Microsoftは米国時間2020年4月8日、新型コロナウイルスの影響で提供が遅れると見られていたWindows 10の新ビルドをFastリング向けに提供した。最新のビルド19603では、WindowsとLinuxの融合をまた一歩進めている。Windows 10 バージョン2004にて、WSL(Windows Subsystem for Linux)からWSL 2に置き換わる予定だ。

ビルド19603ではエクスプローラーのナビゲーションウィンドウにLinuxアイコンが加わり、Linuxディストリビューションのファイルシステムにアクセスできるようになった。インストール済みLinuxディストリビューションがフォルダーとして現れ、Windows 10とLinux相互のファイルコピーや、Windows 10アプリによるLinuxファイルの編集も実行できる。

  • ナビゲーションウィンドウで「Linux」を選択した状態。インストール済みLinuxディストリビューションがフォルダーとして現れる

  • Debian GNU/Linuxのフォルダーを開くと、Linuxユーザーには見慣れたルートファイルシステムが現れる

ただ、ローカルフォルダーはもちろん、仮想マシンのWindows 10に作成した共有フォルダーと比べても、Linux環境へのアクセス速度はやや遅い。この現状はMicrosoftも認識しており、「WSL 1と比較してファイル速度は遅い」「改善方法について積極的に調査している」と説明している。

ビルド19603で加わったもう1つの変更点は、「ユーザークリーンアップの推奨事項」だ。すでにWindows 10は一定のタイミングでカテゴリーごとにクリーンアップを実行する「ストレージセンサー」を備えているが、本機能はストレージセンサーが収集した情報を利用して、ごみ箱や配信の最適化ファイル、以前のWindows 10といった「一時ファイル」、未使用のファイルやストレージ空き容量をひっ迫する「大きなファイルまたは未使用ファイル」、OneDriveと同期済みファイルを指す「クラウドに同期されたファイル」、そして「使用されていないアプリ」がクリーンアップ項目として現れる。

  • 「設定」の「システム/記憶域」へ新たに加わった「ユーザークリーンアップの推奨事項」

  • リンクを開くと各事項でファイルの削除やアプリのアンインストールが可能になる

試してみたところ、一時ファイルのクリーンアップに関しては、ストレージセンサーを継続して使ったほうが簡単だ。ただ、サイズの大きいファイルの列挙や、最終アクセス日を元に使用していないアプリを列挙するのは、「ユーザークリーンアップの推奨事項」が便利である。開発者向けオプションとして、アンインストールに失敗したときの残骸ファイルを削除する機能も用意しているが、既定では無効になっていた。

ビルド19603には、もう1つ興味深い変更点がある。マーケティング名だ。現在のWindows 10 バージョン1909には、Microsoftは「Windows 10 November 2019 Update」という名称を付けている。各名称の一部は、Hyper-Vホストでサポート済み仮想マシンの構成バージョンを確認するコマンドレット「Get-VMHostSupportedVersion」を使うと、Windows 10 バージョン2004のマーケティング名が「Windows 10 May 2020 Update」となるのは以前から確認されていた。興味を引くのはマーケティング名に開発コード名「Manganese(マンガン)」が加わった点だ。

  • ビルド19592(上)とビルド19603(下)での実行結果。新たに構成バージョン9.3が加わり、Windows 10 20H2の開発コード名を示している

Manganeseの名称は2019年から知られていたが、ようやく表に出てきた印象を受ける。Windows 10 20H2の開発が終盤に差しかかるとバージョン番号、リリース直前にはマーケティング名が付与されるはずだが、Windows 10 20H2のリリース予定時期である2020年10月には、どのような番号・名称になっているだろうか。

阿久津良和(Cactus)