新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態宣言に伴う外出自粛で、動画配信サービスの利用者が急増している。在宅支援を目的に、コンテンツの無料開放も各サービスで相次いで行われており、これを機に定着が加速しそうだ。
■テレビ画面での視聴が大幅増
外出自粛が進み、テレビ番組の視聴率が上昇傾向にあるが、さらに別のコンテンツを求めて、動画配信サービスの利用が進んでいる模様。フジテレビが運営するFODは、有料の「FODプレミアム」が4月の月間新規加入者数で前年同月比約2倍となり、過去最高を記録した。
4月7日の緊急事態宣言後には、アクティブユーザー数が1日ごとでも月間でも過去最高をマーク。従来、動画配信サービスは、移動時間にスマートフォンで視聴するユーザーが多かったが、フジテレビ総合事業局コンテンツ事業室の二宮麻郁子氏は「テレビ端末で視聴するユーザーが大きく増えていることが特徴的です。自宅にいる時間が長いことから、大きな画面で見たいというニーズがあると見られます」と分析する。
FODは、フジテレビの名作ドラマを多くラインナップしているが、現在、地上波の連続ドラマが撮影休止に伴い、放送がストップしている影響からか、「2000年代や2010年代前半の人気ドラマが普段よりもランキング上位に入っている傾向が出ています」(同)とのこと。
また、4月期の月9ドラマ『SUITS/スーツ2』で織田裕二と鈴木保奈美が共演していることや、新キャストで29年ぶりの新作が配信されていることもあり、『東京ラブストーリー』(91年)が好調。『北の国から』(81~02年)なども含め、往年の名作ドラマもよく見られているという。
■「巣ごもり需要を取り込んだ」
ABEMA(4月にAbemaTVから改称)は「巣ごもり需要を取り込んだ」とし、週間のアクティブユーザー数が20~30%増のベースアップになったと発表。有料会員「ABEMAプレミアム」は、3月時点で前年比約1.7倍の67.6万人に達している。
動画配信サービスの利用増は世界的な傾向となっており、Netflixは今年1~3月で有料会員が前年から15%(1,570万人)増加したと発表。このうち、1,340万人は北米外の国と地域が占め、アジア太平洋地域では360万人増加した。視聴時間も増加しているという。
■子供向け作品が相次いで無料配信
そんな中、「おうち時間」を楽しむ人たちに向けて、各サービスではコンテンツの無料開放も積極的を実施。日本テレビ傘下のHuluは、3月に100件以上のドラマ・バラエティ・ドラマスピンオフを無料配信したが、中でも『あなたの番です』『今日から俺は!!』『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』の日テレ日曜ドラマ作品が人気を集めた。
Huluでは4月から、キッズ・料理・エクササイズコンテンツを無料配信。Amazon Prime Videoでも休校措置を受け、『ポケットモンスター』『しまじろう』シリーズや『パズドラ』など、キッズ向けコンテンツの無料配信を継続した。
FODも、『ガチャムク』『じゃじゃじゃじゃ~ン!』『ONE PIECE』といった子供向けやアニメ作品を無料配信。それに加え、くりぃむしちゅー、中川家、おぎやはぎ、劇団ひとり、アンタッチャブルらが出演するコント番組『リチャードホール』(04~05年)、東海テレビ制作の昼ドラ『花嫁のれん』(10~15年)など、大人向けの番組も無料配信している。