西山女王は3連覇達成。過去4期獲得の加藤桃子女流三段は一歩及ばず

西山朋佳女王に加藤桃子女流三段が挑戦している、第13期マイナビ女子オープン五番勝負第5局(主催:マイナビ)が6月3日に東京・将棋会館で行われました。マイナビ女子オープン五番勝負史上、初のフルセットとなった激闘のシリーズを制したのは、西山女王でした。

ここまでの4局はいずれも先手が制している今シリーズ。注目の振り駒の結果、西山女王が先手番になりました。西山女王が先手中飛車に構えると、加藤女流三段は角道を止めて穴熊を目指します。西山女王が先手だった第2、4局と同様の展開です。

過去2局では西山女王が序盤から素早く動いていったため、加藤女流三段は穴熊に組み上げることはできませんでした。しかし本局はじっくりとした展開になり、加藤女流三段は得意の穴熊を完成させます。両者力の出せる形となりました。

金銀4枚の松尾流穴熊を完成させた加藤女流三段は、飛車・角・歩で敵陣突破を試みます。それに対し、西山女王は飛車・角・金・銀で徹底抗戦。見ごたえのある中盤戦です。

歩を駆使してなんとか防衛網を食い破ろうとする加藤女流三段でしたが、西山女王の受けは正確でした。戦いが落ち着くと、西山女王良しが明らかになりました。金銀が中段にどっしりと構え、加藤女流三段の大駒を働かせません。加藤女流三段は飛車の活用を諦め、玉頭にアヤを求めましたが、その間に西山女王はと金作りに成功。このと金が銀と交換になり、優位を拡大していきます。

優勢になってからの西山女王の攻めはまさに電光石火でした。相手の大駒を押さえ込む役割を果たしていた金を今度は攻めに活用。角と金の協力で加藤女流三段の穴熊を崩壊させると、粘る隙も与えずに、あっという間に加藤玉を詰まし上げてしまいました。

この勝利で西山女王は女王3連覇となりました。女王の最多連覇記録は、加藤女流三段が第7期から第10期にかけて達成した4連覇。あと1期でこれに並びます。また、女王を5期連続で獲得すると、「永世女王」の資格を手にすることができます(連覇が途切れると通算7期が必要)。まだ「永世女王」資格を持つ者はいません。西山女王が初の有資格者になるのでしょうか。

激闘の五番勝負は幕を閉じましたが、両者の次なる戦いはまたすぐにやってきます。

加藤女流三段は明日6月5日に開幕する、第31期女流王位戦の挑戦者。女流棋界の第一人者の里見香奈女流王位に挑みます。加藤女流三段は女王4期、女流王座4期の計8期のタイトルを獲得していますが、これらは奨励会在籍時に手にしたもの。女流に転身してから初の獲得を目指します。

西山女王は6月20日に開幕する、奨励会三段リーグに臨みます。前期は惜しくも次点で、女性初の四段昇段とはなりませんでしたが、偉業に再挑戦です。また、竜王戦ランキング戦6組では準決勝に進出しています。あと1つ勝てば5組昇級となり、これは棋士以外の参加者(奨励会員、女流棋士、アマチュア)初の快挙達成となります。

熱い戦いを繰り広げた西山女王と加藤女流三段の活躍から、これからも目が離せません。

防衛を達成し、笑顔でインタビューに応じる西山女王
防衛を達成し、笑顔でインタビューに応じる西山女王