JR東日本は今年3月から、伊豆エリアへの新たな観光特急列車「サフィール踊り子」の運行を開始している。緊急事態宣言が発令され、不要不急の外出自粛が呼びかけられている現在は避けたいが、事態が収束した際にはぜひ一度乗ってみたい列車だ。

  • 「サフィール踊り子」の新型車両E261系。デビュー前から試運転を行っていた(写真:マイナビニュース)

    「サフィール踊り子」の新型車両E261系。デビュー前の昨年11月から試運転を行っていた

今回はすでに発表されている資料や特設サイトの情報などをもとに、改めて「サフィール踊り子」の魅力について紹介したい。「サフィール踊り子」に使用される新型車両E261系は8両編成。紺碧色と白色にグレーを加えた外観デザインが目を引き、デビュー前の試運転時から多くのファンの注目を集めていた。

E261系は伊豆急下田方先頭車から1号車・2号車の順に、東京方先頭車の8号車まで号車番号が振られている。伊豆急下田駅へ向かう下り列車は進行方向の左側、伊豆急下田駅始発の上り列車は右側の車窓から海を見渡せる。

■グリーン車のシートは明るい色合い

E261系の1号車はプレミアムグリーン、2・3号車はグリーン個室、4号車はカフェテリアで、海側を向いて景色を楽しむこともできる。5~8号車はグリーン車で、各号車とも海側に2列、山側に1列の座席配置に。5号車に車いす対応スペースも用意された。

グリーン車の座席はリクライニング機能に加え、フットレストも備わっており、足を伸ばしても前の座席にぶつかりにくい。シートモケットはベージュを基調とした明るい色合いで、あたたかみを感じさせる。PC・スマートフォンの充電が可能なコンセントもあり、読書灯も設置されている。

座席部分の床はカーペット敷きになっているため、着席中は靴を脱いでくつろぐこともできる。8号車は乗務員室と客室の仕切りをガラス張りとしており、上り列車において前面展望を楽しむことも可能だ。

  • 8号車(グリーン車)を先頭に、東京駅へ向かう上り「サフィール踊り子」

出入口付近には大型の荷物置場が設置されている。頭上の荷物棚や手もとに置きにくい大型のバッグなどがあれば、こちらを利用すると良いだろう。

■カフェテリアは上品な空間、海を見ながら食事も

4号車のカフェテリアは、「サフィール踊り子」の中でも特徴的な車両といえる。外観において、食堂車を示す「シ」を含む「サシE261」と記され、窓の少ない山側の車体側面に「Saphir ODORIKO」のロゴが大きく表示されている。

  • カフェテリアの車両(4号車)では、山側の車体側面に記された「Saphir ODORIKO」のロゴも目立つ

車内は海側にカウンター席、山側に4人掛けのテーブル席を配置している。オープンスタイルのキッチンを備え、通常時は「サフィール踊り子」限定のヌードルを中心に、セットで横浜中華街「重慶飯店」の焼売や伊豆「徳造丸」の焼きさざえおにぎり、サイドメニューとして「富士山パン」やプレーンマドレーヌなどを提供するという。

現在、カフェテリアと車内販売は営業を中止しているが、再開後は車窓に広がる海や山を眺めつつ、列車内の食事で格別なひとときを楽しめるに違いない。なお、JR東日本の特設サイトによると、ヌードルは予約時間ごとに提供数を限定しているとのこと。ヌードルと飲み物はスマートフォン専用サイト「サフィールpay」から事前に注文でき、JRクレジットカード決済のほか、現金での支払いも可能とされている。

■グリーン個室は最大6人まで利用可能

2・3号車のグリーン個室は、ともに4室ずつ個室が用意され、伊豆急下田方から1~4番の順に番号が振られている。1・4番の個室は6人まで、2・3番の個室は4人まで利用可能。個室も海側に配置されているので、ゆったりくつろぎながら海沿いの車窓風景を楽しめる。通路との仕切りにブラインドが設けられており、これを下げておけば通路から室内は見えない。

個室の内部は青色のカーペットが敷かれ、座席はブラウンの革張りのモケットで落ち着きがあり、高級感にあふれている。家族や友人同士のグループで利用すれば、乗車中の時間がより楽しくなるだろう。

■快適なひとときを過ごせるプレミアムグリーン

1号車のプレミアムグリーンでは、山側に通路があり、座席は海側に設置されている。横2列の配置だが、全席にバックシェルが備わっており、それぞれ独立している。バックシェル下部には手荷物を収納できるスペースも用意されている。また、8号車と同様、乗務員室と客室の仕切りをガラス張りとしているため、下り列車として伊豆急下田方面へ向かう際は前面展望を楽しめる。

シートモケットはグレーの革張り、肘掛けは木目調で高級感のあるデザイン。リクライニング機能とフットレスト、読書灯、コンセントももちろん備わっている。座席部分の床はカーペット敷きで、フットレストを上げる際、靴を脱いでも良いだろう。座席の向きを変える方法はグリーン車と異なり、背もたれの後ろにあるレバーを握りながら回転させるしくみに。座席を海側に向け、車窓風景を楽しむこともできる。

客室内は黒色・グレー・ダークブラウンを取り入れた落ち着いた色合いで、非常に高級感のある雰囲気に。伊豆エリアへの旅がより豪華で快適なものになるだろう。荷物置場もあるので、大型の荷物がある場合は活用すると良い。

各号車とも車内は暖色系の配色が多く、照明も暖色系の室内灯を使用しているため、高級感を保ちつつ、あたたかみのある車内空間となっている。客室内に天窓が設けられているため、ふと天井を見上げたとき、天気が良ければ空を雲が流れる風景も楽しめる。天窓があることで開放感もあり、思わず癒されるかもしれない。

  • 東海道本線を走行する「サフィール踊り子」。この列車のためにオリジナルの車内メロディと発車メロディ、ミュージックホーンも制作されたという

「サフィール踊り子」は東京~伊豆急下田間で毎日運転を行う列車が1日1往復。他に曜日限定で運転される列車もあるが、利用者の減少にともない、6月1~30日の下り「サフィール踊り子3・5号」・上り「サフィール踊り子4号」の指定席発売が見合わせとなっている。発売については事態の推移や利用動向を踏まえ、判断するとのこと。カフェテリアと車内販売の営業中止はいまのところ5月31日までとされている。

新型コロナウイルス感染症の影響もあり、前途多難なスタートとなった「サフィール踊り子」だが、今後この事態が収束し、以前のように気軽に旅行できるようになれば、きっと車内もにぎわいを見せることだろう。今年3月に引退した251系の特急「スーパービュー踊り子」と比べて、外観・内観ともにずいぶんイメージが変わったが、ひとたび乗れば、多くの人が快適かつあたたかみのある空間に好印象を抱くはず。ぜひ「サフィール踊り子」で、素敵な鉄道の旅を体験してみたい。