テレビ朝日系ニュース番組『報道ステーション』のメインキャスター・富川悠太アナウンサーの新型コロナウイルス感染が明らかになり、ますます緊張が走るテレビ番組の制作現場。ドラマ、バラエティ番組の収録はほぼ休止状態だが、その中でも制作が続く現場はどのような状況なのか。
このほど、18日に放送されるフジテレビの番組『週刊フジテレビ批評』(毎週土曜5:30~ ※関東ローカル)の収録に参加した、テレビ解説者の木村隆志氏に聞いた――。
■人と人の接触数はかなり削減
木村氏によると、今回の収録は4月上旬、東京・台場のフジテレビ本社で行われたという。同局は今月7日、「ごく小規模の関係者で感染防止対策を充分に講じることができる番組以外の、ロケやスタジオ収録を当面の間控える」と発表していたが、その後の現場の様子はどうだったのか。
「受付での検温と消毒、全員マスク着用、ギリギリまで簡素化した打ち合わせ、大部屋で扉が開けっ放しの楽屋、スタジオの人数が大幅減、出演者は撮影が終わるとすぐにマスクをつけるなど、感染対策は徹底されていました。廊下を歩いていても全然、人とすれ違わなかったですし、人と人の接触数はかなり削減できているのではないでしょうか」
ネット上には、「テレビ局は3密そのもの」「ソーシャル・ディスタンスなんて見せかけだけで、見えないところでは近距離で座っていた」という批判記事がいくつか出ていたが、少なくとも現状ではそうではないようだ。
「もともとネットメディアの世界では、『テレビ局を叩く記事はPVが伸びる』という定説があり、筆者名なしの記事を乱発する傾向があります。今回も悪意のある記事が多く、それに呼応した人々の批判が目立ちますが、決してそんなことはありません。フジテレビに限らず、もし番組がクラスターになったら放送休止、あるいは打ち切りの危機に陥ってしまうので、対策できることはすべてしているはずです」
■必然的に現場の人数は減っている
実際、富川アナと2人の番組スタッフの感染が判明した『報道ステーション』は、全スタッフを自宅待機させるほどの大騒動となっている。
「たとえば、『めざましテレビ』は10日から『めざましどようび』のメンバーが金曜日を担当していますが、これは感染予防や緊急時の備えを目的としたもの。番組から感染者が出たときのリスクを考えているくらいですから、それ以前の『感染予防でやれることはすべてやっておく』という姿勢は当然なのでしょう。大半の放送局は、発熱や咳などの症状が少しでもある人は休ませていますし、だから必然的に現場の人数は減っていると聞いています」
日本テレビは16日、ドラマ・バラエティ番組の収録休止延長を発表するとともに、「密閉、密集、密接」を回避した制作現場の環境改善、「安全チェックシート」運用による安心できる制作体制の強化に努めていると説明。一部の番組では、通常とは異なる体制で安全確保の上、収録を行っているといい、どの局も厳戒態勢が敷かれているようだ。
●木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。ウェブを中心に月20本程度のコラムを提供し、年間約1億PVを稼ぐほか、『週刊フジテレビ批評』などの番組に出演。取材歴2,000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。