現在放送中のNHK総合の連続ドラマ『いいね! 光源氏くん』(毎週土曜23:30~)で、主人公・光源氏を演じている俳優・千葉雄大。光源氏と言えば、紫式部の「源氏物語」の主人公であり、幼少期から輝くばかりの美貌と才能を持ち合わせた平安時代の公卿だ。そんな人物が現代に紛れ込んでしまい、さまざまなギャップに驚かされ、右往左往する姿がコミカルに描かれる。浮世離れした美貌で視聴者をキラキラ&キュンキュンさせつつ、しっかりボケるという難役だが、千葉がドハマリしている――。

  • 伊藤沙莉演じる沙織(左)と千葉雄大演じる光源氏

■ぬくもり系男子“ヌクメン”としてブレイク!

千葉と言えば、2010年に戦隊シリーズ『天装戦隊ゴセイジャー』の主人公・アラタ/ゴセイレッド役で俳優デビューを果たすと、その可愛らしいルックスで、映画やドラマに多数出演。多くのメディアでは、女性にぬくもりと癒やしを与えてくれる男子=ぬくもり系男子(ヌクメン)として千葉を筆頭格に挙げていた。

実際、『桜蘭高校ホスト部』(2011年)では「誰が演じるのか?」と言われたうさぎのぬいぐるみを抱えたハニー先輩を可愛らしさ全開で演じると、『水球ヤンキース』(2014年)では中川大志、吉沢亮と、現在では驚くようなメンツで “3バカトリオ”を結成し水着姿を披露。さらに、『きょうは会社休みます。』(2014年)では、ゆとり世代の新人営業マン・加々見龍生に扮し、同じ部署の社員・大川瞳(仲里依紗)に告白を繰り返す健気さを見せるなど、誠実で柔らかく、可愛らしい男性を演じ、ヌクメンが千葉のパブリックイメージとして定着していった。

一方で、こうしたイメージに抗う千葉のユーモアも徐々に漏れ出てくる。映画への出演も多い千葉は、舞台挨拶等に登場する際、会場からは「可愛い~」という声がよくあがっていた。そんなとき、わざと可愛らしいポーズをとってみたり「うるせー!」と大げさに悪態をついてみたり、さまざまなリアクションでファンを盛り上げるシーンを数多くみた。以前そのことを千葉に問うと「適当なことばかりしてしまってすみません」と笑っていたが、あまり“可愛い押し”をされると「抗ってみたくなってしまう」と冗談まじりに本音を吐露していた。

■パブリックイメージを逆手にとり観客を楽しませるサービス精神

こうした千葉の遊び心は、俳優業にも活きているように感じられる。“ヌクメン”というイメージのインパクトがあるため、そこが強調されがちだが、これまで演じてきたキャラクターは多岐にわたる。決して“ヌクメン”キャラだけではない。

石原さとみ主演のドラマ『高嶺の花』(2018年)では、イケメン華道家でありながら、コンプレックスに苛まれ強い上昇志向のあるダークな人物を演じると、映画『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』(2018年)では、三木聡監督のぶっ飛んだ世界観のなか、表向きとは違う非常に多面的な人物を好演。劇中、ピザまみれになったり、水浸しでナマズが降ってきたりと文字通り“身体を張った”芝居で、世間を驚かせた。

ある意味で、二の足を踏みそうなほどの役柄だったが、千葉は「どうにでもしてくれ!」という気持ちで100パーセント楽しめたという。人が持つ“イメージ”というものを逆手にとって楽しんでいるようにも感じられた。

■光のアップシーンが回を増すごとにコミカルに!

現在放送中の『いいね! 光源氏くん』でも、こうした千葉の特性が良く表れている。

第一絵巻「平安のいけめん現る?」では、伊藤沙莉演じるこじらせ系OL・沙織の家に突然舞い込んでしまった光が、最初は平安貴族として高貴な振る舞いを見せるが、生活様式の違いに不安になると、沙織の家に居候させてもらえるように懇願する。そのときの「仔犬のような目」はまさに千葉のポテンシャルを存分に発揮したようなキュンキュンさせるような表情だった。

その後も、随所に“ヌクメン”的シーンは多数登場するが、徐々に回が進むにつれ、千葉の遊び心満載のコミカルなシーンは増えていく。

第二絵巻「ひもなのに朝帰り?」では、心が動く際に和歌を詠むシーンでの光の“恍惚感”が、よりデフォルメされてきた。さらにテレビドラマのなかに登場する女優(武田玲奈)に涙するシーンでの表情など、アップで映し出された千葉のコミカルな表情がどんどん面白くなっていく。第三絵巻「だいえっとはお好き?」では、沙織に「太ったよねー」と直球で言われるほど、ふっくら光を披露し「ポテトチップス禁止!」とダイエットを命じられても、止められず「ポテトチップス―」とポリポリ食べる姿や、腹筋を強要され「そなたは鬼じゃ!」と訴える姿など、コミカルな演技に磨きがかかってきた。

■中将登場でさらにパワーアップ!?

ヌクメンらしい、ほっこり癒やしキャラでありつつも、イケメンカットを放棄しているかのごとくコミカルな寄りの表情……。まさに千葉の多面的な魅力が満載の『いいね!光源氏くん』。第四絵巻「らいばるにご用心?」では、桐山漣演じる頭中将(この時は三位中将)も登場し、二人が見つめ合うシーンや、裸で布団に入っているシーンなど、さらにパワーアップしている。

また、中将がSNSでやり取りしている相手と待ち合わせをしているとき、スカウトの女性がやってきて「正義の味方に向いている」と、以前桐山が『仮面ライダーW』でヒーローをやっていたことを連想させる発言をすると、千葉が世話になった男性の名前 “フィリップ”が、『仮面ライダーW』で桐山と共にライダーを演じた菅田将暉の役名であるなど、作り手側の遊び心も満載。

第五絵巻以降も、まだまだ問題(!?)を巻き起こしそうな千葉・光源氏から目が離せない。

(C)NHK