投資に興味はあるけれど、なんだか難しそうで手を出すのが怖い。損をするのは嫌だから、コツコツ貯金しよう……。そんな思いから、なかなか投資を始められないという人は多いかもしれない。

今回は、『33歳で手取り22万円のぼくが1億円を貯められた理由』の著者、井上はじめさんにインタビュー。井上さんが提唱する「お金の預け先を『銀行』ではなく『世界経済』に変える」という手法を紹介しよう。

  • 手取り22万円で1億円をためた井上はじめさんに聞く「凡人のための投資法」

"世界経済にお金を預ける"という考え方

――井上さんは「世界経済にお金を預ける」という投資法を提唱されています。具体的にどのようなものでしょうか?

1つの会社や国、エリアなどに絞って投資するのではなく、毎月一定額、時期を分けて、世界に分散して投資し続けるという方法です。具体的には、世界経済に分散した投資信託の商品を、毎月一定額、投資する仕組みを作る、というのを基本としています。

本で伝えた内容通りに、この方法を進めていけば、30年くらいで資産は3~4倍になる可能性があると、私は考えています。しかも、一度この仕組みを作ってしまえば、こまめに経済ニュースをチェックして、投資商品を買ったり売ったりする必要もありません。

定期預金や財形貯蓄くらい簡単で、なおかつそれ以上に、お金を増やせる可能性があるという点で、一般的なサラリーマンだけでなく、投資することにハードルがある、すべての人に向いている投資法だと考えています。

――本当にそんなにお金が増えるものでしょうか?

例えば1985年には、世界の人口は48億人でした。それが20年後の2005年には66億人に増えています。

興味深いのは、それと同じように、世界のGDPも増えているんです。1985年には13兆ドルだったGDPが2005年には47兆ドル。2050年には人口が96億人となり、GDPは250兆ドルになるという推計もあります。人口が増え続ける限り、GDPも増え続けると考えられるのです。

単純な話ですが、資本主義社会の中では、国も会社も個人も、たくさん稼ごうとするし、利益をあげようとするはずです。僕だって本当はたくさん稼ぎたいですしね(笑)。その結果GDPが増えるというのは、納得しやすい話なのではないでしょうか。

この世界経済の成長にお金を預ければ、結果として3~4倍でなくても、もしかしたら2倍かもしれなくても、銀行に預けるよりは、お金が増える可能性が高いですよね。

だから僕は社会人1年目の頃から、約20万円の手取り給料であっても、節約して月10万円で生活し、残りの10万円を毎月投資するという方法を、15年頑なに続けてきたのです。

他の投資法と違って「まず始める」ことが大事

――とてもシンプルな仕組みだと思うのですが、「投資」という言葉だけで、難しそう、始めるのが怖いと思ってしまう人も多そうです

「投資は自己責任」という言葉がありますよね。もちろんリスクはある、だからまず勉強しようと思うのは自然なことです。僕も株やFX、仮想通貨、不動産投資などをするのであれば、買うタイミングや注文方法、業績の見方、契約方法など、理解しておかなければいけないことがたくさんあるので、事前の勉強が必要だと思います。

ただ、「世界経済に分散した投資商品を毎月一定額購入し続ける」という方法では、先に挙げた商品のように、買った翌日に資産が半分になったり、一気に資産が増えたりすることはありません。勉強は後付けでも遅くないので、とにかくやってみることが大事なのです。

証券口座を開設し、口座にお金を入れ、商品を選択し、積立購入の設定をする……本にはこの具体的な方法から、おすすめの商品まで書きましたが、この過程を経て初めて、"分からないこと"も分かってくるし、勉強すべきことも分かってきます。そこから勉強しても遅くないし、むしろ効率が良いと思います。始めないとお金は増えないですしね。

――毎月一定額を投資しつづける、ということを考えると、購入額をいくらに設定するかは悩みどころです。目安はありますか?

個人的な意見としては、給料から必要な生活費を除き、余った額を全て、投資すると良いと思います。それ以外の投資法であれば、余剰資金をためて、徐々にテクニックを身に付けていく必要がありますが、僕としては「世界経済にお金を預ける」という方法は投資法ですらないと思っています。お金の預け先を銀行から変える、という認識なのです。

たとえ急にお金が必要になっても、これらの商品は部分解約ができます。定期預金や積立型の保険の場合、期限の途中で解約してしまうと目減りしてしまうこともありますが、これらの商品の場合、時期によっては増えていることもあります。

それに、例えば50万円が1.2倍になったところで、60万円です。将来の不安から解放されたい、やりたいことを成し遂げたいと思ったとき、やっぱり必要なのは数千万円というお金ではないでしょうか。だから、出来る限り投資額は捻出した方がいいと考えています。

僕の場合、投資に回すお金は節約して捻出しました。例えば、ランチ代を節約するために、会社の冷蔵庫にレタスやハムを保管して、食パンを持参してサンドイッチを作り、昼食にするとか(笑)。家賃を交渉したり、必要な飲み会以外は断ったり……自分にとって我慢と感じない節約を実践しています。手取りが少ないからと言って、投資を諦めなくてもいいんです。

コロナショックの今だからこそ、始めどき

――今、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、株価は大きく動いています。井上さんが提唱する投資法を始める際、注意することはありますか?

実は僕がこの投資法を実践しだしたのは、2007年8月。リーマンショック不況の間、僕の資産評価額は下がり続け、2012年までに700万くらい積み立てていたお金が、550万円くらいに減ってしまいました。

でもこれは長期的に見れば失敗ではありません。この時期、評価額がこれだけ下がっているということは、そんな時期でも毎月購入し続けている投資商品は割安で買えているという風に捉えることもできます。

結果、そのまま継続して一定額を保有・購入し続けたことで、その後訪れる世界同時株高により、僕は2013年までの6年間で800万円積み立てた資産を、2,000万円を超えるくらいまで増やすことができました。

今が不景気の底であると僕は考えていませんが、お金が本当に増えるのは好景気の時ではなく、不景気の時。だから僕は、コロナショックが起きていようと、資産状況が気になって証券会社のサイトにログインしまくることもないし、経済ニュースも気にならない。仕事以外で余った時間は、Amazonプライムビデオを見ているくらいで、経済の状況をつぶさにチェックなどしていません(笑)

僕はただ、仕組みを一度作っただけで、節約だけは人よりちょっと得意、くらいの人間です。でもここまで資産を増やせました。だからぜひ、今始めてほしいと思います。

井上はじめ

1985年、宮崎県生まれ。大学時代にたまたま読んだ新聞記事と、社会人になってからの生死をさまよう大けがをきっかけに、お金を増やす方法を発見。「投資家ではなく節約家」をモットーに、自分にできることを一つずつ実行していき、1億円の資産形成をまもなく達成。現在はファイナンシャルアカデミーで勤務している。