新型コロナウイルス感染拡大の影響で、生産と販売の両面に影響を受ける自動車業界。2019年度(2020年3月期)の期末決算で各社の現状と今後を見ていきたい。5月11日に決算発表を行った日野自動車は、過去最高の台数を記録した前期に比べ約2.3万台の販売減となった。
国内の大型バス市場は落ち込みが顕著
日野自動車の2019年度におけるグローバル販売台数は18万302台。過去最高の実績となった前期に比べ2万2,852台(11.2%)の減少となった。売上高は前期比8.4%減の1兆8,156億円、営業利益は同36.7%減の549億円だった。
国内のトラック・バス市場は総需要が前期比3%減の20万4,755台。日野の販売台数は同6.6%減の6万6,806台となった。総需要について日野は、主に小型トラックが減少して全体では前期より落ち込んだものの、4年連続で20万台超えの「高水準」だったと見ている。日野自体の台数・シェアも前期に比べ減少しているが、シェアは前年に次ぐ過去2番目(32.6%)と「堅調」だったと総括した。
足元の状況としては、トラックは受注残を抱えているので、2020年度第1四半期の販売台数にそこまで大きな影響は出ないというのが日野の見方だ。ただ、市場にコロナの影響は出始めているので、その影響は第2四半期から本格化し、今年度一杯は続きそうな情勢だという。
日野の佐藤真一取締役・専務役員によると、受注生産がメインの商用車の世界では3カ月か、それより先のことを見越してビジネスが動いているとのこと。そういう意味で、より大きな影響が出ているのが観光用大型バスの販売状況だ。インバウンド需要が見込めなくなって以来、大型バスの商談は停滞していて、通年で台数は半減すると見ている。
海外の販売台数は、主要市場の1つであるインドネシアが前期比1万1,559台(29.3%)の減少と落ち込みが顕著だった。米国は同10台(0.1%)減でほぼ前年並みとなった。海外事業は足元で販売活動が停滞していて、2020年度第1四半期は前期比で「半分いけばいいほう」(佐藤専務)との見方だ。
インドネシアは感染のピークが9月くらいになりそうで、経済活動の停滞は避けられそうにない情勢とのこと。回復は第4四半期以降になりそうだ。米国については今年度中は厳しそうであり、回復は2021年以降になるのではないかというのが日野の見方だ。
生産面での影響としては、まず中国で工場が稼働を停止したものの、3月からは稼働を再開しているとのこと。タイ、メキシコ、インドネシアは4月に入って稼働をストップしたという。日本は通常通り稼働しているが、5月以降は在庫調整による減産の影響が出てきそうだ。
物流は生活の基盤、日野の役割はより重要に
日野自動車の現状と今後について、中根健人取締役・専務役員は「物流は動いているので、トータルサポートの方でしっかりと収益をあげていきたい。この機に会社全体、グループ全体で固定費のスリム化、在庫のミニマム化を進めたい」とした。緊急事態宣言を受け乗用車が減った街の中を、働くクルマは相変わらず、というより以前にも増して、忙しそうに走り回っている。物流業界(日野自動車にとっては顧客)に対するアフターサービスなどで、しっかりと役割を果たしていくというのが日野のスタンスだ。
コロナ後の世界について聞かれた日野の下義生代表取締役社長は、「物流が今回、生活の基盤であると再認識されたのでは。そういう意味で、日野の役割は大きいのではないかと考えている」と話す。一方で、観光を中心とするバスの需要については「当面は厳しい」との見方を示しつつ、「バス事業者の状況については、しっかりとコンタクトを取って、日野として何ができるのかをトラック以上に考えていく必要がある」とした。
今期(2020年度、2021年3月期)の業績について日野は、新型コロナウイルス拡大の規模や収束の時期の見通しが立っておらず、先行きへの不透明感が増しているため、現時点では未定とする。グローバル販売台数は2019年度比3万台強の減少となる15万台を目標に据える。売上高は3,000億円強の減少で1兆5,000億円、営業利益は449億円減の100億円を見通す。