KDDIは6月17日、第36期定時株主総会を開催。3月にサービスを開始して対応端末の販売も始まった5G(第5世代移動通信システム)ですが、株主からは基地局整備のロードマップについて質問が挙がる場面もありました。
利益成長と社会貢献のバランスは
株主からの質問には、代表取締役社長の高橋誠氏、および取締役らが回答していきました。
企業の成長(利己)と社会貢献(利他)のバランスについて聞かれると、取締役の村本伸一氏は「中期経営計画では、ひとつの目指すべき姿として『社会の持続的な成長に貢献する』を掲げています。基本精神であるKDDIフィロソフィーでも『社会的な役割を果たす』をうたっています。通信事業者は、国民共有の財産である電波をお借りして事業を営んでいますので、いわゆる一般企業よりも積極的に社会への貢献を果たしていきたい考えです」と説明しました。
営業活動で生み出されるキャッシュの使い道については「優先順位として、まず成長投資が第一です。企業のマネージメントとして、持続的な利益成長を重視しています。ひいては、それがお客様、取引先、社会といったステークホルダーの期待にお応えすることでもあると考えています」と説明。
そのうえで「次に配当、最後に自社株買い、というスタンスです。今後も持続的成長と株主還元の強化、この両立をしっかりやっていきます」としました。これに高橋社長は「利他の心をしっかりと実践して参りたいと思います」と改めて説明しています。
ワンセグスマホとNHKの受信料について
ワンセグ機能を搭載した携帯電話やスマートフォンを販売する際に、NHKの受信料の支払い義務について利用者に説明したほうがよいのではないか、という意見が株主から寄せられました。
これに対し、取締役の雨宮俊武氏は「現状から説明しますと、ワンセグ機能を搭載した端末をお持ちの方がNHKに受信料を支払う義務につきましては、2019年3月の最高裁における判決に基づきまして、支払い義務があるとされています。ただ、NHKとお客様の契約関係となりますので、当社から直接のコメントは差し控えます。現状、auショップの店頭にてお客様から問い合わせがあった場合は、NHKの支払い窓口をご案内しています。NHKのインターネット配信につきましては、料金聴取の方法も未整備であるということで、KDDIとしてのコメントは差し控えます」と回答。今後も利用者に丁寧な案内をしていくため、株主からの質問は貴重な意見として参考にしていきたい、としました。
海外での通信利用は、さらなるサービス改善を約束
競合他社は世界中でインターネットが使えるサービスを提供しているが、という質問に対し、取締役の東海林崇氏は「私どもも、特別な契約なしで世界中で利用できる海外ローミングを提供しています。海外渡航時に利用できる『世界データ定額』サービスも好評です。2020年2月1日には早割キャンペーンをスタートしました。世の中にあるWi-Fiルーターのレンタルサービスと比較しても、遜色のない料金でご利用いただけます」と回答。高橋社長は「引き続き、サービスについては改善したいと思っています」と付け加えました。
5Gエリア、3年後には現行の4G並みに!
第5世代(5G)移動通信システムのための周波数の運用方法、また5G基地局の建設計画について聞かれると、執行役員の吉村和幸氏は「(株主が指摘した)ドコモさんが5G基地局を3倍に増やす計画、という一部の報道も目にしました。そもそも、総務省のBeyond 5G推進戦略懇談会において、整備計画を当初の3倍に増やすという話が出ています」と回答。そのうえで、KDDIでは段階的に5G基地局を増やしていくと説明します。
「弊社では現在、昨年度に割り当てられた周波数でエリアを構築しているところです。今年度中に1万局を、全国の主要拠点の中心街に設置します。今年の秋の法改正によって、既存のLTEの周波数を5Gに転用できるようになるので、4Gの周波数の一部を5Gに展開する予定です。さらに、4月1日に報道発表しました通り、KDDIはソフトバンクさんと一緒に5G JAPANを設立しました。お互いの基地局のリソースをシェアすることで、地方における5Gのエリア展開を加速します」
基地局の具体的な建設目標については、「来年度末には約5万局のエリア展開を掲げています。2023年度には、現在の4Gと遜色のないネットワークにできればと考えています。1日でも早く、KDDIの5Gを多くのお客様に届けていけたらと思っています」と説明しました。