前回の「富士フイルム『X100V』レビュー デザイン、機能、装備はどう進化した?」に引き続き、富士フイルムのレンズ一体型デジタルカメラ「FUJIFILM X100V」(以下、「X100V」)のレビューをお送りします。今回は、注目の実写編。GWの分も旅行やお出かけに行きたくなる夏休みに向け、最上級のスナップカメラ、旅カメラとして注目のX100Vの実力を見ていきましょう。
高感度画質の向上も図られている
光学ファインダー(OVF)と電子ビューファインダー(EVF)を一体化したハイブリッドビューファインダーと、35mm判換算で35mm相当の単焦点レンズを搭載する「X100V」。フィルムライクな写りで人気を博してきたX100シリーズの5世代目となるカメラです。今回は、X100Vが紡ぎ出す写真を見ていきたいと思います。
X100Vの要となるイメージセンサーには、有効2610万画素のX-Trans CMOS 4センサー(裏面照射型)を、画像処理エンジンには「X-Processor 4」を採用。いずれも、ミラーレスの上位モデル「X-Pro3」や「X-T4」と同じ。同社が得意とする高品質でフィルムライクな絵づくりが楽しめ、高感度域でのノイズレベルも向上しているとのこと。X100VとパソコンをUSBケーブルでつなぎ、カメラ側の画像処理エンジンを生かして現像を行うソフト「FUJIFILM X RAW Studio」に対応しているのも注目です。
レンズの進化も、X100Vの画質を語るうえで見逃せないトピック。23mmの焦点距離、開放絞りF2はこれまでと変わりませんが、光学系を一新。6群8枚のレンズ構成は非球面レンズ2枚を含むものとなり、絞り開放での解像感およびコントラストが向上。周辺部の描写の改善なども図られています。内蔵NDフィルターも従来の3段分から4段分に効果がアップし、明るい屋外での絞り開放の撮影が容易となりました。
不自然なゆがみがなく、立体感のある描写に注目
本題となる画質については、撮影した画像から総合的に判断すると、前述した通りミラーレスのXシリーズと変わることのない仕上がりが得られます。Xシリーズのユーザーであれば、同じ絵を生成する優れたサブカメラとして重宝するはず。もちろん、フィルムシミュレーションを積極的に使えば、自分好みの仕上がりや被写体、撮影シーンに応じた仕上がりとすることも容易。何より、豊かな階調再現性はライバルを凌駕します。
レンズの写りに関しても、絞り開放から解像感、コントラストとも不足を感じさせません。画面の周辺部まで写りに大きな破綻はなく、これまで以上に立体感のある描写が得られます。
逆光特性についても、フレアやゴーストの発生がよく抑えられ、撮影した限りは気になるものは見受けられませんでした。別売のフードを装着すると完璧といえるでしょう。ディストーション(ゆがみ)の発生もなく、画面周辺に水平あるいは垂直の線が入るような被写体でも安心して撮影に臨むことができます。
デジタル時代になって、どのメーカーもレンズの描写力が凄まじく進化しました。X100Vに搭載されるレンズも例外ではなく、さらにカメラ自体の絵づくりのよさが加わり、レンズ一体型カメラとして圧倒的な写りが得られるように思いました。
写真愛好家に使ってもらいたい佳作
個人的な嗜好となりますが、やはり写真はファインダーをのぞいてアングルを決め、シャッタータイミングを見計らい、そしてシャッターを切りたく思います。スマートフォンも含め、液晶を見て撮影する機会も増えましたが、やはりアイピースに接眼して撮影したほうがピントの状況やアングルなどをしっかり把握でき、気持ち的にも落ち着いて被写体と対峙できるように思えます。X100Vは、そのような写真愛好家にとって唯一無二のコンパクトデジタルとなるでしょう。私自身、このレビュー記事を執筆後、ブラックのX100Vを手に入れたことを付け加えておきます。