外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2020年4月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。
【ドル/円 4月の推移】
4月のドル/円相場は106.360~109.380円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.3%下落(ドル安・円高)した。上旬にはドル高・円安に振れる場面もあったが、109.30円台で頭打ちとなり、107.00円前後へと反落。リスク回避時にはドル買いと円買いが交錯、リスク選好時にはドル売りと円売りが交錯したため、その後しばらくは狭いレンジで方向感なくもみ合ったが、28日にはそれまでの下値支持であった106.90円を下抜けて下落。
欧米で都市封鎖(ロックダウン)の緩和に向けた動きが広がる中、リスク選好のドル売りがリスク選好の円売りを凌ぐ格好となった。ただ、30日にはポジション調整と見られる買い戻しで107円台を回復するなど総じて方向感に乏しい展開であった。
【ドル/円 5月の見通し】
4月のドル/円の値幅は3円あまりと、ひと月で10円以上動いた3月から急速に動意が萎んだ格好だ。3月に見られたリスク回避による過剰なドル買いの動きが後退したことで、ドルと円の強さ(あるいは弱さ)が他の通貨に対して概ね同程度だったためと見られる。
例えば、ユーロに対してはドルも円も同程度に強含んだが、豪ドルに対してはいずれもほぼ同じ割合で弱含んだ。5月のドル/円も方向感が出にくい相場展開となりそうだ。ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)のバランスシートの規模は4月30日時点で6.7兆億ドルに達しており、市場の関心がこの点に向かえば流れはドル安に傾く可能性もある。
FRBは、新型コロナウイルス対応で、3月上旬から資産買い入れを強化してきたが、その結果バランスシートの規模はこの間だけで約6割急増している。リスク回避局面におけるドル買いニーズが一時より弱まったのも、これが一因と考えられる。もっとも、日銀も4月27日の金融政策決定会合で国債買い入れを従来の「年間80兆円」から「無制限」に修正した。FRBほどの早いペースではないにせよ、4月20日時点で612.7兆円に上る日銀のバランスシートもこの先拡大していくことは必至であろう。
以上の点から、一方的なドル安・円高やドル高・円安の展開にはなりにくいと見られ、5月のドル/円は概ね横ばい圏内に留まりそうだ。