ソニーは5月27日、ディーザーサイトで予告していた新しいコンパクトデジカメ「VLOGCAM ZV-1」を発表した。Vlog(日常を記録する動画ブログ)用の動画を撮影するための機能を強化したビデオブロガー向けのカメラで、人物の顔に露出やホワイトバランスを最適化して健康的に撮れるようにしたほか、商品などの小物をカメラの前に差し出した場合にフォーカスが素早く小物に移るようにした。マイクの構造も強化し、動画の満足度を左右する音声もクリアに収録できる。背面液晶も、自撮りに向くバリアングル式とした。パソコンとUSBで接続すればWebカメラとして使える機能も搭載し、高画質なライブ配信が楽しめる。

  • スマホの画質や表現力に不満を感じているVlogger向けのコンパクトデジカメ「VLOGCAM ZV-1」が登場。カメラの知識がなくても見栄えのする動画が撮影できるようにした

価格はオープンで、予想実売価格は税別91,000円前後。RX100シリーズの最新モデル「RX100M7」(実売価格は税別132,000円前後)よりも価格を大幅に抑えた。動画撮影に向くワイヤレス接続のシューティンググリップ「GP-VPT2BT」が付属するシューティンググリップキット「ZV-1G」の予想実売価格は税別104,000円前後。発売は6月19日の予定。

  • ZV-1のデザインや本体サイズは、売れ筋の高画質コンパクトデジカメ「RX100」シリーズとよく似ているが、動画撮影に向けていろいろな装備に手が加えられている。RX100シリーズでEVFがあった部分には、代わりにマルチインターフェースシューを搭載。レンズ周囲のコントロールリングは省略されている

  • シューティンググリップ「GP-VPT2BT」に装着したところ。ワイヤレス接続なので、雲台を回転してもケーブルが絡まることはない

ZV-1のおもな特徴は以下の通り。

  • 撮像素子は1型の積層型CMOSセンサー、レンズは35mm判換算で24-70mm、F1.8-2.8
  • 本体サイズはRX100シリーズ並みに据え置き
  • Vlogで求められる「背景ぼかし」や「カメラの前に差し出した商品に素早くピントを合わせる」といった表現を、難しい設定や操作なしにワンタッチでできるように工夫
  • カメラに詳しくない人に「難しそう」と感じさせるモードダイヤルをなくし、画面で撮影モードを選ぶモードボタンに変更
  • 自撮りのしやすさを考慮し、背面液晶をタッチパネルのバリアングル式に
  • 自撮りでもしっかり保持できる大型グリップを搭載
  • 歩きながらの撮影で発生する大きな揺れや細かなぶれを補正できるハイブリッド式の手ぶれ補正を搭載
  • 内蔵マイクを前方への指向性のある3カプセルマイクに強化
  • 外部マイクなどを接続できるマルチインターフェースシューを搭載(アナログマイク端子も搭載)
  • 風切り音を抑制するため、シューに固定するタイプのウィンドスクリーンが付属。マイクのノイズ低減機能も搭載
  • 録画ボタンを大型化、録画中ランプを前面に搭載
  • USB給電に対応(microUSB端子)
  • PCと接続すればWebカメラとして利用できる(対象OSはWindows 10、ソフトウエアは7月公開予定)

カメラの知識がなくても高度&高画質な動画撮影が可能

スマホの普及を受け、日本でもYouTubeやInstagram、ティックトックなどに動画を投稿する「Vlogger」が増えている。だが、スマホの映像や音声の表現力に不満を持つ人は多く、「人よりもクオリティの高い動画を撮影して差別化したい」とカメラの購入を検討する人が増加しているという。だが、これまでスマホでVlogを楽しんできた人はカメラに関する知識が乏しいケースが多く、「カメラは操作が難しい」「思ったように仕上がらない」と敬遠する人も少なくない。

そこで、カメラの専門知識がなくても簡単に高品質の動画が撮影できるよう工夫したのが、今回発表したZV-1だ。高画質コンパクトデジカメ「RX100」シリーズで定評のある小型軽量ボディや1インチの大型センサー、明るいズームレンズなどの基本仕様を継承しつつ、動画まわりの撮影機能や操作性を改良した。

