今、"キャッシュレス"が衛生面でも静かに注目を集めている。経済産業省がキャッシュレス決済端末導入への補助期限を延長すると発表した。昨年10月の消費増税に伴い、一気に普及が進みつつあるキャッシュレス決済。
これまでキャッシュレスの利用に二の足を踏んでいた方も、コロナ禍に見舞われている今こそ導入を検討してよいかもしれない。買い物をキャッシュレス化することで、感染症の予防も期待できるからだ。
紙幣のインフル・ウイルスは2週間以上も生存!?
新型コロナウイルスほど強烈な感染症が少なかったこともあってあまり注目されなかったが、実は、現金がウイルスや細菌を媒介する可能性は以前から着目されてきた。
例えば2008年、スイスの銀行が、「インフルエンザなどの流行性疾患が長期間、流行するのは紙幣が原因ではないか」と仮説を立て、ジュネーブ大学病院の研究チームに調査を依頼。研究の結果、高濃度のインフルエンザウイルスは紙幣の上で最長で17日間も生存することがわかったという。
また、ニューヨーク大学が行った研究で、紙幣に3000種類もの細菌が付着していることが明らかになったという話も最近では取り沙汰されている。
中国、アメリカ、韓国は紙幣を消毒、隔離
今回のコロナ禍でも、紙幣は感染源のひとつとして早くから疑われていた。
新型コロナウイルスの発生源と見られる中国では、中国当局が紙幣の消毒を実施。紫外線を当て、高温で減菌し、そのうえで14日間も隔離するという。また、中国人民銀行では、病院や市場、交通機関などから回収した紙幣は廃棄処分したと報じられている。
中国だけではない。アメリカの連邦準備制度理事会もアジアから返ってきたドル紙幣は1週間から10日程度の隔離期間を経て、金融機関に渡しているという。また、韓国中央銀行は、紙幣を150度の熱で消毒し、2週間隔離したあとで市場に戻しているようだ。
香港大学の研究チームは、さっそく「モノの表面に付着した新型コロナウイルスは、一体どのくらいの時間、感染力を維持するのか」を調査。結果、紙幣の場合はウイルスが検出されなくなるまで4日間かかったそうだ。
衛生面で見る、キャッシュレス決済のメリットと注意点
もちろん、現金にウイルスが付着していても人へ感染するとは限らない。ウイルス生存期間の研究結果も、機関によってバラつきがあり、そのリスクは未知である。しかし、キャッシュレス決済にすることで、幾分リスクが減らせることは確かだろう。
キャッシュレス決済は現金を介さないので、紙幣を通じたウイルスとの接触機会は一切なくなる。ただし、キャッシュレス決済といっても、クレジットカード払いでは店員との受け渡しが発生する場合も多い。結果、ウイルスとの接触という意味では現金決済とさほど変わらない結果になってしまう。
キャッシュレス決済を利用するなら、モバイルSuicaなどの電子マネー、またはスマホやクレジットカードのタッチ決済を使うのがいいだろう。これらの方法であれば、端末にスマホやカードをかざせば決済は完了する。その分、ウイルスに接触する機会も減ることになる。
ただし、現金でSuicaに電子マネーをチャージするようではあまり意味がないと思われる。結局、素手で現金を使用することになってしまうし、券売機のタッチパネルとの接触も必要になってくるからだ。
また、最近ではキャッシュレス化の普及に伴い、コンビニやスーパーなどで無人レジ、セルフレジが設置されている店も増えてきた。その多くがキャッシュレス決済のみの対応である場合も多く、これが利用できれば店員との近距離接触が避けられるということも覚えておきたい。
無人レジの利用は消費者だけでなく、店員のリスク軽減にもつながるので、積極的に利用したいところである。また、無人レジは一般のレジに比べて待ち時間も少なく、列に並ぶ時間が削減される分、いわゆる「3密」の状況も避けやすい。
なお、キャッシュレス決済をする場合でも、レジでタッチパネルを操作することがあれば、やはりそれがウイルスとの接触ポイントとなってしまうので注意が必要だ。
もともと、タッチパネルやエレベーターのボタンなど、不特定多数が触る場所は注意が呼びかけられている。いずれにしても、外出したら目や口、鼻には極力触らず、家に帰ったら30秒以上の手洗を心がける。これがもっとも大切だということは今後も変わらない。
繰り返しになるが、新型コロナウイルスが紙幣を媒介して感染しているという証拠はない。それに、あまりナーバスになりすぎて精神的に疲弊してしまっては元も子もない。
しかし、国によっては政府が紙幣を介した感染に注意を払っているのも事実。キャッシュレス決済にすることで紙幣との接触回数を減らせることも確かだ。
まだ現金しか使えないお店も多く、会計時の割り勘も現金のほうが慣れていたりもするが、このご時世、キャッシュレス決済には衛生面でのメリットがあることは知っておいても損はなさそうだ。