4月になり新入社員も入ってくる中、いくら優秀でも後輩に業績を抜かれてしまうのは、どうにも先輩として格好がつきません。たとえ何年目になっても、さまざまな面で成長することが大切になります。
本稿では、先輩であり続けるための「成長をもたらす5つのステップ」をお教えします。
成長を生み出す5つのステップ
例えば、あなたがプレゼンテーション力を高めたいと思ったとします。そのために以下の4つのアイデアがあるとしたら、あなたは何を選ぶでしょうか?
(1)プレゼンについて書かれた本を読む
(2)プレゼンの上手な人の話を聞きに行く
(3)プレゼンのロールプレイ、練習をする
(4)人を集めて、1カ月以内にプレゼンのレクチャーをする
実はこの4つの選択肢は、人間の成長を生み出す、5つのステップに対応しています。1つ目は「知る」、2つ目が「分かる」、3つ目が「行う」、4つ目が「できる」、5つ目が「分かち合う」です。
最初の「本を読む」というのは知る学習。本に書いてあるノウハウを、頭で理解し参考にする方法です。2つ目の「話を聞きに行く」は、知る、分かる学習。人の話を聞いて、話し方、伝え方を学ぶ方法です。
目で見ることで、本より具体的なイメージが湧きやすいでしょう。しかし、プレゼンテーションというのは、イメージできたからと言って、いきなりうまくなるというものでもありません。
知る、分かるという学習は「知識・理解の学習」。学生時代の優秀さというのは、実はこの部分の学習がどれだけできているかを問うものでした。ところが、社会に出ると、評価基準は一変します。
知識や理解以上に、「何が行え」「どれくらいでき」「自分以外をできるようにする」ことが、社会人の評価基準なのです。
成長は分かち合うことで生まれる
3つ目の「プレゼンの練習をする」というのは行う学習。それを何度も重ねることによって、習得し、できるようになるのです。そして最後の「人を集めて、1カ月以内にプレゼンのレクチャーをする」というのは、「分かち合う」段階の学習。
「行う」以降は「技術を体得する学習」です。頭で分かることと実際に自分で実践できるのには、根本的な違いがあるわけです。
もちろん知識が不要というわけではなく、若いうちは本をたくさん読むこと、できる人を見て吸収することも、とても大切です。ただし、その学習で満足してはいけません。
紹介した選択肢の中でも、絶対にやった方が良い選択肢は、最後の人を集めてレクチャーすること。これを実行するには、分かち合うことができる実力を身に付ける必要があります。
そのため、知識や経験不足であれば、本を読んだり、プレゼンの上手な人の話し方を研究したり、知識・理解の学習をすることになるはずです。そして、練習を繰り返し、周囲にアドバイスをもらい、技術を体得する学習を重ねたうえで本番に臨むのではないでしょうか?
さらに、実際にレクチャーをやってみれば、改善点も出てくる。これが体系だった、成長するために必要な学習のプロセスなのです。
成長には痛みが伴う
挙がった選択肢の中で、4つ目を実際に選ぶ人はそれほど多くはありません。なぜならこれが、一番負荷のかかる選択肢だから。ただし、成長できる人材とは、苦労を厭わない人です。筋肉を付けるには、筋肉痛を伴うトレーニングが必要なように、成長には痛みが必要となります。
1歳~1歳7カ月までの赤ちゃん140人を対象に、ハイハイからヨチヨチ歩きの段階に移行し始めた「赤ちゃんの歩行」を計測した米ニューヨーク大学の調査があります。研究室に特設した遊び部屋と自宅に、それぞれ撮影装置を置いて行動を追跡したのです。
すると、赤ちゃんの1日平均歩数は1万4,208歩。距離はのべ4.2kmにも及び、転んだ回数は102回という驚きの結果が出ました。大人でも、1万歩を超える日はあまりありません。
ところが1歳児は、立っては転んでを繰り返しながら、1万4千歩も歩くのです。なかには、1時間に69回も転倒した赤ちゃんもいたそうです。
歩けるように、なりたくてなりたくて、ちょっと歩いては転ぶという負荷をかけ続けた赤ちゃんは、目を見張るほどの速さで成長していくのです。
私たちの成長に伴う痛みも、こんな痛みなら少しポジティブに、変換することができるのではないでしょうか? この痛みを苦痛ではなく、「成長痛」と捉えることができたら、日々の「苦しい」「つらい」という思いも成長痛に取って代わります。
成長痛を伴う、"負荷"をかけ続けて初めて、"付加"価値を生み出す人材になることができます。自分が名実ともに先輩であり続けるためにも、成長痛を感じ続ける人間であることが必要になるのです。
著者プロフィール:近藤悦康
Legaseed 代表取締役
創業6年で応募者1万7,000人企業に。日本一、学生を集める新卒採用のプロ!
2013年11月、株式会社Legaseedを設立。
同社の手掛ける、そのユニークかつ画期的な人材採用、社員教育コンサルティング手法が話題となり、学生が選ぶ「2021年卒インターンシップ人気企業ランキング」(「Rakuten みん就」運営)では全企業中10位に。近著に、『伸びてる会社がやっている「新卒」を「即戦力化」する方法』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。