クライアントは1+4コアの統合パッケージで小型端末にも対応

インテルは6月23日に定例となっているプレスセミナーを行い、その中でインテル株式会社 執行役員常務 技術本部 本部長 土岐 英秋氏は最新のサーバー向け、クライアント向けプロセッサやFPGA、メモリ製品等を紹介した。

  • 第2四半期のインテル最新動向 LakefieldやCooper LakeでCPU拡充、Appleの件は?

    インテル株式会社 執行役員常務 技術本部 本部長 土岐 英秋氏(昨年12月に帝国ホテルにて撮影)

  • サーバー製品としてCPUとFPGA、クライアントとしてSoC的なCPUを紹介

クライアント向けプロセッサとしてはインテルハイブリッドテクノロジを利用したIntel Coreプロセッサー「Lakefield」を紹介。CPUにCore系のSunny CoveコアとAtom系Tremontコアを4つ含めたBig-BIGGER構成となっている他「Windowsの動くフルパフォーマンスをメモリまで含めたフルパッケージにしているのはおそらく世界初(土岐氏)」と紹介した。

  • LakefieldはI/O、CPU、DRAMをワンパッケージに収めた構成で基板サイズを小型化できる

  • Lakefieldは未来のPCを実現できる製品だという。CESでも参考製品が紹介されていた

Atom系と言っても現在のCeleron/Pentiumの N/Jシリーズの性能は意外と侮れない。プロセッサの割り振りはWindows OSと協調し、主にフォワードプロセスをSunny Cove、バックグラウンドプロセスをTremontに割り当てる。

ハードウェア的には3Dダイスタッキング技術「Foveros 3D packaging technology」を使用し、22nmのI/Oダイと10nmのCPUダイ、DRAMを12×12mmという超小型のパッケージに収められているのが特徴だ。これによって基板面積削減が可能で8インチ程度の製品にまで対応すると土岐氏は説明していた。

  • FOVEROS技術によりダイが3段重ねで構築される。Lakefieldでは無線系は入っていない

  • 構成図。CPUコアがBig-BIGGERなことがわかる

サーバーCPU、FPGAはAI演算を引き続き強化

サーバー向けに近日販売として紹介したのが第3世代Intel Xeonスケーラブルプロセッサだ。4-8ソケットに対応するCooper Lake(コードネーム)は6月18日に米国発表済、1-2ソケットのIce Lake-SPが今年後半に登場予定となっている。

第3世代Intel Xeonスケーラブルプロセッサの特徴はインテルディープラーニングブーストの強化で新たな数値表現BF16(Bfloat16)をサポートしている。

FP32は8bitの指数部と23bitの仮数部をもつが、AIでは演算が遅くなるという問題がある(注:AI演算では精度が高いことよりも多数の演算の方が重視されれる)。そこで7bitの仮数部と8bitの指数部を用意することでデータ量を半分にして演算を高速化した。BF16によって前世代のFP32と比較すると学習で1.93倍、推論で1.9倍の高速化を実現するという。

来年には次世代のIntel Xeonスケーラブルプロセッサ「Sapphire Rapids(コードネーム)」を1-8ソケット対応で投入すると紹介。ディープラーニング向けの新命令AMX(Advanced Matrix eXtensions)が利用できるようになる。AMXに関しての説明はなかったが、多次元配列(Tensor)の強化となりそうだ。

  • インテルのAI/アナリティックス対応ハード。CPU/GPU/FPGA/VPU/AIアクセラレーターと全方位で対応するほか、ストレージも用意。さらにAPIやソフトウェアスタックもある

  • 第3世代Intel Xeonスケーラブルプロセッサーは基本性能の向上以外にAI対応

  • Bfloat16をサポートすることで、学習・推論のパフォーマンスを約2倍に強化した

  • 来年は次世代Intel Xeonスケーラーブルプロセッサを予定し、新命令を追加する

メモリやFPGA、ソフトウェアとエコシステム充実

データストレージに関してはメインメモリ空間に向けた不揮発性メモリ、Intel Optain パーシステントメモリー 200シリーズを近日中に発売する。前世代と比較して帯域幅が平均25%高速化され、従来のNAND SSD比最低225倍のアクセス速度向上が実現できる。1ソケットあたり4.5TBの実装が可能だ。また、最先端の3D NANDを使用したSSD D7-P5500とP5600は従来世代と比較して最大40%レイテンシーを削減し、最大33%の性能向上となっている。

  • オールフラッシュアレイ向けにSSD D7-P5500/P5600を投入。低レイテンシ―で高速だ

FPGAに関しては従来のStratix MX10に加えStratix NX10が登場。乗算器×2、アキュムレーター×2のDSPブロックを乗算器×30、アキュムレーター×30のAI Tensorブロックにする事で、MX10比で最大15倍のINT8演算を可能にする。さらにHBM接続されたメモリーや広帯域ネットワーキングを含んでおり、インテル初のAIに最適化されたFPGAとなる。

  • 汎用FPGAをAI向けにチューニングしたStratix 10 NX。INT8演算なら最大15倍となり、HBM接続されたメモリや広帯域ネットワークを備える

  • AI Tensorブロックは乗算器、アキュムレーター共に15倍に拡張した

インテルはハードウェアだけでなく、開発環境を含めたソフトウェアにも強い。さらにパートナーが提供する検証済のテクノロジをIntel Select Solutionsとして紹介。業界を巻き込んだ確固たるエコシステムがインテルの強みだという。

  • 他社の技術も目的別にカタログ化したIntel Select Solution。強固なエコシステムをアピールしている

Macの脱Intelに対しては?「業界では(よく)起こる事なので驚きもない」

当日はインテル株式会社 代表取締役社長 鈴木 国正氏氏も登壇、2030年に向けた目標としてRISE(Reponsible/Incusive/Sustanable/Enabling)やCOVID-19への対外的、インテルが推し進めるデータ・セントリック・トランスフォーメーション(DXをよりデータ中心に考えるインテル独自のメッセージ)を紹介。

  • インテル株式会社 代表取締役社長 鈴木 国正氏氏

  • インテルの2030年に向けた4つの目標は「RISE」

  • インテルの新型コロナウイルスに対する取組

  • いわゆるDXをさらにデータセントリックするインテル独自の取組がDcXだ

  • 今年はGIGAスクール構想で教育市場にも大きなチャンスがある

AppleがMacにARMプロセッサを使用するという発表に対してのコメントを求められていたが「インテルとしては過去にもよくある事のひとつで特に大きな数字であるとか言えない状態です。業界で起きる事なので驚きもない。我々がやらなければならないのはインテルならではの業界を巻き込んだエコシステムがある事で、これをプラットフォームとしていい製品を徹底して作る事」と深刻には受け止めていないようであった。