フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)では、野良猫や捨て犬など飼い主のいない動物の治療を積極的に行っている獣医師・太田快作さんと愛犬・花子の日々を追った『花子と先生の18年 ~人生を変えた犬~ 後編』を17日に放送する。
「獣医師が動物保護の先頭に立つべき」と考え、休みの日のほとんどを、野良猫の避妊去勢手術や、多頭飼育崩壊の犬や福島の被災動物の治療などにあてている太田さん。犬や猫をテーマにしたドキュメンタリー作品を数多く手掛けてきた、構成・演出・プロデューサーの山田あかね氏は、これまで取材してきた中でも「図抜けて犬猫ファーストの人」と評するが、その理由とは――。
■特に共感した考え方は…
山田氏が、太田さんを取材するきっかけとなったのは、太田さんが北里大学在学中に立ち上げた、犬や猫を助けるサークルを取材したノンフィクション本『犬部!』(片野ゆか著)。ここからその存在を知り、コンタクトを取った。
「私は犬猫のドキュメンタリーを9年取材していろんな人を見てきたんですが、太田さんはその中でも図抜けて“犬猫ファースト”の人です。それに、福島に通い続けて被災した動物を治療したり、その活動がすごいなと思ったんです」(山田氏、以下同)
特に共感したのは、一般的な獣医師が、動物の保護活動に参加すべきという考え方だ。
「日本では今、動物の保護活動をする獣医師がその専門になってしまい、街の動物病院に勤務する一般的な獣医師と、線が引かれているような状況なんです。それに対して、彼は日本中の動物病院が、儲けの一部分は無償で、保護活動や、野良犬・野良猫を治療してあげるということを当たり前にできるようになれば、社会全体が良くなっていくと考えているんです」
動物愛護先進国のイギリスでは、野良犬や捨て犬、お金のない人たちのペットが、無償で治療を受けられるシステムがあるという。「日本の動物病院はどうしても料金が高いので、お金のない人の犬や猫を助けられないということが起きてしまう。日本でもそういうシステムがあれば、今回紹介した多頭飼育崩壊も防げると思うんですよね」
■命を奪う痛みに責任を負う
前編では、苦渋の決断で猫の堕胎手術を行うシーンがあり、「収録のとき、ナレーションの石田ゆり子さんも『悲しくてつらかった』と声を詰まらせていました」というほど。
こうした場面に、山田氏はこれまで何度も立ち会ってきたというが、「猫の堕胎のとき、太田さんから、命を奪う痛みは『獣医師の自分が決断し、全部責任を負うんだ』という男気を感じました。ボランティア活動をしている人たちが少しでも傷つかないように、『それが獣医師の役目なんだから』と、引き受けようとする姿に胸を打たれました」と振り返る。
普段はクールに見えるが、無責任な飼い主や責任を取りたがらない行政などに対しては怒りをぶつける姿も。「動物と弱い者のためには、すごく戦う人なんです」というが、「比較的人間のことは後回しにされてしまいます(笑)。取材の約束をしたのに、忘れられて連絡が来ないこともありましたから」と、やはり“動物ファースト”のようだ。