Z世代の「想いの高尚化」が進んでいる? Don’t think.FEEL!考えるな!感じろ!

スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんに代表されるように社会問題に関心が高いと言われる「Z世代」。その1人であるあなたが「頭でっかち」になることなく、来るべきアフターコロナ時代を、しなやかに生き抜いていくためにはどんなコミュニケーションや行動をすべきなのか? ライフシフト研究所所長の豊田義博さんに聞いてみた。

  • 「自分は何者か」にこだわる新世代の若者たち。それがZ世代だ(2)

会社にコミュニティとしての魅力は感じますか?

昭和の昔、会社という空間は、ハードワーカーのパラダイスだった。あなたのお父さん世代にとって、そこは生活における最も優先順位の高いコミュニティでもあった。そこで居場所を確保するためには、自分なりに人間関係を作る努力が求められ、関係構築ができない人間は社会人としての適性がないという評価をされることさえあった。しかし、今は令和の時代である。

「今でも会社での付き合いが大半という人はいますが、割合は確実に減っています。Z世代は高校や大学時代の部活やサークルの仲間、あるいはボランティア活動など、会社以外のコミュニティでの繋がりを大切にします。そこで情報交換が活発に行われる結果、隣の芝生が青く見えることもあるでしょう。一方、社内の人間関係に軸足を置いたコミュニケーションは希薄になり、仕事そのものに対するコミット度合いも低くなりがちです」と豊田さんは分析する。

上司に対して心のシャッターがガラガラと下りる瞬間

「Z世代は空気読みの天才です」と豊田さん。

「例えば初対面の上司が、忙しすぎることを理由に自分を目標達成のためのツールやパーツとしてしか見ていなくて、親身に向き合う姿勢がない見ると、次の瞬間には心のシャッターがガラガラと下りてしまう。そして、一度閉まったシャッターは二度と開かない。これはお互いにとってとても不幸な状態です」

  • 世代は空気読みの天才

    Z世代は空気読みの天才

ワークス研究所が2016年に行った調査では、自分の能力を100として、入社3年目までの若手では「自分の力の40%も発揮していない」と答えた人の割合が3割を超えていた。

  • 勤務年数別の能力の発揮度(男性社員)

    能力の発揮度が「~40%未満」と低い男性社員は入社3年目までが極端に多い。出典:リクルートワークス研究所「就業意識と実態に関する調査」(2016年)

「調査で面談したある3年目の女性はIR(投資家向け広報)の仕事を担当していましたが、自分が希望する部署でなかったため『言われたこと以外はやりません』と断言していました。IRと言えば企業の全体像を把握していないとこなせない難しい仕事だし、高い能力が求められます。仕事の重要性と本人の理想がリンクしないために、彼女の言葉を借りると『自分の能力の10%ぐらいしか発揮できてない』ことをとても残念に感じました」

高尚でなくてもいい、大切なのは感じて動くこと

「渋谷のあるITベンチャーの役員は、若手社員の『想いの高尚化』が進んでいると嘆いていました。その役員によれば、仕事を成し遂げるには『パーパス(目的)』と『パッション(情熱)』が必要ですが、最近はそのパーパスを探しあぐねている人が多いそうです。

『社会課題をこう解決したい』といった明確な目的が決まらないとなかなか次の一歩が踏み出せない。この状況に危機感を持った役員は、『お客様を感動させたい』でもいい、『いままでにないものをつくりたい』でもいい、素朴なパッションをもっと大切にしよう、と若手に訴えているそうです」

「天職探し」を棚上げして、小さなアウトプットから始めてみる

今の職場では自分は何者にもなれない、自分にふさわしい場所がきっとどこかにある、と「天職探し」を続けながら悶々とした日々を送っているZ世代。その1人かもしれないあなたに、「まずは小さなアウトプットから始めよう」と豊田さんは提言する。

「いきなり起業だとかというのは現実的ではないと思います。まずは天職探しだとか、何者かになりたいといった考えは棚上げして、小さな一歩を踏み出すことが大事。例えばオンライン飲み会を企画する、映画のレビューを書く、悩んでいる企画のヒントください、でもいい。SNSなどで積極的に自己開示すれば、それが誰かの目にとまり、フィードバックが得られるはずです」

いま、時間は有り余るほどある。小説や映画などでインプットに徹するのもいい。でも、少しでも今の状況を変えたいと思うなら、思い切って自分の外の世界に小さな一石を投じてみてはどうだろう。

  • 小さなアウトプットから始めてみる