新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言で、SNS上では、自宅でいかに楽しく過ごすかの「#おうち時間」や、新ドラマの放送延期を受けて様々な過去作が再放送されることで「#再放送希望」というハッシュタグが流行中だ。
そこで、テレビドラマの脚本家や監督などの制作スタッフに精通する「テレビ視聴しつ」室長の大石庸平氏が、外出することを忘れるほど熱中してしまうおすすめのテレビドラマや、再放送してほしい思い出深い作品を紹介する。
今回は、菅田将暉主演『3年A組―今から皆さんは、人質です―』(19年、日本テレビ)のヒットや、『未満警察 ミッドナイトランナー』の放送開始延期を受けて再放送されている亀梨和也&山下智久『野ブタ。をプロデュース』(05年、同)も好評な“学園ドラマ”。今では大活躍している俳優が生徒役に多く潜んでいるなど、ストーリー以外でも楽しめる要素が多いジャンルだが、中学や高校が舞台だけではない様々なジャンルの“学園”ドラマを紹介したい。
■ミステリアスな土屋太鳳…『鈴木先生』
今振り返ってみると注目の若手俳優が多く出演して驚かされるのが、長谷川博己主演『鈴木先生』(11年、テレビ東京)。このドラマは主人公の鈴木先生が“実験”と称する独自の教育理論を用いて教室内で起こる様々な問題と立ち向かっていくという物語で、中学生の“性の問題”も“給食の酢豚存続問題”も等しく真摯(しんし)に、そして過剰に悩んで解決へと導いていく。
生徒役には、土屋太鳳が連ドラ初レギュラー。今の“元気ではつらつ”としたイメージとは異なるミステリアスで大人びたキャラクターで登場しているほか、松岡茉優や北村匠海、矢作穂香(当時は未来穂香)、三浦透子など、今注目の若手俳優が多数出演しており、初々しい彼らの演技を楽しめる。
だが、このドラマの見どころは、生徒はもちろん、先生たちのディープな問題が浮き彫りになっていく部分にある。特に、体育教師の山崎先生を演じる山口智充に注目だ。生徒から人気があり、私生活も順調に見える鈴木先生へ嫉妬を爆発させてしまう展開は、このドラマ前半の山場で、パブリックイメージの“ぐっさん”とは正反対。醜く怖ろしいキャラクターを見事に演じ、そのギャップに衝撃を受ける。
また、主人公の鈴木先生も教育熱心ではあるが定型の“熱血教師”ではなく、1人の女子生徒に対してあらぬ妄想を繰り返したり、生徒間で浮上した“避妊問題”が自身のでき婚によって飛び火して学級討論にかけられてしまったりと、通常の学園ドラマでは考えられない衝撃展開が続く。
脚本は『リーガルハイ』や『コンフィデンスマンJP』などで大ブレイクする直前の古沢良太氏が担当(岩下悠子氏も共同脚本)しているので面白さはお墨付き。ドラマを通じて性や倫理について深く考えさせられる“道徳の授業”を受けているかのような深い内容にもなっている。
かなり激しい内容のため再放送は難しいかもしれないが、ParaviやNetflix、Amazonプライム・ビデオなど、様々な動画配信サービスで視聴することができる。
■“成長する田村正和”が楽しめる『さよなら、小津先生』
明るいだけじゃないシリアスなテイストの学園ドラマでおすすめしたいのが、田村正和主演『さよなら、小津先生』(01年、フジテレビ)。職も家族も失った元エリート銀行マンの主人公(田村)が、再就職活動の中で採用された私立高校で臨時教師として働き、再び生きる希望を見出していくという物語だ。
揺るぎないキャラクターを演じるイメージが強い田村正和だが、このドラマでは、バスケ部のコーチとなって生徒たちと触れ合う中で徐々に心境の変化をみせていく“成長する田村正和”を楽しむことができる。
生徒役には森山未來や、この作品が俳優デビューだった永山瑛太(当時はEITA)、脇知弘、勝地涼、忍成修吾など、今となってはかなりの豪華メンバー。同僚の先生キャストも、ユースケ・サンタマリアや、瀬戸朝香、西田尚美、京野ことみ、小日向文世など個性豊かなメンバーがそろっている。『踊る大捜査線』の君塚良一氏が脚本を務めているので、それぞれのキャラクターも際立っている。
バスケ部員が一人一人集まり、小津先生の指導によって徐々に結束を深めていくというベースのストーリーは、一見“スポ根ドラマ”のよう。だが、その過程の中で生徒たちが抱える深刻な問題も浮き彫りとなっていき、仲間となった生徒の1人が家族の都合で夜逃げ同然で突然退学することになる前半の不条理な別れなど、かなりシリアスな展開もみせる。
見どころは、初回から提示される娘や生徒たちが小津先生を“幽霊”と呼ぶその理由が判明する第4話。なぜ自分は“幽霊”なのか、ある生徒のエピソードと共にひも解かれるのだが、それをきっかけにさらに小津先生のキャラクターに深みが増していく田村正和の演技が圧巻だ。
今作は後に生徒を一新したスペシャルドラマも放送しており、その生徒たちは上野樹里や貫地谷しほりとこちらも超豪華。連ドラ版はFODで配信中だが、スペシャル版も併せて放送してもらいたい作品だ。