外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2020年4月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。

【ユーロ/円4月の推移】

4月のユーロ/円相場は115.449~119.037円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約1.0%の下落(ユーロ安・円高)となった。ユーロ圏各国で新型コロナウイルスの感染拡大は沈静化に向かいつつあるが、そうした中でもユーロは総じて軟調だった。新型コロナウイルスによる欧州経済への打撃の大きさが懸念されている模様。

国際通貨基金(IMF)が13日に発表した世界経済見通しでもユーロ圏の2021年の成長率見通しは-7.5%と、米国(-5.9%)や日本(-5.2%)と比べて著しく低かった。その後も、原油価格の急落によるリスク回避の動きや、欧州連合(EU)首脳会議が財政政策に合意できなかったことでユーロが圧迫された。

ユーロ/円は、29日には約2年ぶりの安値となる115.45円前後まで下落した。ただ、30日には月末のリバランスと見られる動きで117円台を回復して取引を終えた。世界的危険度を最高レベルに引き上げた28日にはリスク回避の円買いが主導して118.30円台へと下落。下旬のユーロ/円相場はユーロ/ドルの反発とドル/円の反落に挟まれて方向感が出にくかった。

【ユーロ/円5月の見通し】

今回の新型コロナウイルス禍で、ユーロ圏の「南北格差」に改めてスポットが当たっている。景気の下支えに向けて各国とも大規模な財政政策を発動しているが、財政に余裕があるドイツやオランダなど北部の国と、そうではないイタリアやスペインなど南部の国の国債利回り格差は拡大。財政余力に乏しいイタリアは「ユーロ共同債(コロナ債)」を発行して復興基金の財源とするよう主張しているが、「実質的な借金の肩代わり」を嫌う北部の国は「コロナ債」に否定的な様子だ。

4月23日の欧州連合(EU)首脳会議でも、復興基金の創設までは漕ぎ着けたが、基金の規模や財源については合意できなかった。危機対策で後手に回るEUの姿は、過去のギリシャ・ショックなどでも見られたが、そのたびにユーロ売り要因となってきた。今回も、南欧諸国の経済危機に対する手当てが遅れればユーロの下落圧力となるだろう。なお、次のEU首脳会議は6月18-19日に予定されている。かなりの間が空くことになるが、この間に臨時首脳会議の開催などがあるかどうか注目されよう。