外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2020年5月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。
【ドル/円 5月の推移】
5月のドル/円相場は105.988~108.086円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.6%の小幅高(ドル安・円高)となった。各国で新型コロナウイルスの感染拡大に伴うロックダウン(都市封鎖)が段階的に解除され、経済活動再開への期待が高まった半面、感染第2波への警戒感や米中対立への懸念もくすぶり続けた。このため、ドル/円相場は膠着商状となり、最終的に月間の値幅は2020年最小の2.10円ほどに留まった。
上旬は、トランプ米大統領の対中強硬姿勢などを背景に米中対立懸念が強まる中で3月17日以来の106円台割れを示現。しかし、本邦実需勢のドル買いなどに支えられて下値は堅く、11日には107円台を回復した。
米5月雇用統計は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済活動停止の影響で歴史的な悪化を示したが、ドル/円相場への影響は限られた。その後、19日には一時108円台に上昇したが、ドル買い・円売りも続かず、下旬はほぼ107円台に留まるなど、一層膠着した。
【ドル/円 6月の見通し】
米国では、5月20日までに全50州が新型コロナウイルスの感染拡大に伴うロックダウンの緩和または一部解除に踏み切った。これまで市場は、「経済活動停止による先行き不安」を「経済活動再開への期待」で打ち消してきたが、これからは、米経済が期待に添った回復を歩んでいるかを数値で確認できることになる。
市場には、非農業部門雇用者数が2053.7万人という歴史的な減少を記録した4月が米景気の底(ボトム)にあたるとの見方が多い。そうした中、6月は5月分の米経済指標の結果に注目が集まると見られ、予想を上回ればドル買い、下回ればドル売りという「是々非々」の反応が復活する可能性もある。
まずは、非農業部門雇用者数が5月にどれほど減少幅を縮小するか注目したい(1日時点の市場予想中央値は800.0万人減)。その他、小売売上高や鉱工業生産も4月は過去最大の落ち込みを記録しており、5月の持ち直しの度合いが注目される。
新型コロナウイルスを巡る情勢や、米中の対立および、白人警官が黒人男性を死亡させた事件をきっかけとする米人種差別抗議デモなどはドル/円相場を動かす材料になりにくい(ドルと円が他通貨に対して同方向に動きやすいため)。それだけに、6月のドル/円はもみ合い商状が続く公算が大きいと見るが、もし動きが出るとすれば、米経済に対する市場の見方に変化が出た場合であろう。