KDDIとKDDI総合研究所は6月8日、「音のVR」技術を活用したオーケストラと合唱団によるバーチャルコンサートの映像配信を開始した。iOSアプリ「新音楽視聴体験 音のVR」で無料視聴できる。
KDDI総合研究所が開発した「音のVR」は、360度映像の見たい・聴きたい部分に自由自在にフォーカスできるというインタラクティブ視聴技術。最大360度8Kビデオと360度3Dオーディオから空間的に自然な広がりと定位を持つ、任意の範囲の音場をリアルタイムに合成・再生する。
360度映像をスマホやVRデバイスで再生したときに、映像をズームして映し出した部分の音響にフォーカスでき、たとえばオーケストラの映像の中からヴァイオリン奏者の演奏に注目するといったように、映像の中の好きなパートに着目して聴ける。
今回、KDDIが無料配信するバーチャルコンサートでは、合唱の定番曲として親しまれている『Believe』(3分50秒)を新日本フィルハーモニー(新日本フィル)と東京混声合唱団(東混)の総勢119名で演奏。初の試みとして、オーケストラと合唱団演奏者全員がリモート出演している。
アプリでは他にも、東混の合唱による『Believe』と『あすという日が』の2曲と、新型コロナウイルスの流行前に収録された東混の合唱曲も視聴できる。
音のVR技術はコロナ禍より前から開発されており、2019年開催の展示会「CEATEC 2019」などで出展されていた。新型コロナウイルス感染症の流行により、多くの人が密閉空間に集う音楽コンサートは開催自粛を余儀なくされているが、そうした環境下でも公演のあり方を模索する新日本フィルと東混にKDDIが技術支援を行い、アプリ上での共演が実現した。
なお、新日本フィルと東混の共演は2013年3月以来。リモート演奏としては新日本フィルの楽団員が2020年3月に公開した動画『シンニチテレワーク部 テレワークでパプリカ合奏してみた』が注目を浴び、それに触発されて東混もリモート合唱動画『Believe』を同年4月に公開している。コロナ禍においても新たな音楽を届けていきたいと願う演奏者が共鳴し、アプリ上での共演につながったかたちだ。