永久歯の中で最後に生えてくる親知らず。「智歯」の別名でも知られるこの歯は奥歯の最も後ろにあるうえ、斜めに生えてくるケースもあり、歯が磨きにくい。そのため、虫歯や歯肉炎などのトラブルにつながりやすく、場合によっては抜歯も必要となってくる。
万一抜歯をしてしまったとなると、「抜歯後いつ食事をしたらいいのか」「どんな食べ物を摂取したらいいのか」などが気になるところ。そこで今回、中村歯科医院の院長で小倉歯科医師会の理事でもある中村貢治医師に「親知らず抜歯後の食事」についてうかがった。
親知らず抜歯後の食事のタイミングとは
親知らずを抜歯する際は通常、局所麻酔を用いて施術する。抜歯後は、その麻酔が切れるまでは食事をしない方がよいと中村医師は解説する。
「麻酔が効いている間は口腔内の熱や痛みを感じる感覚がなくなるので、思わぬ火傷やケガにつながる恐れがあります。麻酔が切れるのがだいたい2時間後ぐらいですので、抜歯後3時間を目安としてそれまでは飲食を控えた方がいいでしょう」
親知らず抜歯後の穴をふさぐ血餅とは
抜歯をすれば当然、その箇所から出血する。この血をそのまま放置すると血の塊である「血餅(けっぺい)」ができる。いわゆるかさぶたのようなもので、ここに血管や細胞が新しくできていく。すなわち、血餅は傷口が治るスピードを速めてくれる。
親知らずを抜歯後に「痛い」と感じる期間が長い原因
この血餅が取れると傷口の治りが遅くなってしまい、抜歯した後の穴が塞がらずに骨が露出し、骨に細菌感染が起きる「ドライソケット」の状態に陥ってしまう。
ドライソケットになると、個人差はあるもの抜歯後数日(3~5日後)は強い痛みに悩まされることになる。親知らずを抜いた後に「抜歯した箇所が痛いなぁ……」と感じる期間が長いようならば、ドライソケットが原因になっている可能性がある。
指や舌先による接触、あるいはうがいなどで血餅が取れてしまうため、「抜歯後しばらくはうがいをせず、たまった唾液を吐く程度にすれば血餅を保護することができます」と中村医師はアドバイスを送る。
親知らず抜歯後はいつもの食事ができない! 食べてはいけないものは?
抜歯をした当日は、傷口の治りを早める血餅が取れやすくなっているので食事面での配慮が不可欠となる。では、抜歯後に避けるべき食品にはどんなものがあるのだろうか。
「『刺激の強いもの』や『熱いもの』、『硬いもの』は避けた方がいいでしょう。刺激の強いものは傷口によくなく、患部にしみるからです。熱いものを食べると、その熱により、血管が開いてしまい傷口から再出血する可能性があるのでご法度。硬いものは傷口を傷つけてしまうため、避けた方がいいですね」
具体的にNGなものの一例として、以下のようなものがある。
- カレー
- 担々麺
- キムチ
- せんべい
- スナック菓子
抜歯後のアルコールやたばこはご法度
アルコールを摂取すると抜歯した箇所の傷口が開きやすくなるし、血管の拡張作用で患部から血が止まりにくくなるおそれもある。少なくとも、抜歯後半日(12時間)はアルコールを控えたほうが賢明だ。また、血餅を剥がしてしまう可能性があるため、喫煙も避けるようにしよう。
親知らず抜歯後におすすめの食事
抜歯後に食べるものとしておすすめなのは、以下のようなやわらかくて食べやすいものだという。
- 雑炊
- おかゆ
- スープ
- 温うどん
- 温そば
極端に熱いものや冷たいものは患部を刺激してしまう恐れがあるので、これらのメニューを食べる際はなるべく熱を冷ました状態で食べるとよい。抜歯後、数日は痛みが残っているケースがあるため、数日~数週間をかけてこれらのやわらかい食べ物から通常の食事へと徐々に移行していくといいだろう。
親知らず抜歯後におすすめの食べ物 | 親知らず抜歯後に避けるべき食べ物 |
---|---|
雑炊 | カレー |
おかゆ | 担々麺 |
スープ | キムチ |
温うどん | せんべい |
温そば | スナック菓子 |
親知らず抜歯後に便利なコンビニ食
忙しいビジネスパーソンともなれば、デスク作業をしながらコンビニエンスストアで購入したお弁当でランチや夜食を済ませる……というシーンもよくあるはず。そこで、コンビニで買いやすい抜歯後におすすめの食品をまとめた。
- ヨーグルト
- ゼリー
- スムージー
特に抜歯当日は痛みで食欲がない可能性もあるため、流動食を活用するといいだろう。
親知らず抜歯後に活用したいレシピ
抜歯後は新しく骨や歯肉をつくるための栄養素が必要となる。そのうえで、やわらかく食べやすいものが好ましいため、以下のようなレシピを活用したい。
- クリームシチュー
- 玉子スープ
- 親子丼
シチューは肉と野菜がバランスよく摂取できるし、親子丼は玉子でとじてあり食べやすく、完全栄養食である卵を用いているため栄養面でも優れるメリットがある。
ただし、これらのレシピは熱すぎると患部を刺激してしまうため、食べる際は温度には気をつけたい。