ソフトバンクは5月11日、「2020年3月期 決算説明会」をライブ中継で実施しました。それによれば、全事業で増収増益を達成したとのこと。質疑応答では、記者団から新型コロナウイルスが事業におよぼす影響について質問が相次ぎました。
全事業で増収増益を達成、コロナの影響は軽微?
プレゼンの冒頭、登壇した宮内謙社長は「東日本大震災のときも感じましたが、通信ネットワークが人と人をつなぐ大切なライフラインになる。そのことを、今回も強く再認識した次第です」と、新型コロナウイルスについて触れました。
2019年度の連結業績は、売上高が30%増、営業利益が27%増。モバイル事業については、携帯端末の売上は減少したものの、通信サービスの売上(モバイル+ブロードバンド)が前年比4%増でした。スマートフォンの契約数は全ブランドで純増し、トータルで205万件の純増(9%増)です。
通信トラフィックについて宮内社長は「この2年で倍増していますが、基地局の増設、Massive MIMOの活用などで対応しています」と説明します。
なお、新型コロナウイルスの影響が懸念される2020年度の業績予想ですが、営業利益を9,200億円(前年対比1%増)、純利益を4,850億円(前年対比3%増)に設定しています。
「新型コロナが通信事業におよぼす影響は軽微と判断しました。ZホールディングスとLINEの経営統合も実施する2020年度ですが、手堅くきちっと増収増益を確保していきたい。これを皆さまにコミットしていきたいと思っております」(宮内社長)
5Gはまずまずのスタート、コンテンツのさらなる拡充を
2019年10月1日に施行された改正電気通信事業法の影響について聞かれると、宮内社長は「法改正により、端末の販売価格がどう変わったかについてですが、見極めるのが非常に難しい状況です。というのも、10月1日から消費税も上がりました。8月、9月は販売奨励金をたくさん出して激しく競争しましたから、端末もたくさん売れた。10月1日に法改正と消費増税がダブルで来たので、両方を考慮する必要があるでしょう。ただ、むちゃくちゃ大きなダウンにはならなかった、と私たちは考えています。端末の値引きは2万円以内になりましたが、その結果として、安い端末からミドル、ハイエンドの端末までバランスよく売れるようになりました」と、分析します。
また、PHSの終了時期を延長した背景について聞かれると「もともと、早く終了したい思いがありました。けれど、全国の医療機関などから、延期の要望をいただいた。そこで(2020年7月末の予定を)2021年1月31日まで延長することに決めました」と宮内社長。PHS終了にともない電波帯域が空く1.9GHz帯の活用方法について、代表取締役 副社長の宮川潤一氏は「共有バンドのところは『sXGP』といってPHSを4G化したような仕様での利用を考えています。いずれ巻き取られていく専用バンドについては、4Gの拡張バンドにするのか、5Gの新たな周波数として利用するのか、これから議論されることだと思っています」と答えます。
現在はPHSモデムとしてエレベーター、車のモジュールなどにも使われているので、巻き取りには相当な時間がかかるとしつつも、粛々と対応していきたいと説明しました。
5Gプランの契約者数について聞かれた宮内社長は「Just startの段階。まだピンポイントしかネットワークはありませんが、想定以上のお客さまに関心を持っていただいています。5G LABというコンテンツサービスも始まり、まずまずのスタートかなと思います」と回答します。
また、コンシューマ事業を担当する代表取締役 副社長の榛葉淳氏は「具体的な数字は非公表ですが、想定内のスタートです。(年度末の)2021年3月、そして21年度に向けて一気に勢いをつけていきたい。5G LABについても多くのかたにお申し込みいただいておりまして、アンケートでも満足度が高い状況です。ただ、新型コロナの影響もあり、新しいコンテンツの撮影ができなくなりました。ですが、これをチャンスと捉え、コンテンツサービスを一気に伸ばすべく、事業部として取り組んでいきます」と意気込みを語りました。
新型コロナウイルスがショップや5G基地局建設に与える影響は?
