米国では多くの都市で厳戒態勢が敷かれて2カ月が経過したが、在宅勤務体制は生産性の観点でどのような変化があったのだろうか?米国企業の中では、在宅に切り替わることで生産性が「上がった」という企業、「下がった」という企業、様々のようだ。Open Forumの記事「What We've Learned about Productivity After Almost Two Months of Remote Work」で米国の在宅勤務の様子をまとめている。
食品会社のCEOは、「当初は、完全に在宅になると生産性を確保できるのかと不安だった」というが、いざスタートすると「高いレベルで生産性を維持できている」と述べている。ソフトウェア企業のトップも、以前からどこでも働くことを認めていたというが、生産性はアップしていると述べている。一方で、オンライン不動産プラットフォーム企業は、家族がいる、経済的な変化やウイルスへの懸念、孤独など様々な理由から「生産性にはマイナス影響」と回答している。カレンダーソフトウェアのClockwiseによると、在宅勤務は時間配分に影響を与えているという。会議に費やす時間は5%増え、細分化された時間が11%増えているとのこと。「忙しくなり、スケジュールがカオス的になっている」とClockwiseのCEO、Matt Martin氏はコメントしている。
興味深いのが「会議」についての話題。これまで就業開始、就業終了と一日2回全員参加のスタンドアップミーティングを行っていたというある会社は、不要だという結論に至ったそうだ。また別の会社は、週に一度の全社ミーティングを通じてワークフローの確認とメンタルヘルスのチェックを行っているという。ミーティングを減らしたというある会社は、「会議は社員の時間をブロックすることになる」と述べている。また、自由参加のミーティングの時間を設けているところもあるという。これにより、仕事に集中したい人はそのままに、疑問や質問がある人は参加して話し合うことができるという。
コロナ禍以前から会議と生産性の関係性については、しばしば指摘されてきた。テレワーク下でも改善されることが多いようだ。よくよく会議という言葉の使われ方を考えてみると「3日は定例の会議だ」「10分後に会議お願い」「会議でみんなで考えようぜ」とおなじように使われる「会議」。実際の中身をさらっと考えてみるだけでも、
・何かを必ず決めなければならない会議
・何かを報告伝達する会議
・一種のコミュニケーション、ブレストのような会議
・出席すること自体が求められる会議
といくつかに分類できる。出席者の発言の必要度によっても分類できるかもしれない。企画会議のような場では、できるだけフラットな発言が望まれるが、あまり通常業務のやりとりがない人々が一堂に会するような場では少々異なる。
会議に限った話ではなないが、文書や言葉は、短く抽象化されていくと、使いやすく伝えやすくなっていくものだが、実際にはもっと細かな分類があり、そこが重要な場合もある。テレワーク環境下では対面での職場とは異なり、表情や雰囲気、口頭での補足が欠如する。より手間をかけた段取りが必要になるというわけだ。また、就業時間中とは言え、家族と同居する場合もあるプライベートな空間でもあるため、職場のフロアとは違う部分が出てくることもあるだろう。
記事では、
1.ミーティングの見直し
2.スケジュールの柔軟性
3.コラボレーションツールの導入
を提案している。急な会議の場合には、参加者に事前にアジェンダを送り、フォーカスが逸れないようにする。柔軟性をもち、ツールを導入することで、ワークフローの合理化、コラボレーションの促進、タイムリーなコミュニケーションなどのメリットが得られることがあることを述べている。在宅勤務の従業員の生産性改善につながるツールは検討して良いだろう。ツールの例として、プロジェクト管理、タスク管理、ビジネスチャット、ビデオ会議、ホワイトボードなどの分野を挙げている。個々の会議の特性次第でツールの組み合わせは千差万別になる。価値を見出し、より追求するのであれば、カスタマイズ、オーダーメイドと大切な道具を進化させていくことを考えてもよいのだ。