ついにプロ野球がきょう19日に開幕する。

新型コロナウイルスの影響で、延期が続いていたが、セ、パ両リーグで19日に開幕。当面は無観客で開催される。

それを受け、ニッポン放送の野球中継『ニッポン放送ショウアップナイター』も19日からプロ野球中継をスタートする。

今回、同野球中継で実況を長年担当するニッポン放送の煙山光紀アナにインタビューを実施。選手とのエピソードや思い出深い試合、無観客試合での実況で感じたこと、そして交流があるアイドルグループ・Kis-My-Ft2についても語った。

■野球実況ならではの特徴とは

煙山光紀

煙山光紀 -ニッポン放送提供

――煙山さんはいつ頃から実況のお仕事をされているんですか。

新卒で入社したラジオたんぱ(現・日経ラジオ社)、次のテレビ北海道時代でも競馬やスキージャンプの実況をやっていました。1994年にニッポン放送に中途入社した後は、競馬中継に加えて、Jリーグができたばかりというのもあって、サッカーを中心に担当していました。野球実況は2008年から本格的に担当するようになりました。

――競馬やサッカーの実況と比べて、野球実況ならではの特徴はありますか。

野球実況を最初にやっていた頃は「サッカー中継みたいだ」とよく言われました。それは緩急なくガーッとしゃべり続けていたからです。野球はサッカーや競馬と違い、動いていない時間がほとんど。今までは、動いているものにリズムを乗せていたので、止まっているものに対して、適切な声のリズムやテンションを乗せるのは難しかったですね。

――先輩から何かアドバイスはありましたか。

「見えない所をしゃべりなさい。そのために野球を勉強しなさい」と言われていました。見えないものとは、「この状況だったらランナーが仕掛けてくる、ベンチが代打を出してくる」などの作戦面や選手の心理などです。リスナーがラジオをパッとつけたときに、実況のテンションで「これは大事な場面だな」と分かってもらわなくちゃいけないのに、お前の実況だと緊迫した状況かどうかが分からない」と。

当時、実況の翌日は、録音を聴いて家で悶々と1人反省会をしていたんですけど(笑)、そうじゃなくて、球場に行って「あの場面での配球はどうだったのか」「何故代打を出さなかったのか」など、選手や首脳陣に訊いて答え合わせをするなど、もっと野球という競技の勉強をする事が必要だとアドバイスして頂きました。

■「ワーストの実況」を振り返る

――印象に残る失敗はありますか。

ある試合で「今日は上手く実況できているな」と思った事があるんですが、結果としては、それが僕の中ではワーストの実況になりました。「今日はバッターの前の打席の配球まで覚えているし、頭も口もよく回る。野球実況ってこういうことか」と思いながら気持ちよくやっていたんですが、帰り道にネットを見ると、少し荒れてて(笑)。あらためて放送を聴き返したら、すごく雑になっていた。丁寧さや一生懸命さ、誠実さがなくて…。

――ネットの評判は気にされるんですか。

そのときのことがトラウマになっているので、エゴサーチはしますね(笑)。褒められなくても全然よくて、なにも起きていなければホッとします。逆に言うと、やっぱりちゃんと聴いてくれているんだなと感じました。雑になったり、図に乗るとリスナーに伝わってしまう。あのときのような失敗は、2度と繰り返すまいと思ってから、実況が安定するようになりました。

――選手への取材で、印象的だった事はありますか。

ヤクルトの石川雅規投手です。彼は入団から5年連続で2桁勝利をマークしていたんですが、6年目にスランプになって2軍落ちしました。取材されるのは嫌だろうなと思ったんですが、目を見てしっかり話してくれた。「左バッターのインコースに投げられていない」と。

左ピッチャーって、当ててしまう可能性があるから、左バッターのインコースに投げづらいんですよ。でも「このままじゃ終わっちゃう。インコースにいかないと飯が食っていけない。当ててしまったらごめんなさい位の気持ちで投げます」と。そして石川投手はそこから這い上がりました。

――たしかに石川投手は、その後も活躍を続け、2019年シーズン終了時点で171勝をあげています。

石川投手は相当気が強いんです。連打された翌日に話を聞くと「打たれるとカッカしてどんどんストライク投げちゃうんです。折り合いつけて冷静にやらないといけないんですけどね」と苦笑いしていました。でも、そのくらい気が強いから、あれだけ勝てるんだなと。技術はもちろんですが、結果を出すためには、メンタルの要素が大きいんだなと感じました。