Microsoftは米国時間2019年5月19日から2日間、開発者向けの年次イベント「Build 2020」をオンラインで開催した。基調講演となる「Empowering every developer」にて同社CEOのSatya Nadella氏は、「2年分のDX(デジタルトランスフォーメーション)をわずか2カ月で実現した」と、新型コロナウイルスの影響を評価。合わせて「リカバリーフェーズからリイマジネーションへ。常に前進する必要性を高めている」と、ポストコロナ時代の世界を描いた。
まずは数字的な情報をまとめよう。開発者がソフトウェアを共同開発するプラットフォームのGitHubには5,000万人が集い、この1年でプルリクエストは17%超、プッシュボリュームは16%超、新規プロジェクトは27%超に成長。Power Apps、Power Automate、Power BIをまとめたMicrosoft Power Platformの利用者も、2020年5月時点で70%増の7万人に拡大している。Fortune 500(全米の上位500社)に並ぶ企業の95%は、Microsoft Azureを活用しているという。Microsoft 365のDAU(1日あたりのアクティブユーザー9数は7,500万人で、Windows 10のアクティブデバイス数も10億台を突破。成長率は前年比で75%増となった。
ほか、Folding@homeのディレクターを務めるGreg Bowman氏との対談や、オンライン演奏も披露。学生向けITコンテスト「Imagine Cup」の決勝戦も開催したが、ここでは割愛して、Scott Hanselman氏とゲストによるWSL2(Windows Subsystem for Linux 2)のデモンストレーションに注目する。
個人的に興味深いのは、Windows Package Manager(WinGet)の存在だ。Linuxではaptやrpmといったパッケージ管理システムを用いて、ソースやビルド済みバイナリー、関連ファイルを展開している。Windows 10でもWindows PowerShellのPackageManagementを使う方法はあるのだが、広く活用されているとはいえない。現在はプレビュー版のWindows Package Managerだが、GA(一般提供)となったときには、例えばWeb会議ソリューション「Zoom」の新規インストールもセットアッププログラムを実行するのではなく、「WinGet install zoom」をコマンドを叩くだけで済む。
今回のBuild 2020では、クラウド上で共同開発を行うGitHub CodespacesやVisual Studio Codespaces、Visual Studio 2019の新バージョン、Microsoft Azureの新機能など、多くの情報を披露しているが、「Project Reunion」に注目したい。Project Reunionを簡単に言うと、Win 32 APIとUWP(Universal Windows Platfrom)APIを統合するものだ。
UWPの状況は芳しくないものの、Microsoftは「Win32 APIとUWP APIへのアクセスを統合し、Windows OSとAPIを分離」(Microsoft CVP, Windows Developer Platform, Kevin Gallo氏)させる道を選択した。具体的には、これまでデスクトップアプリやUWPアプリで異なるAPIを参照していたが、Project Reunionで取り組む新APIを経由することで、開発者のアプリ開発を支援する。Project Reunionについては、Yoichi Yamashita氏が別記事『米MS「Project Reunion」発表、Win32とUWPの溝を解消、2つのAPIアクセスを1つに』でより詳しく解説している。
Microsoft 365に関する開発者支援という文脈では、WinUI 3 Preview 1やFluid Frameworkのアップデートも発表。Fluidは、データの共同編集を容易にするプラットフォームだ。また、Web版Office 365、およびOutlook for the Webが、FluidコンポーネントとFluidワークスペースを実装し、エンドユーザーが初めてFluidを体験可能になる。最後に、Microsoftによれば、新型コロナウイルスの影響でWindows 10の月間利用時間は前年比75%に増加したそうだ。