスタートしたPayPayを例に、展望を語ります。

Alipay創業者のジャック・マー氏がソフトバンクグループの取締役を退任した影響について聞かれると「アリババ社とは緊密な協力関係にあります。SBクラウドも、ソフトバンクとアリババグループの合弁会社。またPayPayはPaytmと一緒にやっておりますが、Paytmの40%の株式を保有しているのがアリババです。そういう意味でも、非常に良い関係にあり、緊密な協力関係が後退することはありません」と答えました。

5Gの通信事業で採算はとれるのか、という質問には「ソフトバンクでは、すでに23万箇所のアンテナ基地局を保有しています。他社に比べて多く、これからも小型アンテナ等で対応していくことで充分に採算がとれると考えています」と回答。携帯電話の電波環境を強化してほしいという声には「この10年で相当改善しましたが、ますます頑張っていきます。現在は、他社に比べて非常によく繋がる、とのお声をいただいております。今後とも、いつでも繋がるように改善して参ります」と話します。

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    5Gの展開スケジュールについて

社会のデジタル進展についていけない層の取り込みについて、考え方を問われると「デジタル化の進展により、デジタルデバイド(情報格差)の問題が起きないように、さまざまな取り組みを行っています」として、シニア層に向けてシンプルスマホ、若年層に向けてジュニアスマホ、キッズフォンを提供しているほか、全国のソフトバンクショップにスマホアドバイザーを配置、スマホ教室を開催するなど、スマホを活用した快適な生活を積極的にサポートしていると紹介しました。

事業投資の基準・方針について聞かれると「設備投資、M&A投資の2種類に分けられます。設備投資の目的はネットワークの維持にあり、現在、5Gネットワークの早期全国展開を目指すために効率よく行っています。今後も年間4,000億円程度の投資を行う見込みです。M&A投資は新規事業の展開のためで、年間500~700億円の予算で計画的に行います。内部収益率の基準を一定の期間内で超えられるか、を目安にしています。このように成長への投資を行いながら、年間5,000億円程度のフリーキャッシュフローを創出し、事業成長と株主還元の両立を図っていきます」と説明しました。

ソフトバンクの株はいつ公開価格の1,500円に戻るのか、買値以上にならずに困っている、という声には「本当に大事な質問です。ありがとうございます。現在の株価は公開価格の1,500円を超えておらず、株主の皆様にご心配をおかけしている状況です。非常に重く受け止めております」としつつも、「今期も増益・増配をコミットしております。LINEの経営統合など今後の成長にも手を打っており、継続的な成長に自信を持っています。外部アナリストからの目標株価では平均で1,600円を超える評価をいただいております。Beyond Carrier戦略の果実が見えたとき、株価についても一段とご評価いただけると期待しています。頑張ります」と答えました。

役員構成が日本人ばかりだが、海外展開は検討していないのか、という質問には「LINEとの経営統合を機に、本格的に海外に向けた事業展開を検討していきたいと思っています。LINE社はタイ、台湾、インドネシアなどの海外で事業展開しています。我々の持っている機能、事業をうまく海外でも展開して、Beyondジャパンとしてやっていきたい」と説明します。

親会社であるソフトバンクグループから株式売却の話が出ているがこの影響は、という質問には「ソフトバンクグループが当社の株式を売却したとしても、当社の戦略、業績への影響はありません。当社は上場以来、ソフトバンクグループの子会社ですが、事業運営では独立した意思決定を行っており、今後もそれを変えることはありません」と述べました。

株価低迷の責任から孫正義代表と宮内社長の退任を要求する、という声には「非常に厳しい質問です。ご意見を真摯に受け取り、株価が上がるように努力していきたいと思います」と回答。続いて、元社員のロシアへの情報漏えいについて、取締役の責任について聞かれると「責任を痛感しております。今後の再発防止に最大限の努力をしていきます」と答えました。

今回のような形式の株主総会の運営は適法か、という意見には「国のガイドラインに準拠しており、適法と考えております。新しい取り組みなのでご不便、ご不満もあろうかと思います。今後とも改善に取り組んでいきたいと思います」と話しました。