マツダ新世代商品群の第1弾「MAZDA3」を購入する際に、頭を悩ませる問題。それは、どのエンジンを選ぶかということだ。ガソリンかディーゼルか、それとも、マツダが独自の技術を盛り込んだ新エンジン「SKYACTIV-X」にするのか。全てのエンジンを乗り比べてベストバイを考えてみた。
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|I@001.jpg,どのエンジンを積んだ「MAZDA3」に乗るか。それが問題だ(写真はSKYACTIV-X搭載のファストバック),A@マツダの「MAZDA3」|
マツダ渾身の1台、新エンジン追加で選択肢が充実
マツダが2019年5月に国内での販売を開始した新型車「MAZDA3」。以前は「アクセラ」と呼んでいたモデルだが、新型への移行と共に車名をグローバルで統一した。次世代モデルの先陣を切るモデルだけに、デザインや機能、メカニズムなどの各所で新たな取り組みが見られる。マツダの強い意気込みがヒシヒシと伝わってくるクルマだ。
刷新した内外装のデザインでは視覚だけでなく、触覚での上質さにもこだわっている。MAZDA3はグレードによる視覚的な差別化も少ないので、自分好みの1台が選びやすいのも嬉しいところだ。
そんなMAZDA3の購入検討者を最も悩ませるのは、充実のエンジンラインアップではないだろうか。「SKYACTIV-G」エンジン(ガソリン)と「SKYACTIV-D」(クリーンディーゼル)に加え、2019年11月には新たなガソリンエンジン「SKYACTIV-X」も追加となった。今回は、それぞれのエンジンの違いを中心に、新型MAZDA3のベストバイを考えてみたい。
好きな仕様を選びやすいグレード構成
MAZDA3のグレード構成は割とシンプルだ。ボディが4ドアセダンと5ドアハッチバックの2種類なのは従来型のアクセラと同様だが、スポーティーなスタイルへと進化させたハッチバックは「ファストバック」と呼ぶようになった。
SKYACTIV-G 2.0(2.0Lガソリン車)、SKYACTIV-D 1.8(1.8Lクリーンディーゼル車)、SKYACTIV-Xの基本的なグレード構成は、「プロアクティブ」「プロアクティブ ツーリングセレクション」「Lパッケージ」の3タイプ。さらにファストバックには、ワインレッド内装の「バーガンディセレクション」とセダンにはないSKYACTIV-G 1.5搭載車(1.5Lガソリン車)を専用設定する。この1.5Lガソリン車だけグレード構成が異なり、「15S」と「15S ツーリング」の2タイプとなる。
グレードの違いは、基本的には装備差によるものだ。先にも述べたが、MAZDA3は外観上の差が少ないので、欲しい機能を基準に選べばいい。それでも1.5Lガソリン車だけは、「15S ツーリング」の1択となるだろう。15Sだと、「マニュアルエアコン」や「16インチアルミホイール」などグレードダウンされるアイテムがあるからだ。9万円の差なので、ここはケチらない方が賢明だ。
クリーンディーゼルエンジン「SKYACTIV-D 1.8」の特徴は?
MAZDA3を検討する際、まず気になるのが国産車では珍しいクリーンディーゼル車だろう。アクセラに引き続きSKYACTIV-Dエンジンを搭載するが、従来の2.2Lエンジンではなく、ダウンサイズの1.8Lエンジンに換装されている。
1.8Lエンジンの最大のメリットは、低速域での高トルクをいかした燃費の良さだろう。WLTCモード燃費は19.8km/L(FF車)と優秀だ。市街地から高速まで走ってみたが、全般的に燃費は良く、トータルバランスに優れていると思う。もちろん、ディーゼル車なので、耳を澄ますと特徴的なエンジン音が聞こえてくるが、普通の人なら、まず気にならないレベルだ。実際、同乗者にこのクルマがディーゼル車だと告げると驚いていた。
ただ、不満がないわけでもない。それはエンジンの力強さだ。先代にあたるアクセラの2.2Lエンジンは最高出力175ps、最大トルク420Nmと高性能で、大型車やスポーツカーも顔負けの力強い加速が魅力だった。そのエンジン特性をいかしたスポーティーな走りが楽しめるところは、クルマ好きからも評価されていた。
一方、新型の1.8Lエンジンは116ps/270Nmとトルクこそ大きめだが、実用的なスペックに留められている。2.2Lディーゼルの味を知る人には、やはり物足りなさがあり、新型にも2.2Lを積んで欲しかったと思ってしまう。ただ、ガソリン車に比べればトルクの大きさは感じられるので、クリーンディーゼル車も悪くない選択だといえる。
1.5Lと2.0Lの2種類がある「SKYACTIV-G」
SKYACTIV-Gは、いずれもレギュラーガソリン仕様だ。セダンは2.0Lの1択だが、ファストバックなら1.5Lと2.0Lから選べる。シンプルにいえば、排気量が異なる分、当然ながら性能にも差がある。1.5Lが111ps/146Nmであるのに対し、2.0Lは156ps/199Nmを発揮する。スペックだけみると2.0Lの方に軍配が上がるが、結論からいえば、トータルで見ると1.5Lを推したい。
1.5Lエンジンの魅力は、軽快な吹け上がりにある。パワーも限られるので、走行中はエンジンを積極的に使うことになる。その際、エンジンの軽快さが運転する楽しさと心地よさを生み出すのだ。
それはクルマ好きの見方だという人もいるかもしれないが、エンジンの反応が良好なので、ドライバーは運転のリズムがつかみやすい。言い換えれば、実にドライバーに従順なエンジンといえるのだ。またエンジン音も響きがいいので、回転数が高まってもノイジーではない。
ドライバーが限られたパワーを引き出す走りは同社の「ロードスター」に似ている。個人的には、「FFのロードスター」と呼びたくなるほどだ。しかも、割と燃費もいい。
一方、2.0Lエンジンは排気量が大きい分、走りにもゆとりが感じられる。走行中のエンジン回転数も1.5Lに比べ抑えられるので、より静かだ。1.5Lと比較すればパワーも燃費も中途半端に思えてしまうものの、ゆとりある走りはMAZDA3の上級車らしい雰囲気とマッチするので、無難な選択であるともいえるだろう。