新型コロナウイルスの影響について質問があがると「ショップの営業時間を短くする、スタッフを半減させる、といった施策により来店者が激減し、新規ユーザーの獲得数が減少しました。それでも新聞広告などを使って、スマホが壊れたなどの緊急時をのぞいて、ショップに来店しないようにと働きかけています。ユーザーおよび店員の命を守るためです。この4月、5月の2カ月間の影響は、相当落ち込むと見ています。ただ新規獲得が減ったのと同時に、解約数が減っているのも事実です」と宮内社長は回答します。
榛葉氏は「とにかく安全第一で取り組んでいます。我々のスマホ、タブレットがお客さまのライフラインになっていることも実感していますので、アフターコロナで経済活動が再開したときに、どう動いていくか、いま議論をしているところです」と答えました。
コロナ禍により、モバイルのトラフィック通信量は増えたのか減ったのか、との質問に宮川氏は「固定通信について、昼間は倍になりました。モバイルもそれに比例して、何十%か増えています。特にアップリンクが、思った以上に増えた。50%以上の伸び。ピークタイムも、どんどんお昼に移動しており、ビデオチャット、オンライン授業などが増えている状況がうかがえます。コロナの異常が始まってからトラフィックがどう推移したか、グローバルのキャリアの仲間たちにデータをいただきました。中国、ヨーロッパなど、さまざまなキャリアからいただいたデータをもとに、我々もトラフィック対策を実施しており、それにより現在、たくさんの問題に対応できています。しかし、まだ予断はゆるさない状況です」と答えます。
基地局の建設におよぼす影響については、「若干の影響はあります。10~20%くらいの割合で、基地局を建てる際にビルのオーナーさんから、ビルにのぼることにNGを出されることがある。しかし、そもそもの予定から前倒しで進めていたこともあり、計画から上積みした数の基地局を建設できると見ています。今年度末までに1万局は立ち上がる予定です。建設は順調だと感じています」と宮川氏。いまのところ、5G基地局建設のための機材は、スケジュール通りの納品ができているそうです。
また、宮内社長は「いま多くの大学が、夏までZOOMを使ったオンライン授業となりました。(学校や会社では)スマホ、タブレット、PCなどを使って動画で話し合う機会が増えています。これまではNetflixなどで動画を視聴するだけだったものが、仕事、教育現場などでも大容量のデータを使う“慣れ”が起こってくる。ソフトバンクブランドでは、これまで一貫して大容量戦略をとってきましたが、より『メリハリプラン』などの大容量プランに入ったほうがいい世界になっていくのでは」と今後の見通しについて分析しました。
今後の代理店のありかたについて聞かれると、宮内社長は「我々のパートナーである代理店さんは、いま厳しい環境にありますが、非常にがんばってくださっています。もっとも、今後はオンライン販売も増えてくるでしょう。私たちは従来から『1億総スマホ』という言いかたをしてきた。スマホの使いかたを100%マスターしているユーザーは、まだ残念ながら少ない状況です。そこで代理店パートナーは、もっともっとユーザーがスマホを使えるように教える、といった役割が大きくなるのではと考えています。すでに1,200名におよぶスマホアドバイザーをショップに配置していますし、好評です。前向きで、事業をさらに伸ばしていく意欲のあるパートナーとは、コロナを機に結束が強くなっている。収束後は、相当、がんばっていただけるのではないかと思います」と見解を述べます。
榛葉氏は「全国に3,000店舗あるショップで、2万人に近い仲間に協力をいただいています。我々の財産であるショップのかたたちに、コロナ後もしっかりとサポートしてもらえるよう、雇用の問題も大切だと感じています。そのため固定費について、サポートさせていただきたい。また、オンラインについてはダイレクト販売だけでなく、ZOOMなどを使ってご要望もお伺いできるのではないか。そうすることでショップ以外でも、お客さまの質問に答えることができる。まだまだ知恵をしぼるべきではないかと、いま営業の役員と話し合っているところです。そういったものも、コロナ禍を機に、一気にブラッシュアップさせていきたい」と意気込みを語りました。