歌手・俳優の吉川晃司が、きょう16日にスタートするカンテレ・フジテレビ系主演ドラマ『探偵・由利麟太郎』(毎週火曜21:00~)の裏話を語った。
同作は、金田一耕助シリーズで知られる横溝正史が世に送り出した、戦後初の本格長編小説『蝶々殺人事件』を含む『由利麟太郎』シリーズを初めて連続ドラマ化するもの。元警視庁捜査一課長という経歴を持つ、白髪の名探偵・由利麟太郎を吉川が。そんな由利を敬愛し、助手としてバディーを組むミステリー作家志望の青年・三津木俊助を志尊淳が演じる。
――由利麟太郎役のオファーを受けたときのご感想は?
面白い挑戦だなと思いました。そもそも、普通のドラマをやるのなら、僕には声をかけないでしょう(笑)。変わったこと、攻めたことをやりたいというプロデューサーや監督の想いを感じました。“由利麟太郎”については、ちょっとだけ知っていました。横溝正史さんが金田一耕助よりも前に生み出していた「名探偵」。原作通りの時代設定で映像化するのはいろいろとむずかしいんじゃないかと思ったので、「現代に置き換える」と聞いて、なるほどなと。うまい具合に時代を飛び越すことができれば、成立するだろうと思いました。
――意外にも、本作が「地上波連続ドラマ初主演作」ということですが、その点については?
そこは正直に言って、あまり意識していないんですよ。「俺でいいの? 大丈夫なの?」とは思いましたけどね(笑)。ありがたかったのは、以前『黒書院の六兵衛』(18年、WOWOW)でもご一緒した、東映京都のスタッフの方々とまた組めたことですね。今回の企画を聞いて、「京都で撮ったら良いんじゃないですか?」と提案したら、制作サイドも同じ考えだったので、太秦の東映撮影所を拠点にすることになりました。結果的に、やっぱり京都で撮れて良かった。ロケに行っても、趣のある建物が多いし、太秦のスタッフは映像に独特の陰影や奥行きを出せる。普通のテレビドラマとは一味違った、映画のようなスケールとこだわりで撮影ができたことに、手応えを感じています。
――由利麟太郎をどのような人物と捉えていらっしゃいますか? また、演じるにあたって、特に意識されたことは?
由利は、金田一耕助とも対照的で、推理においては徹底的に現場を観察して、記憶し、分析していく。今回の作品では、アメリカのハンターから学んだやり方(=トレース技術)が、彼の基盤になっているという設定なんです。そこからイメージを広げて、荒野のカウボーイ的な人物像が見えてきました。由利麟太郎は、過去のある事件のことを引きずっていて、心の根底に深い孤独感がある。二度と取り戻せないものをずっと追い求め、人生をさすらっている…。演じるうえでは、そんな彼の内面を、セリフじゃなく横顔や後ろ姿で醸せればと思っていました。だから劇中でも、必要最小限しか喋っていません。たまには、こういう主人公がいても良いんじゃないですか?(笑)
――弓道のシーンがありますが。
打ち合わせのとき、ちょっと前から弓をやり始めたという話をしたら、「それ良いですね!」と言われて、由利麟太郎も弓道をたしなんでいる設定になりました(笑)。事件の真相を見抜くべく、精神を集中させるくだりで、弓道のシーンが出てきます。
由利が事件現場などでよく見せる手のポーズも、実は弓道と関係があります。弓道では、弓の握り方のことを「手の内」といいまして、それがすごく大事なことなので、「手の内を明かす」ということわざもそこからきているんですが、あのポーズはまさに、由利の「手の内」なんですね。「フレミングの法則」ともちょっと似ていますが、そっちが由来ではありません(笑)
――由利の弱点は“先端恐怖症”ですが、吉川さんに弱点はありますか?
高い所が苦手です(笑)。今回、撮影所の屋上から下をのぞき込むというシーンがあったんですが、「吉川さん、もっと身を乗り出してください」と指示されて…。なんとなく、カメラマンも僕を見ながらニヤニヤしているんですよ。だから、あれは僕の弱点を誰かスタッフが知っていて、わざといじめたんじゃないかと疑っています(笑)
下が水なら、10mとか15mの高さでも、平気で飛び込めるんですけどね。コンクリートだと怖くて、下を見るだけでもダメです。逆に飛行機くらいの高さなら、むしろ大丈夫なんですけど(笑)
――ホラーミステリーにちなんで、吉川さんのホラー体験がありましたら教えてください。
ホラー体験はないですね。ミュージシャン仲間には霊感の強い人が意外にいて、僕がなんともなくても「ゴメン、俺、この場所はダメだわ」みたいなことがあったんですけど、自分は感じたことがなくて。だから、霊の存在自体をあまり信じていないようなところがありますね。そもそも、危害を加えないのであれば、別に近くにいてもらっても、いっこうに構わないんですけど(笑)
――ドラマのオススメのポイントをお聞かせください。
地上波のドラマとしては攻めた、挑戦的な企画だと思っています。まずは、その不思議な手触りを楽しんでほしいですね。
そして、由利麟太郎と助手の俊助(志尊淳)、さらに田辺(誠一)くんが演じる等々力警部を加えた3人のやりとりにも、ぜひ注目してください。「ホラーミステリー」の中で、ちょっとしたアクセントになっていると思います。