永瀬二冠は紅組を、藤井七段は白組を5連勝で駆け抜ける!挑戦者決定戦は23日に実施

木村一基王位への挑戦権を争う、第61期王位戦挑戦者決定リーグ(主催:新聞三社連合)の最終5回戦が6月13日に東京・将棋会館で行われました。紅組は永瀬拓矢二冠が、白組は藤井聡太七段が5勝0敗の成績で優勝し、挑戦者決定戦への進出を決めました。

紅組で4連勝中の永瀬二冠は、本田奎五段と対戦。角換わり相早繰り銀の将棋となりました。角を打ち合う激しい戦いでリードを奪ったのは永瀬二冠。相手にあえて馬を作らせ、その馬を捕獲することで駒得を果たします。本田五段の攻勢にあったものの、持ち前の受けの強さを発揮してその攻めを受け止めると、角2枚を生かした素早い反撃で寄り形を築き上げてしまいました。自陣に金銀を投入して粘ろうとする本田五段でしたが、持ちこたえることができずに、19時6分、111手で永瀬二冠が勝利を収めました。これで5連勝となった永瀬二冠が紅組優勝です。

ともに3勝1敗で永瀬二冠を追っていた、豊島将之竜王・名人と佐々木大地五段との対決は、19時18分に豊島竜王・名人の勝利で決着。豊島竜王・名人はプレーオフ進出とはなりませんでしたが、リーグ残留を決めました。一方の佐々木五段は3期連続でのリーグ陥落。前期と今期は3勝2敗と勝ち越したものの、一歩残留には及びませんでした。

王位リーグ初参加ながら白組で4連勝し、優勝まであと1勝としている藤井七段は阿部健治郎七段との対戦。作戦家の阿部七段が序盤から工夫し、一手間違えれば形勢が一気に動く激しい将棋になりました。次々と技を繰り出し攻めを繋げようとする阿部七段に、藤井七段は冷静に対応。的確な受けで相手の攻めを息切れさせると、大駒3枚で反撃に出ました。守りを捨てて攻勢をとっていた阿部七段の陣形はもろく、藤井七段が攻めに転じるとあっという間に寄せ切られてしまいました。19時5分に64手で藤井七段が勝利。短手数ながら濃い内容の将棋を制した藤井七段が、王位リーグ初参加初優勝を達成です。

藤井七段が勝利する約1時間前に、1敗同士の対決が決着していました。羽生善治九段と菅井竜也八段との対戦は、羽生九段の勝ち。序盤で馬を作ると、その馬を攻めの軸にしてリードを奪っての完勝でした。羽生九段は藤井七段が敗れればプレーオフ進出でしたが、惜しくも届きませんでした。しかし、これで今期も王位リーグ残留。1993年度の第34期以来継続中の、リーグ残留記録をまた一つ伸ばしました(王位在位期間も含む)。

紅白両リーグの最終結果は以下の通りです。

【紅組】
5勝0敗 永瀬拓矢二冠
4勝1敗 豊島将之竜王・名人
3勝2敗 佐々木大地五段
2勝3敗 鈴木大介九段
1勝4敗 本田 奎五段
0勝5敗 佐藤秀司七段

【白組】
5勝0敗 藤井聡太七段
4勝1敗 羽生善治九段
3勝2敗 菅井竜也八段
2勝3敗 上村 亘五段
1勝4敗 稲葉 陽八段
0勝5敗 阿部健治郎七段

この結果、挑戦者決定戦は永瀬二冠と藤井七段のカードとなりました。第91期ヒューリック杯棋聖戦の挑戦者決定戦での激闘が記憶に新しいところですが、短期間で再び挑戦者決定戦という大舞台でこの対戦が実現しました。藤井七段が棋聖戦に続き王位戦でもタイトル挑戦を決めるのか、それとも永瀬二冠が意地を見せて三冠目獲得へ前進するのか、今最も勢いに乗っている若手棋士同士の対決は6月23日に行われます。

短期間で2度挑決で相まみえる永瀬拓矢二冠(左)と藤井聡太七段
短期間で2度挑決で相まみえる永瀬拓矢二冠(左)と藤井聡太七段