自分の顔に大きさについてコンプレックスを抱えている人は少なくない。「小顔美人」なる言葉が示すように、大半の人がより「小さな顔」に憧れを抱いているが、顔のサイズにまつわるこんな話を見聞きした経験はないだろうか。

「親知らずを抜けば、小顔になる」――。

親知らずは、口腔内の最も奥まった場所に生えてくる歯だ。歯磨きがしづらい場所にあり、横あるいは斜めに生えてくることが原因で口臭や虫歯、歯周炎などのトラブルを招きやすい厄介な存在として知られている。そのため、将来のリスクを回避するため、あえて事前に抜歯をしてしまうケースもあるが……。

果たして、本当に親知らずを抜けば小顔になることができるのだろうか。中村歯科医院の院長で小倉歯科医師会の理事でもある中村貢治医師に聞いてみた。

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親知らずを抜くと小顔になるのはホント?

親知らずの抜歯による「小顔効果」はあるのかどうか、ズバリ中村医師に聞いてみると「『親知らずのスペースが頬の隙間を狭くするので小顔になる』と言われていますが、顎の骨の大きさは変わらないのでそれほど効果はあるとは思えません」との答えが返ってきた。残念ながら、そこまで目立った「小顔効果」は得られないようだ。

親知らずの抜歯で小顔効果を実感しやすい人の特徴

ただ、親知らずの抜歯によって小顔になったことを実感しやすい人もいるという。具体的には以下の特徴を持つ人が該当する。

えらが張っている

歯が無くなると、自然とその歯を支えていた骨がやせていく。親知らずは上下左右に最大4本生えるが、下の部分に生える親知らずはえらに近い部分にあることが多い。そのため、親知らずを抜くとえら周りの骨がやせてすっきりとした印象に見える可能性があるというわけだ。

なお、えら張りは顎関節(がくかんせつ)症やほおづえが原因となっている可能性がある。

顎関節症の人は日常から歯を食いしばっている時間が長くなる傾向があり、咀嚼(そしゃく)筋に負担がかかりがちだ。咀嚼筋が肥大した結果、えらの張るような顔貌になってしまうケースがある。また、うつぶせ寝やほおづえは、歯のかみ合わせを悪くし、顎をゆがませるリスクがある。顎がゆがめば当然、顔も大きく見えてしまう。

もしもえらのせいで顔が大きく見えてしまうようならば、親知らずを抜歯する前に、こういったうつぶせ寝やほおづえなどの日常習慣を改善するというのもいいだろう。

頬骨が出ている

上の親知らずが生えている部分が頬骨の辺りにあるため、抜歯によってこの骨がやせていけば、上述のように顔周りがすっきりとした印象になる可能性がある。


親知らずは虫歯や歯周病、口臭などのトラブルを招く恐れがあるが、他の永久歯を失った場合、親知らずを再植すれば喪失した歯の「スペア」として機能するケースもある。つまり、これらの疾患リスクがなければ、無理に抜歯をする必要もないということだ。

親知らず抜歯による小顔効果もそこまで望めない以上、小顔効果を狙って安易に親知らずを抜くという選択肢は避けた方がよいだろう。