肩こり解消のカギは実は肩甲骨の使い方にある。複数(2~4)の筋肉が交わる「クロスポイント」を刺激することで、筋肉を活性化させ、体の使い方が機能的に変わる。肩こりや腰痛解消につながる新発想のトレーニング法について柴雅仁先生に聞いてみた。

  • 最新・肩甲骨トレーニングに注目! 筋肉×筋肉のクロスポイントを刺激して肩こり知らず

クロスポイントを刺激して、全身の筋肉をつなげていく

Q:先生のトレーニング法はどれくらいで効果が現れますか?

A:やってすぐ、効果が実感できるので、試しにいっしょにやってみましょう。

■わきのクロスポイントを刺激するエクササイズ■

  • 書籍『肩甲骨は閉じない、寄せない 開いて使う!』(PHP研究所)より転載

1.最初に右肩を回して、その感じを覚えておく
2.左右の肩を回して、その差も覚えておく
3.右腕を上げてわきの下(前鋸筋)に手を当ててさする
4.摩擦で熱くなってきたら、右腕の付け根(わきのクロスポイント)をさわったまま、肩を上げず、前に5回、後ろに5回、回す
5.反対の腕と脇も同じようにやる
6.終わったら、両肩を回して、前と後の感じを比べてみる

たったこれだけですぐ肩が軽くなった感覚があり、効果を実感できます。前鋸筋は、普段、使えていない筋肉なので、刺激入れていくと、実感を伴って違いが現れます。このトレーニングは毎日やって習慣化したほうが効果的です。ちょっとした空き時間にできますし、刺激するだけですから、疲れたり、負担になったりしません。

Q:複数の筋肉が交わるクロスポイントを刺激するのがポイント?

A:全身には14カ所のクロスポイントがあります。自分の気になるところを日常的に刺激してあげるといいでしょう。肩こりを直したい、肩の動きをよくしたいときは、わきや首、肘や手、あとは固まっている筋肉を刺激します。簡単だし、誰にでもできます。さする、さわる、という刺激なのでストレッチとは少し違います。どちらかといえば、筋肉に刺激を与える体操といった感じです。

  • 書籍『肩甲骨は閉じない、寄せない 開いて使う!』(PHP研究所)より転載

基本は、手、ひじ、わき、首の刺激。若いうちからスタートしよう。

Q:毎日やったほうがいい基本のトレーニングは?

A:毎日の習慣として、「手」「ひじ」「わき」「首」、それぞれのクロスポイントを刺激するだけでも動きが違ってきます。さらに「手のひらと前腕の表側を伸ばす」「手の甲と前腕の裏側を伸ばす」「手、ひじ、わきをさする」「四つん這いで、わきを締めて腕の力を抜く」など加えられれば、基本のトレーニングのワンセットになります。あとは応用のトレーニングもあるので、自分の状態に必要なセットをプラスするといいと思います。

■手のクロスポイントを刺激するプログラム【クロスポイントを触りながらグーパーを行う】

  • 書籍『肩甲骨は閉じない、寄せない 開いて使う!』(PHP研究所)より転載

左手の人差し指を、右手のクロスポイントの位置に当てる。中指の付け根の、骨が出っ張っているところを触りながら、右手でグーパーを10回行う。

■ひじのクロスポイントを刺激するプログラム【クロスポイントを触りながらひじの曲げ伸ばしを行う】

  • 書籍『肩甲骨は閉じない、寄せない 開いて使う!』(PHP研究所)より転載

左手の人差し指を、右ひじのクロスポイントの位置に当てる。ひじの骨の出っ張りの下にある、くぼみあたりを触りながら、右ひじの曲げ伸ばしを10回行う。

■首のクロスポイントを刺激する【クロスポイントを触りながら首を前後・左右・回転と動かす】

  • 書籍『肩甲骨は閉じない、寄せない 開いて使う!』(PHP研究所)より転載

両腕を交差し、反対側の中指を首のクロスポイントの位置に当てる。肩をすくめたときにできる首の横のくぼみを触りながら、首を前後・左右・回転左右と各3回動かす。

Q:特に若い世代に向けたアドバイスはありますか?

A:デスクワークの方なら、肩こりがある人もいるでしょうし、スポーツをやっていてパフォーマンスを上げたい人もいると思います。トレーニングで日常生活でも体の動きがよくなるはずですし、ケガや故障の予防にもなります。ただ、20代だとまだあまりピンとこないかもしれません(笑)。

でも、コツや感覚をつかむのは若いうちのほうが早いので、症状や故障が出る前に始めることをお勧めします。仕事の合間でもいいし、運動前の体操としてやってもいいですし、おうち時間のルーティンにしてもいいと思います。

簡単でわかりやすく、体にやさしい、最新のトレーニング法

Q:四十肩とか五十肩にも効果はありますか?

A:肩や腕の筋肉は、普段の動きで使い過ぎていることがあります。例えば洗濯物とか料理とかです。歯を磨くにしても、一つ一つの動作に力が入っていると、微々たる負荷でも日々の積み重ねでダメージを負いがちです。そして、あるタイミングで筋肉のバランスが崩れて、痛みが出て、動かなくなります。

それが、40~50代に現れるのが四十肩、五十肩です。もちろん、肩甲骨トレーニングはその解消につながりますし、四十肩、五十肩をきっかけにトレーニングを始めた方もいます。

Q:世の中にはたくさんの健康本が出ていますが、それらとの違いは?

A: 肩甲骨トレーニングでは、どの筋肉がどのように使われると、肩や肩甲骨の動きがスムーズになり、体幹が安定して、体の動きがよくなるのかが大切で、本ではその詳細を説明しています。また、今まで、前鋸筋にフォーカスして書かれた本はなかったと思います。

前鋸筋は肩周りの動きを良くするために大切な筋肉で、これをどう使うのか、その要点をまとめました。皆さんに実践していただければ、変化を明快に実感していただけるはずです。

*写真/山上忠、イラスト/中川原透

監修/体軸コンディショニング協会