新型コロナウイルスの影響でイベントが軒並み中止・延期となる中、お笑いコンビ・NON STYLEの石田明が、「お笑い離れしている人たちに笑ってもらいたい」「劇場が再開したときにみなさんに早く戻ってきていただきたい」との思いで、オンラインミーティングツール「Zoom」を活用した視聴者参加型の新感覚コメディ『訳アリ物件ノゾキミ荘の住人たち』を企画。きょう30日にライブ配信される。出演者もそれぞれの場所から参加するという、今の状況を生かしたオンライン舞台。本作の見どころや制作の裏話を石田に聞いた。

  • お笑いコンビ・NON STYLEの石田明(写真:吉本興業提供)

■コロナ禍で「出る側もエンターテインメント不足に」

石田はこの時期、本来ならPARCO劇場で舞台をやっている真っ最中だったが、新型コロナウイルスの影響で公演中止になり、3カ月のスケジュールが白紙に。「ほぼ休みなんです。周りの役者さんや芸人さんも、舞台やっている人たちはけっこう仕事がなくなり、一般の方だけでなく、出る側もエンターテインメント不足になっている」と言い、「みんなのはけ口になれば」と、出演者側のエンターテインメント不足も解消したいという思いでこの企画を立ち上げた。

石田が脚本・主演を務める本作の舞台は、渋谷駅から徒歩2分の家賃1万円というアパートノゾキミ荘。安さの理由は「驚くほどおばけが出る」「監視カメラで常に覗き見されている」「その映像が不定期で生配信される」という3つ。それを承諾した人だけが住んでいる。「Zoom」を活用し、「ノゾキミ荘」の住人に扮した出演者たちが画面の中を“部屋”と見立てて、ストーリーを進行していく。

視聴者は、監視カメラの映像を覗き見する“ノゾキ魔”、もしくはノゾキミ荘に住みつく“おばけ”になって視聴。“おばけ”になりたい人は、コメント機能を使って「言わせたい言葉」や「やって欲しい行動を」などリクエストを送ることができ、それに対して出演者がリアクションするという、アドリブ要素も楽しめる。

アパートをのぞき見するというコンセプトについて、石田は「あんまり騒いだりしたら、ご近所さんにも迷惑かかるかもしれない。のぞき見というスタイルにすると、しゃべるシーンをポイントポイントで使えるので、ご近所さんにも優しい」とご近所への影響も配慮。この企画が立ち上がったのは5月の頭。そこから脚本やキャスティングなど、短期間で仕上げた。

■個性派集結!「選りすぐりのヤバイ奴らを集めた」

石田に加え、くまだまさし、ブロードキャスト!!・房野史典、銀シャリ・橋本直、ジェラードン・にしもと、コロコロチキチキペッパーズ・ナダル、伊藤修子、谷川愛梨が出演。個性的なキャラクターが物語を盛り上げる。

石田は「完全に僕の人選です。お化けもいて、ずっと監視カメラで監視されている状態だからこそ1万円で住めるという訳アリ物件のアパート。そこに住めそうなヤバイ奴らを集めました。吉本の芸人は、そういう人たちがいっぱいいるんですよ。その中でも、選りすぐりのヤバイ奴らを集めたつもりです」とニヤリ。

「ジェラードンのにしもとは当て書きなんですけど、すごいハマリ役というか、もともとコントでもやっているようなキャラをやってもらえそうなので、すごい楽しいですね」と話し、「伊藤修子さんはZoomができないんじゃないかというトラブルが起きていて、必死で機材を集めています。伊藤さんだけがついてきていません」という裏話も明かした。

■視聴者のリクエストに期待「むちゃぶり大歓迎!」

視聴者からのリクエストは石田自身も楽しみにしているそうで、「むちゃぶりの連続になると思う。書き込んでくれた行動を勝手に始めたり、書き込んでくれたことを急に僕が言ったり、そうやって全員を困らせていく舞台。視聴者のみなさんのSっ気があればあるほど面白い物語になると思います」と期待。

「書き込むのが面倒くさいという方はのぞき見するだけでももちろん! 書き込みがなくてもちゃんと面白くなるようにはなっていますが、書き込みがあればあるほどごちゃごちゃに。みんなの悪ふざけがこの舞台の栄養になります。むちゃぶり大歓迎です!」と伝え、「1時間で終わらせる予定はしていますが、みなさんがふざければ長引く可能性はあります」と笑った。

■「お笑いも演劇もやっぱ“生”が最高」と改めて実感

外出自粛期間で気づけたことを尋ねると、「一番思ったのは、井上(裕介)と会わなくて全然普通に仕事できるねんなって。井上と会わなかったら肌の質とかも良くなって、今すごい体調良いです」と笑いを誘ってから、「お笑いも演劇もやっぱ“生”が最高だなって。オンライン上でのネタや舞台が増えていますけど、“生”に勝るものはないと本気で思いました」と回答。「だからこそ今、より生に近い、“半生”舞台がオンライン上でできたらなって。そこにたどり着きました」と語った。

「今回は吉本の芸人さんメインですけど、ゆくゆくは仲良い役者さんとかにも協力していただいて大きくしていただけたら」と、今後もZoomを活用したライブ配信を継続していきたいという石田。「たとえば、足を骨折して表に出られない人とか、田舎に帰っている人とか、そういう人たちともエンターテインメントを提供できることになるので、そういった面でこの企画は続けようかなと思っています」と、オンラインのメリットを活用していく。

『訳アリ物件ノゾキミ荘の住人たち』は、「ツイキャス」チケット制ライブ機能「プレミア配信」にて5月30日に開催(18時30分、20時30分の2回公演)。1公演1,500円。