2019年度の先手勝率は0.527。タイトル戦はさらに先手勝率が上昇
2019年度に行われた、将棋の棋士・女流棋士の公式戦は3,000局以上です。ここではそれらの対局を数字の観点で俯瞰していきます。今回は先手勝率を調べました。データは『平成31年・令和元年版 将棋年鑑2019』(発行:日本将棋連盟)と、将棋年鑑編集部が使用しているデータベースを活用しております。
将棋は先手が少し有利、というのが定説です。実際、プロの公式戦記録で後手が勝ち越したのは、日本将棋連盟が統計を取り始めて以降では08年度のみとなっています。後手が勝ち越したと言っても、このときの先手勝率は0.497。横歩取り△8五飛戦法、ゴキゲン中飛車、一手損角換わり、矢倉の後手番左美濃急戦など、後手番の有力な作戦はたびたび出現しましたが、先手の利をなかなか上回れないようです。
以下は直近5年の総対局数と先手勝利をまとめたものです。
年度 総対局数 先手勝率
15 2,992 0.519
16 3,124 0.519
17 3,092 0.525
18 3,277 0.530
19 3,517 0.527
18年度よりは数字は落ちたものの、19年度も先手がやや勝ち越しという結果となりました。例年通りの傾向と言えます。
次は先手勝率を公式戦、女流公式戦、タイトル戦、女流タイトル戦に分けて計算してみます。(将棋年鑑の掲載区分に基づく。まだ対局が行われていない、第78期名人戦、第5期叡王戦と、まだ決着のついていない第13期マイナビ女子オープンは除く)
区分 19年度 18年度 17年度
公式戦 0.524 0.533 0.529
女流公式戦 0.535 0.516 0.502
タイトル戦 0.600 0.725 0.590
女流タイトル戦 0.550 0.421 0.524
公式戦は直近3年間では最も低い先手勝率となりました。先手番で猛威を振るっていた角換わりや相掛かりに対し、後手が対抗できるようになってきたためと推察されます。戦型別勝率はまた回を改めてまとめます。
一方の女流公式戦は年々先手勝率が上昇中と、公式戦とは違った傾向が出ています。
タイトル戦は局数自体が少ないため、数値がぶれやすくなりますが、ほぼ毎年公式戦トータルの先手勝率よりも高い数字となります。18年度はなんと7割を超え、19年度も6割。タイトル戦の先手番はテニスのサービスゲームに例えられることがしばしばありますが、間違っていなさそうです。
女流タイトル戦では、先手勝率が18年度は5割を切っていましたが、19年度は再び5割超え。18年度がたまたま大きく偏ったと見るべきでしょう。
ちなみに2020年4月の1カ月のみの成績だと、先手勝率は0.585となっています。新型コロナウイルス感染拡大防止策として、対局者の長距離移動を含む公式戦の対局が延期されているために局数は少ないものの、今年も先手有利の情勢に変わりなさそうです。