これまでのWindows 10 Insider Previewは、正式リリースに向かって新機能の実装やUX(ユーザー体験)の検証を行ってきた。Fast・Slowリングは更新頻度の違いにとどまっていたが、その方針を転換したのが、米国時間2019年12月16日にリリースしたWindows 10 Insider Preview ビルド19536のタイミング。

Microsoftは公式ブログで、Fastリングを実験的検証ビルド、Slowリングを検証ビルドと位置付けている。だが、新機能の提供形態は今後変化する可能性が高まった。2019年12月に「Windows Feature Experience Pack」というパッケージをMicrosoft Storeで公開したからだ。

  • Microsoft Storeから入手可能な「Windows Feature Experience Pack」

当時はWindows 10インサイダーの間で話題に上ったものの、Microsoftからは特に反応はなかった。だが、米国時間2020年4月15日にリリースしたWindows 10 Insider Preview ビルド19608では、そのヒントが垣間見られた。

「設定」の「システム/バージョン情報」に並ぶ項目の1つに「エクスペリエンス」が加わり、Windows Feature Experience Packの文字が並ぶようになった。公式ドキュメント「Available features on demand」によれば、「このパッケージには、Windowsの機能に不可欠な機能が含まれている。削除してはいけない」との説明があり、Windows 10 バージョン2004以降で有効になることが確認できる。

  • Windows 10 Insider Preview ビルド19608の「設定」。新たに「エクスペリエンス」という項目が加わっている

これまでMicrosoftは、メモ帳やペイントといったツールや一部の機能をオンデマンド(Microsoft Store経由)での配布に切り替え、標準アプリからの除外を試してきた。本稿執筆時点では、ユーザーフィードバックを踏まえて既存のままにしているが、これらがWindows Feature Experience Packに移行する可能性はある。

過去を振り返ってみれば、Windows 95はOS本体と別にMicrosoft Plus! for Windows 95という拡張パックを提供していた。必ずしも必要ではないが、Internet Explorerや指定時間にプログラムを実行するシステムエージェントなどを含み、Windows 95を活用する上で欠かせない存在だった。Windows Feature Experience PackはWindows 10本体と一部の機能を切り離すための、新たなアプローチなのだろう。

  • Microsoft Plus! for Windows 95を適用したWindows 95

ここで思い出すのがWindows Liveの存在。当初はインターネットの進化に追いつくため、OSとアクセサリーの開発工程を切り離したとMicrosoftは説明していたが、Windows 8リリースのタイミングで方針を変更している。Windows LiveフォトギャラリーやUWP版フォト、Windows LiveメールはUWP版メールに置き換わった。すべてのユーザーが必要としない機能を切り離し、Windows 10の安定性を重視するためにWindows Feature Experience Packを用意するのであれば、正しい戦略といえる。

米国時間2020年4月16日には、Release PreviewリングにWindows 10 Insider Previewの提供を開始した。Microsoftは公式ブログで、「ビルド19041.207は最終的なビルドになる予定」と述べている。だが、Windows Feature Experience Packが適用可能になるのはWindows 10 20H2以降。Microsoftの施策が明らかになるのは、2020年後半まで待つ必要がある。

阿久津良和(Cactus)