米労働省が2020年5月8日に発表した4月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数2050.0万人減、(2)失業率14.7%、(3)平均時給30.01ドル(前月比+4.7%、前年比+7.9%)という内容であった。新型コロナウイルスの影響で米国の経済活動が急停止したことから、(1)非農業部門雇用者数と(2)失業率は大幅に悪化したが、対照的に(3)平均時給は伸びが急加速した。
(1)4月の米非農業部門雇用者数は前月比2050.0万人減となり、減少幅としては過去最大を記録したが、市場予想の2200.0万人減ほどには落ち込まなかった。レジャー・接客や小売りなどを筆頭にほぼ全ての業種で雇用が失われた。これまで10年かけて積み上げてきた雇用(2010年1月から2019年12月までに2221.0万人)のほとんどを僅かひと月で吐き出したことになる。
(2)4月の米失業率は14.7%となり、前月から一気に10.3ポイント悪化。1948年の統計開始以来最悪の数字を記録したが、市場予想の16.0%には達しなかった。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率も1973年以来の60.2%に急低下。フルタイムの就職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)は、前月から14.1ポイントも跳ね上がり、少なくとも2000年代で最悪となる22.8%に上昇した。
(3)4月の米平均時給は30.01ドルとなり、前月から1.33ドル増加して過去最高を更新。伸び率は、前月比+4.7%、前年比+7.9%となり、いずれも予想(+0.4%、+3.3%)を遥かに上回った。低賃金労働者の大多数が失職したため、残った就労者の平均賃金が予想以上に押し上げられる格好となった。
米4月雇用統計は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で経済活動をストップさせた結果、雇用が「瞬間蒸発」したことを示す結果になった。雇用統計の結果を伝える各メディアの見出しには「大恐慌以来」や「戦後最悪」などの枕詞が踊った。
とはいえ、市場はこの雇用統計をポジティブに受け止めた模様で、発表後のNY市場では株価が上昇し、債券価格が下落(利回りが上昇)するとともに、ドルが買われた。(1)雇用統計が予想ほど悪化しなかったことが最大の理由だが、(2)前例がない大規模な金融緩和と財政拡大で市場心理が下支えされていること、(3)経済活動の再開に動き始めたため米雇用は4月が「大底」との見方が広がったこと、などもその背景と考えられる。