  • 自撮りのしやすさを重視し、背面液晶をバリアングル式としたのがRX100シリーズとは異なるポイント。レンズの上に付いているのは、風切り音を抑制するためのウィンドスクリーン(付属)

  • 背面の操作ボタン類はRX100シリーズと同等だ

まず特徴的なのが、スムーズなフォーカス移動。商品レビューなどで、自身のバストアップを写しつつ、商品をカメラの前に差し出して説明する際、ピントが奥の顔に合ったまま手前の商品にピントが合わないケースは多い。その問題を解決するため、新たに「商品レビュー用設定」を用意。これに切り替えると顔認識が無効になり、手前の商品に素早くピントが合うようになる。切り替えはボタン一発でできる。

  • 手を伸ばして商品をサッとレンズの前に持っていっても、ピントが素早く顔から商品に移動する

  • ミニ三脚としても使えるGP-VPT2BT。前面に撮影ボタンやズームボタン、カスタムボタンを搭載する

ボタン1つで背景を大きくぼかせる背景ぼけ切り替え機能も新たに追加した。絞りや撮影モードなどの知識がなくても、上部の切り替えボタンを押すだけで絞りがF5.6と開放絞りに切り替わり、背景をぼかすかくっきり写すかをワンタッチで選べる。

  • RX100シリーズと大きく異なる上部。EVFの代わりにマルチインターフェースシューを搭載したほか、中央部に大型マイクを搭載。モードダイヤルの代わりにモードボタンを配置し、動画撮影ボタンもシャッターボタン並みに大きくした。C1ボタンは、背景のぼけを調整するためのボタンとしても機能する

  • すっきりとした底面。半円状のグリップの盛り上がりが見て取れる。リチウムイオンバッテリーはRX100シリーズと同じで、記録メディアはSDメモリーカードを利用する

RX100シリーズで定評のあるファストハイブリッドAFやリアルタイム瞳AF、被写体を捕捉するリアルタイムトラッキングなどの機能は継承しており、歩きながらの自撮りでも背景などにピントが抜けることなく人物にピントを合わせ続けられ、撮影者はフレーミングに集中できる。

  • 自撮りでは常に瞳にピントが合うので、ピントを気にせず気軽に撮影できる

Vlogでは自撮りなどで人物の撮影が多いことを踏まえ、人物の顔が明るく健康的に見えるように露出やホワイトバランスを調整するようにした。通常の自動露出と比べ、背景は白飛びする場合はあるが、あくまでも人物の顔を優先する。美肌効果は動画撮影時でも働くように改良し、動画でもシワやシミを軽減できる。

  • 自撮りの際に顔をきれいに見せる美肌機能も搭載。ZV-1はグリップが大きめなので、片手での自撮りでも安定して保持できる

Vlogで多い歩き撮りの際に発生する揺れやぶれを補正するために、光学式の補正と電子式の補正を組み合わせたハイブリッド式の手ブレ補正を搭載した。

本体内蔵のマイクは前方への指向性を持たせた3カプセルマイクとし、前方の音声をしっかり捉えるようにした。また、マルチインターフェースシューに固定するタイプのウィンドスクリーンが標準で付属し、風切り音を低減できるようにした。本体の3.5mmマイク入力端子とマルチインターフェースシューを利用すれば、外部マイクも接続できる。

カメラの初心者にとって、「P/A/S/M」などの文字が書かれているモードダイヤルがあると「難しそう」と敬遠させる要因になるという。そこで、画面上で撮影モードを選べるモードボタンに変更した。

ZV-1は、撮影後にガッツリ編集をして作品を作り込むプロには物足りないといえる。だが、価格を税込み10万円前後に抑えていることから、「スマホよりも表現力の高い動画を手軽に撮りたい」と考える、趣味でVlogを楽しむ20~30代の若年層から注目を集めそうだ。

  • Vlogの動画撮影でスマホの画質に満足できない若年層にヒットしそうだ