JAL(日本航空)が客室乗務員ためのリモート教育の様子を7月16日にメディアに公開した。 Web会議サービスの「Zoom」を利用し、「ブラッシュアップ教育」のカリキュラムにリモートで参加した現役の客室乗務員の受講者たちは、国際線ファーストクラスでの業務に関するロールプレイングなどを通して、サービス向上を図った。

  • 搭乗時のエスコートをファシリテーターが実演。タブレットなどでも中継することで受講者は客目線でチェックできる

オンラインだからこそのメリットも

JALの「ブラッシュアップ教育」はフライト業務を一定の期間経験した若手の客室乗務員を対象に、客室乗務員として必要なサービス技量や知識などを乗務員同士で確認しながら、サービス力の強化や学びにつなげていくためのカリキュラム。

通常、受講者たちは実際にモックアップ(実物大の模型)の設備などを利用しながら実地で行われるが、3密回避などの観点から緊急事態宣言が発出される直前の4月頃よりオンライン仕様のカリキュラム作成といった準備を進め、先月からリモート化するかたちで実施しているという。

ブラッシュアップ教育には国内線のフライトを経験するようになって4カ月ほど経過した客室乗務員向けの教育プログラムや、国際線で乗務するようになって6カ月ほど経った入社1~2年目の客室乗務員に向けたプログラムもあるそうだが、今回公開されたのは「国際線ファーストクラスブラッシュアップ教育」というもの。

フライトの機会が大幅に減っている状況下だが、国際線のファーストクラスの業務を行う資格を取得後、6カ月ほど経過した客室乗務員を対象とするプログラムとのことで、ニューヨーク便の離陸から着陸までの様々なシーンを想定したロールプレイが行われ、フィードバックのコメントなどもかなり具体的・実践的な内容だ。

入社3~4年目にあたるという16名の受講者たちは、「Zoom」を使ってそれぞれの自宅から参加していた。

  • 思い思いの背景で参加する受講者たち。「Zoom」の使い方なども熟れた様子

こうしたブラッシュアップ教育で進行やフィードバックを行う客室乗務員は、国内線や国際線のフライトで実際の業務にあたるための資格を付与する訓練におけるインストラクター(教官)とは異なり、"ファシリテーター"と呼ばれている。

あくまで参加者同士で学び合う場、気づきを与え合うための参加型クラスという位置づけとなっているためで、1クラスを2名のファシリテーターが受け持ち、入社年度が近い先輩客室乗務員をファシリテーターとして配置するなど、発言しやすい環境や雰囲気づくり面の工夫もあるようだ。

「緊急事態宣言下ではファシリテーターも含めた全員が自宅から参加するかたちで実施していましたが、解除後はワインボトルやカテラリーなど様々なアイテムも利用できるモックアップから、ファシリテーターが自宅にいる受講者に向けてライブ発信するようなスタイルで行なっています。3密を避けながらも臨場感のある教育を行うことが可能になりました」とは、リモート化のプログラム改定を進めたJAL客室本部客室品質企画部の岡部有里氏。

  • ワインやウェルカムシャンパンのサーブを行うシーンも。当然だが受講者が見やすいようにカメラのアングルなどは適宜、調整しなければならないようだ

食事・ドリンクをサーブする際のポイント、乗客の様子などをいかに察知して日本語や英語でどのような声がけを行うかなどなど、プログラム内容は多岐にわたっている。

  • 客のジャケットを預かる際の注意点なども確認していた

  • モックアップの様子

「立ち振る舞いなど、やはり実技に関しては自宅で実際にやってもらうことが難しいものもあります。その反面、表情やアイコンタクトといったお客様とのコミュニケーションの部分は、むしろ「Zoom」を使ったリモートのスタイルのほうが乗務員同士で確認しやすく、実際のお客様の目線で細かく確認できるというメリットも感じられているようです。受講者へのアンケートでは、「ロールプレイ時に自分や他の人がどんな表情やアイコンタクトでお客様に接しているか、非常に勉強になる」といったコメントが多く寄せられていますね」とのこと。

5月のゴールデンウィーク明けから本格的にスタートしたリモートによるブラッシュアップ教育だが、6月末までに40クラス、約650名への実施が完了する見込み。JALでは在籍している約7000人の客室乗務員のうち、今年度のカリキュラムの対象者である約1800人の客室乗務員に対して、こうしたリモートによるプログラムの実施を計画している。