世界中の自動車関連企業が新型コロナウイルス対策に関連する機材の生産などを担っているなか、日本のマツダもフェイスシールドのパーツ製造に乗り出した。広島県内の関連企業の技術力なども活用しつつ、1日あたり600~900個を生産している。
射出成形機を活用! 金型は新規設計
このフェイスシールドは頭に取り付けるフレーム(白い部分)とシールド本体(透明なフィルム)の2つのパーツで構成される。マツダが製造するのはフェイスシールドのフレームにあたる部分。透明なシールド本体は、広島県内にあるプリント基板製造装置などのメーカーでシールドフィルムを製造する石井表記という企業が担当する。石井表記はマツダ車のナビゲーションシステムである「マツダコネクト」のフィルムなども手がける関連企業で、非常に透明度の高いシールドを製造する技術を持っているという。
フェイスシールドのフレームの製造は、通常の製造ラインではなく研究開発部門が担当する。製造方法は射出成形で、原料となるポリプロピレンを金型に射出して成型する。従来から存在する製品ではないため、ゼロから設計し金型も新規製作する必要があるが、全行程をわずか1カ月で終えたという。
射出成形機は毎分2個のペースでフレームのアウトプットが可能。アウトプットしたフレームは手作業によってライナーやバリなどを取り除いたうえで、クリーンな環境で手作業によるアルコール消毒を施し、4個を1組として密閉してパッケージングする。
シールド本体と組み合わせるのはユーザーだが、その作業は非常に簡単で、そして確実にできるような工夫を施しているという。一部の医療現場では毎回のシールド交換が求められることがあるそうだが、そうした利便性にも十分に配慮した作りとした。
フレームの後ろ側にはゴムなどが掛けられるようになっていて、頭囲が小さい人はゴムなどを使ってフィット感を調整できる。職場によっては帽子などを被る環境も考えられるため、そういったシーンでの使用も可能な設計とした。長時間でもストレスなく使えることも考慮。現在は医療現場を優先しているが、いずれはマツダ社内での使用も考えているそうだ。
フェイスシールドの生産開始は2020年5月25日で、生産量は1日あたり600~900個。5月中に約3,000個を広島県に納入する予定で、広島県から地域の医療機関に届けられる。このプロジェクトには広島県の医療機器・医薬品製造販売事業者であるジェイ・エム・エスも協力。寄付先の医療機関などがシールドフィルムの追加購入を希望した際などに対応することになっている。広島県の産官が協力し、チーム広島でコロナウイルスに対抗したいという気持ちもあり、製品には製造番号のみを記載し、マツダのロゴや社名は記載しないという。