公務員の年金制度である「共済年金」は、会社員にとっての「厚生年金」に当たるものです。この共済年金は、2015年に厚生年金に統合されました。共済年金が厚生年金に一本化されたことはご存知の方が多いかもしれませんが、それによって公務員の年金はどのように変わったのでしょうか。今回は、共済年金が厚生年金に統合された背景や、共済年金の変更点について解説します。

共済年金は厚生年金へ一本化

日本の公的年金制度は、2階建て、または3階建ての構造と言われています。1階部分は、「国民年金(基礎年金)です。そして2階部分は、会社員の場合「老齢厚生年金」、公務員の場合「退職共済年金」で、いずれも上乗せ年金とされるものです。さらに3階部分として、会社員の「企業年金」(ない企業もある)、公務員の「職域加算」がありました。

このような違いのある厚生年金と共済年金でしたが、年金負担や給付においては共済年金の方が優遇された制度であったため、官民格差だと批判されていました。たとえば、共済年金のほうが厚生年金に比べ、加入できる人が限定されているうえ、保険料が低くても受け取れる年金給付が多いなど、恵まれていたのです。

また、年々深刻さを増す少子高齢化社会において、年金制度改革は急務となっていました。人口が減少していく中、厚生年金、共済年金がそれぞれ独自で運営されていることはデメリットとなり、より規模が大きく安定的な基盤を持った年金制度が必要となったのです。

このように、共済年金への不公平感を解消すると同時に、年金制度の規模拡大による安定化を目指し、2015年10月、国家公務員共済年金、地方公務員共済年金、私立学校教職員共済年金が厚生年金に一本化されました。

共済年金の変更点とは

厚生年金と共済年金は、これまで異なる年金制度でしたが、統一されたことで両者の基準を揃える必要が出てき、基本的には、加入者の多い厚生年金に共済年金が合わせる形となりました。それでは、共済年金が厚生年金に一本化されたことにより、これまでとどのような違いが生まれたのでしょうか。主に、以下の7つの点において変更がありました。

1.保険料が統一された
従来の共済年金は、厚生年金と比べて保険料が低く、受け取れる年金給付が多かったことが批判の的となっていました。そこで、共済年金の保険料率も段階的に引き上げられ、2018年9月には厚生年金保険料と同じ18.3%となりました。

2.加入年齢が70歳までに
これまでの共済年金には、私立学校教職員共済を除き、加入年齢に上限がありませんでした。しかし、厚生年金と統一されたことで、厚生年金と同じく加入年齢が70歳までとなり、70歳以上の人は加入できなくなりました。

3.職域加算が年金払い退職給付に
共済年金には、3階部分の「職域加算」という上乗せ年金があり、上乗せ保険料が不要で受け取れるものでした。これが改められ、保険料を上乗せして支払う「年金払い退職給付」となりました。年金払い退職給付は、厚生年金で言うところの企業年金などと同じ仕組みです。ただし、これまで受け取ってきた職域加算分の一部は保護されます。

4.年金の在職支給停止の条件が変更された
老齢年金を受給している人が働き、一定以上の賃金を受け取っている場合には、年金の全部またはその一部が支給停止となります。厚生年金と統合され、その条件は厚生年金と合わせることになりました。

5.未支給年金の支給範囲が変更された
これまでの共済年金では、年金受給者が亡くなると、未払い分の年金はその遺族や相続人に支払われていました。しかし、厚生年金と一元化したことにより、亡くなった受給者と生計を同じくしていた3親等以内の親族のみが受け取れるようになりました。

6.遺族年金の転給制度の廃止
遺族年金を受け取っている人が亡くなった時、さらにその遺族が受給できるという「転給」というものがありましたが、厚生年金との統一後はこれが廃止となりました。

7.年金の支給単位が変更された
これまでの厚生年金は年金が100円単位で支給され、共済年金は1円単位で支給されていました。この点に関しては、共済年金に揃えることとなり、1円未満が四捨五入されて計算されるようになりました。

これらの点が変わった共済年金ですが、それでは、職域加算が廃止され、年金払い退職給付が創設されたことで、年金額にどのような影響があるのでしょうか。

総務省が発表している「平成31年地方公務員給与実態調査結果等の概要」によると、地方公務員(全地方公共団体、一般行政職)の平均給与月額は約36万円となっています。標準報酬月額が36万円、年金に40年間加入した場合、職域加算では月額2万円支給されるところが、年金払い退職給付では月額18,000円と2,000円の減額となります。

月額で見ると少しの差と感じるかもしれませんが、保険料負担増やその他の条件変更を踏まえると、長い期間では大きな減額と言えるでしょう。

年金制度について改めて知ろう

共済年金と厚生年金の統合は、公務員以外の人にはあまり影響のない話題かもしれません。しかし、自身のマネープランを考えるうえで、年金制度についてしっかり知っておくことは重要です。

一方、公務員の人は、公的年金だけでは不足する分を補う必要があるなら、iDeCo(個人型確定拠出年金)などの利用を検討してみましょう。税制優遇を受けながら、お得に老後資金を準備できます。