俳優の窪田正孝が主演を務めるNHK連続テレビ小説『エール』(総合 毎週月~土曜8:00~ほか ※土曜は1週間の振り返り)で関内家が営む馬具店の職人頭・岩城新平役を演じている俳優の吉原光夫がこのほど、朝ドラ初出演の感想や役作り秘話、また、二階堂ふみと薬師丸ひろ子との共演について語った。
『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャン役や、劇団四季の『美女と野獣』と実写映画『美女と野獣』日本語吹き替え版のガストン役などで知られる吉原が演じる岩城は、音も恐れるほどの強面だが、職人としての腕は一流の職人頭。23日に放送された第19回に再登場し、音(二階堂ふみ)と馬具製造の作業を一緒に行うシーンが描かれた。
吉原は、出演オファーを聞いたときのリアクションを「よくマネージャーに怒られるんですが、オファーを喜ぶことは作品に対して失礼かなと思ってしまうんです。後に己を裏切ってしまう感情になるというか。マネージャーに対しては、『こんな俺が、朝8時に映ってもいい顔なのかな?』というのは聞きましたよ(笑)。『もうちょっとリアクションください。NHKですよ、朝ドラですよ』とマネージャーに返されて。謝ったうえで、大きめのリアクションをとりましたね(笑)」と明かし、「思ってもいなかったというのが正直なところです。自分とNHK、自分と朝ドラ、というのがリンクしていなかったので。テレビドラマの出演自体が今回初めてですからね」と心境を告白。
「僕のNHKさんのイメージが、すごく真面目で、すごく細かく、統制のとれた現場というイメージがあったので、撮影に入る前日の夜は、寝て起きては台本を見て、というのを繰り返していました。1字1句、間違えちゃいけないと思って。見かけによらず、結構緊張してしまうタイプなので、現場でも緊張しながら過ごしていました」と当初のNHKへの印象を述べ、「最初の撮影は緊張していて、ほとんど覚えていないんです。僕がふだんテレビで見るような方々がいらっしゃって。皆さんあたたかく迎えてくださいました。撮影自体は、僕がイメージで思っていたよりも、監督が出演者側に預けてくださる現場で。『吉原さん、どう思います?』『ここはどうします?』と投げかけてくださるので、舞台と同様、いろいろとトライさせてもらえました。やりにくさは全くなかったですね。逆に新鮮でした」と実際の現場の感想を語った。
そして、「馬具職人頭という役なので、事前に直接この目で見ておきたいなと思い、北海道にある馬具工房に勉強で伺いました。革に穴を開けていく作業、革に糸を通していく作業というのはずっと練習してきましたが、職人さんと息を合わせて作業もさせていただいたことで、実際に演技をする上で、すごく助けになりましたし、役に立ちましたね」と事前の準備も明かし、「職人として腕が一流という設定なので、すごくプレッシャーがありました。それもあって、北海道まで行って勉強しましたし・・・。なかなかのプレッシャーですよね。でも、死ぬほど練習をしたので、そこは自信があります」と成長を実感。「休憩中もひとりで集中して作業をしていましたね。お世話になった工場の職人さんからは『ふつうに働けるよ』と言われるくらいに、今ではうまくなったと思っています。手にはマメがたくさんできましたけどね」と胸を張る。
演じる岩城の魅力については「馬具職人はすごく繊細でこまやかで、センスがあって、頭がよくないとできない仕事。岩城という人間は、自分をとことん突き詰めて、妥協を許さない。プライドを持って、この職業を背負っていた人だと思います。周りの人に厳しいのも、要は、この仕事を他人になめられるなよ、という意味合いもあるのかなと」と述べ、「馬具職人としてのプライドを保つために厳しい人間になったんだろうなと思います。裏を返せば、たぶん中身にあるものは、あたたかくて、信じたものにまっすぐな人。関内家に対しても、忠実であり、愛情深い人間だと思います」と説明。
4月9日放送の第9回で、仕事がなくなった関内家から岩城が出ていくというシーンが描かれたが、「実のところ、演じていた僕は納得いかなかったんです。岩城はどんなときでも出ていかない人なんじゃないかと思っていたので」と最初は納得できなかったと告白。「幼少期の音(清水香帆)に、『職人は仕事がなきゃ食ってかれん』というせりふを言うんですが、役を演じていくごとに、あのときの行動は、関内家のためだったのかなと思えるようになりました。さらに一流になろうとして、外で職人としての腕を上げようとしたのではないかと思えて、あるときふっと腹に落ちたんですよね」と次第に理解できるようになったという。
また、関内音演じる二階堂ふみについて「僕の立場から失礼だと思うのですが、二階堂さんはすごく男気がある人だなと思います。ご一緒させていただいたシーンで、監督たちが難しいなと捉えている撮影があったんです。二階堂さんとしゃべりながら一緒に馬具を作り上げていくシーンで、二階堂さんが通しで撮ろうと提案されたことで状況が好転したことがありました。本物を求めている人なんだなと思いましたし、女優さんより役者という言葉のほうが似合う俳優さんですね」と称賛。
関内光子演じる薬師丸ひろ子との共演には特別な思いがあったそうで、「薬師丸さんは、僕が映画好きなのでずっと見てきた方でもあったので、そういう方を目の前にして、一緒に目を合わせられるだけでも光栄です。もう十分、一緒に演じさせていただけただけで感激しています」と喜びを語った。
最後に、視聴者に向けての「今回ドラマという新しい世界に飛び込みましたが、ミュージカルや映画でやっていることと僕自身はアプローチのしかたは変えていません。ミュージカルを見てくださっているお客さまが、朝ドラをどう見るかはわからないですが、たぶん僕についてはあまり違和感なく見ていただけると思います。そこまで出演シーンが多いわけではないので(笑)、ぜひ見つけていただけたらと思います」とメッセージを送った。
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